男女比が異常な異世界で最強になった俺は前世の夢を追い続ける

音感あっきー

番外編。如月未来。

どうして。

どうして。

どうして。どうして。どうして。

どうして。どうして。どうして!どうして!!

何で、死ぬの。

何で死んじゃうの。

私が死ぬんじゃなかったの。

どうして私の上にいるの。

何で、刺されてるの。

何で…何で。

いつも…いつも私が助けるのに。

私ははじめを何が何でも助けるって決めたのに。

何で。

何で死んじゃうの。

何でお礼も何もできない様に死んじゃうの。

私は…私はただ…

私はただ、生きる事がどうでもよくなってたはじめに生きる意味を教えたかったのに…。

しかも何で今日なの…

なんで殺人事件でそんな行動を取ったの…

もっと、身近な事で私や皆を助けたら良かったのに…

感謝の気持ちを知ったらもっと…変われてたはずなのに…

生きる意味を持ってくれたかもしれないのに…



「未来、最期まで、ありがとう。」



何で…何ではじめが礼をするの…

何で…

礼をするのは私でしょう…

なのに、何でもう動かないのよ…

何で…そんな顔で…死んじゃうのよ…

私は、こんな事を教えたかったんじゃない…

何で…




あれから、数カ月経過した。

犯人は一人の男性の足止めとその犠牲によって捕まえられた。



犠牲者は感謝の言葉を聞くこともなかった。



私は、浪人生という肩書きになった。

でも何もしなかった。

何もできなかった。

何もする気になれなかった。

友達一人救えない私には医者という夢は重すぎた。

目の前で見殺しにしてしまった。

あの時、もっとしっかりと私が被さっていたら。

私がはじめの代わりになれば。

後悔で一杯だった。

悪いのは殺人犯。

後悔を許すように考えても、忘れられない。

温かかった人が物になる。

流れるのはただの血。

言葉も何も無いただの物。

そして最期の…物になった時のあの顔が忘れられない。

今まであんな顔見せなかったくせに。




結局、私は何もできなくなった。

何もせずに5年が経過した。

親も私の事を諦めた。

私は夢を諦めた。

生きる事を諦めた。

初めてはじめの気持ちを理解した。

命なんて何でもいいや。

死んだら死んだだよ。

そう考えるようになった。

だから、あの時、はじめは自分勝手に場を仕切った。

自分の命の価値を卑下していたから普通の人なら辛い役を進んで引き受けた。

私は、あの時、理解していなかった。

今なら分かる。

自暴自棄になったんだ。

じゃあ、あの時の顔は何…

幸せそうなのに、悲しんでいる顔…

私には分からない。

それは、まだ私がはじめと同じ場所に立てていないからなんだろうか。

あの時のあなたは何を思っていたの…?




今日は大切な人の命日。

ずっと君の事が理解できなかった。

だから、目を反らし続けた。

葬式にも、お墓参りにも行かなかった。

でも、今は少し理解できた。

何か分かるかもしれない。

だから、初めてお墓参りに行く事にした。

睦月一。

私は君の幼馴染であり、恋人であり、ヒーローだ。

今、あの日の君と同じ感情を抱いている。

自分が死ぬ事に何の迷いもない感情。

君は何を思っていたんだ…

私には全く分からない。

今この場に来ても何も、分からなかった。




ここは、あの殺人事件があった場所。

何も無かったかのように、車が走り、人が歩く。

私の世界では、まだ君の血の匂いがする。

この匂いはいつになったら消えてくれるのだろう。

車。

ボール。

子供。

あぁ、よくある光景だ。

この後、誰かが飛び込んで、子供を助ける。

私である必要はない。

誰かが飛び込んでくれる。

………いや、矛盾している。

私はいつ死んでも納得できる自信がある。

なら、何故、今、飛び込まないのか。

私の下らない命を犠牲に子供を助ければいいじゃないか。

前までの私ならそれができていた気がする。

あの日の私なら。

じゃあ、今はなんだ。

何で、足が進まない。

怖いのか。

結局、死ぬのが怖いのか。

自暴自棄になっても死ぬのが怖かった。

なんて笑い話だ。

情けない。

…情けない。

何でそんな感情が湧いてくるのだろう。

分からない。

でも、心の底では飛び出さないといけない気がする。

私は心の中の自分の命を殺したはずなのに。

逃げているのか…私は…

逃げている…

私は逃げている。

目の前の出来事から逃げている。

私はこんな人間だったのか。

もしかしたら、君の事から逃げてきたのか。

君の最後の行動は逃げていたから出来た行動なのか…

いや…

違う。

あれは、前の私だった。

あの時の君は私だった。

死ぬ覚悟が出来ていた時の私だった。

そうか。

君はあの時、死ぬ覚悟ができたからそういう行動をしたんだね。

今の自分にはあるだろうか。

心の底にしまって殺した覚悟。

煮え滾るように、心の底にたまった覚悟。

まだ、殺されていない。

私の心はまだ殺されていない。

まだ、この覚悟を引き出せる。

まだ。

私は足を踏み出す。

覚悟でみなぎる。

でも、死ぬ事は怖い。

でも、この気持ちの方が強い。

今ならできる。

今の私になら、踏み出せる。

あの子どもを助けられるなら。

今の私なら駆け出せる。


私は、あの子どもを助けたい!





目が覚めるとそこは病院だった。

子どもは助かったらしい。

よかった。

でも、怖かった。

死んでしまったら、もう親と会えなくなる。

君のいた世界ともお別れになってしまう。

とても、怖かった。

そうか。

君はこういう気持ちだったんだね。

誰かを助けられた幸せと、誰かと別れる事の悲しみ。

私はもう大丈夫。

逃げない。

あの日まで君のヒーローであったように、今からでも。

睦月一。

私の世界から君の血の匂いが消えた。

私の新しい人生の始まりは、君から始める。

君の気持ちを理解できた今日という日から。













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