男女比が異常な異世界で最強になった俺は前世の夢を追い続ける

音感あっきー

番外編。姉。

私は弟が好きだ。

とにかく可愛いのだ。

とにかくかっこいいのだ。

とにかく良い匂いがするのだ。

とにかく抱きつきたくなるのだ。



そして、何よりも優しいのだ。



朝、起きるとレイン君に下着姿のまま抱き着いて寝ていた。

弟に迷惑はかけれないと思い幻覚魔法で惑わせたまま、一人で抱え込んで、胸をかり泣こうとしていた。

まさか、幻覚魔法が解けるとは思わなかった。

レイン君が意図的にやったのだろうか。

それにしても、昨日はレイン君の成長をとても感じられた。

私の方が子どもみたいだ。

でも嫌な気は全くしない。

今日から変える。


私達、家族のために。


「昨日はありがとう、行ってきます。」
私は寝ているレイン君の手に手紙を握らせて学園へ向かう事にする。

「お母さん、一緒に職場まで行こ?」
お母さんに話さなければならない。昨日、レインに教えてもらった大切な事を。


「お母さん。仕事少しやめて下さい。」
私は取り敢えず、言ってみた。

「どうしたの?いきなり。」
笑顔でお母さんが答える。
私は知っている。
偽りの笑顔。

「私ね。お金の事はお母さん一人で抱え込みすぎだと思う。」

「心配しなくて良いのよ?私は好きでやってるんだし」
違う。
その笑顔は嘘だ。

「心配するよ…。現に、レイン君にも心配されてる」

「………うん。」

「レイン君がね、昨日、私に言ってくれたんだ。悪いのは稼ぎが少ないお母さんの責任でもなく、私が学園に入った事でもない。責任は家族にある。そう言ったの。私ね、レイン君の姉だから迷惑はかけたらいけない。私は頼られる側の人間だってずっと思ってた。でも、レイン君の話を聞いて違うと思った。私達は家族だから互いに甘えても良いんだって。何かそれ聞いてね、納得しちゃったんだ。家族は助け合って生きるべき。誰かが負荷を負い過ぎたら全体が崩れる。だから、皆で支える。だからさ、お母さん、家族皆で、分担してお金を稼ごう?お母さん、仕事し過ぎだよ。レインもお金を稼ぐ手段が、あるみたいだし。今すぐにっていうのは無理だと思うけど、考えていて欲しいな。」

「…………うん。わかったわ。」



お母さんの笑顔が少し本物に近づいた気がした。


そして……

「おい、お前ら二人家族だったよなぁ、借金さっさと返せや!」

借金取りだ。
数は2人。どちらも男。

「すみません、今あるお金でもこれくらいしか無くて…」
お母さんが受け答えをする。

「はぁ!?ふざけんなよ、返す気あんのか!?」

「すみません!本当にすみません!」
私も一緒に頭を下げた。
辛い時は家族一緒。
私はそう決めたんだ。

「いい加減に……ん?あぁ!そりゃ良いな!!うははは!!!」
隣にいた奴が耳打ちをした。

「闇を彷徨い、眠りに落ちろ、催眠魔法!」

私達に黒い煙のような物が舞う。
私もお母さんもいきなりの事で魔法の対処が遅れる。

「闇を取込み、光に変え……よ……むこ……」

お母さんの得意技の様々な魔法を無効化させる魔法である無効魔法の詠唱が途中で終わる。
少々、黒い煙が消えた気がするが私ももう限界のようだ。
私はこのまま、意識を失った。


目が覚めると、牢獄の中にいた。
目の前には男がいる。

「やっと目を覚ましやがった。」

「ここは…どこですか」

「教えなーい、取り敢えず服を脱いでよ」

「なっ!い、嫌です」

「へぇ。それでいいんだぁ。」

その瞬間、首、手首、足首、に物凄い熱を感じる。
白い火だ。

「きゃあ!熱い!な、何これ」

「俺の命令に逆らうと火が出る。さぁ、早く服を脱げ!」

「くっ……い、嫌よ。絶対に嫌。」

再び熱を感じる。さっきよりも強い。

「きゃぁぁぁあ!!」

皮膚が焼けるのが分かる。
自然治癒で跡が残るレベルだ。

「さっさと脱げよ!!おらっ!!」

男は刃物で私を浅く斬りつけた。
脱ぐしか無いのだろうか。
そうしないと、皮膚が焼けてしまう。
でも、考える暇はない。
火は迷いに関係なく、一定時間後に出る。
脱ぐ振りをしよう。
そして、魔力で威圧して気絶させる。
魔力なら、詠唱が無くてもコントロールできる。

「分かったわ」

上から脱ぐ。制服のボタンを外す。
今だ。
くらえ!

「!?」
魔力が吸収される!?

「きゃあぁああ!!!」
さっきよりも熱く大きな火が出る。

駄目だ。
耐えられない。
苦しい。
脱ぐしか無い。

「けっ!初めから素直に脱いどきゃいいんだよ、にしても小さいなぁ!まだまだカギだな」

レイン君にしか見せる予定が無かった。
それをこうも見せる羽目になるとは。
苦しい。
悔しい。
憎い。

「良い体にしてやるよ!刃物こいつでな!!」

私の体はどんどん浅い傷を付けられていく。
傷付ける場所はランダム。
相手の気分次第だ。
そのため、死角は身構える事もし難い。

もう嫌だ。
大好きだったレイン君にはもう会えないのかな。
やっと昨日変われた気がしたのに。
どうして。

目の前の男が別の女と入れ替わった。

「あなたは奴隷として売るから、余り叫ばないで頂戴?次から喋ったら、火が出るから気をつけてね?」
私はすっかりと相手の命令に従うようになってしまった。
こんなの私ではない。
誰か、助けて。
私が私で無くなる前に誰か…早く…。

どどどどどん!!!!

大きく建物が揺れる。
何か小さくて速い物が入ってきた。
物?いや、人?
レイン君?
レイン君だ!
でも、レイン君じゃ捕まって私達のように…
「レイン!!逃げ…きゃあ!!」
火が熱い。つい喋ってしまった。
でも、前に女が大きな剣を構えている。

ぱぁぁぁぁあん!!!

「!?」
目の前で女の体から大きな音が鳴った。
破裂音?
一瞬だった。
レイン君が女に接近し、お腹に拳を撃ち込んだようだった。
そのまま、女は倒れた。

一瞬で無力化してしまった。
レイン君がここまで凄いとは思わなかった。
ただ、気になる事があった。
私の体だ。
そこら中が傷だらけ。
火傷もある。
きっと人前で裸をさらしこんな姿になった私を好いてくれる事などない。
それが男なのだ。
私は諦めた。
レイン君にはもっと良い人がいる。
私なんかでは駄目だ。




遠くでレイン君が何か話している。
暫くすると、火が出ていた輪っかが砂みたいになって消えていった。
体が軽くなっていく。
心が温かくなる。
まるで誰かに包まれているような。
全身をヒリヒリとさせていた火傷や切傷が徐々に治っているのが分かった。
レイン君の力?
体は元通りだった。
寧ろ、大分前にできた掠り傷や、その跡も綺麗に消えている。
何だろうかこれは。


レイン君が戻ってきた。
新しい服をくれた。
私はレイン君を一度諦めかけた。
でも、やっぱり諦められない。
こんなに優しくて頼もしくて可愛い弟なのだ。
私が一生をかけて、助け合う仲なのだ。


私がレイン君を助ける。

これが私の人生の目標。



レイン君。助けてくれて、ありがとう。



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コメント

  • ノベルバユーザー269845

    次の話楽しみに待ってます!

    2
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