最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

1章。ありがとう…。ありがとう…。ありがとう……。

「それじゃあ、この部屋を使って下さい…。レイン君、おやすみ!また明日ね!大好き!」

(ミーシャさん!一緒に寝ましょう、とか言えないわ)

俺は手を振って、姉と共に誰もいない部屋に入る。

ガチャ

扉を開ける。

「へー、他の部屋とあまり変わらないんだねー」

ドン

扉が閉まる

カチっ

(ん?カチっ?カチってなんだ?)

「うふふ、うふふふふ、うふふふふふ」

(か、鍵が付いてる…この部屋…。何か姉さん笑ってるし…)

「あはは…眠くなってきたなぁ。おやすみ姉さん…。」

「寝るの?私を一人置いて寝ちゃうの?レイン君?」

(なになになになになにこれ)

「レイン君、ちょっと目を瞑っててね?」

「いやー、おやす…」

「瞑っててね?」

「はい…」


ガサゴソ聞こえる。
何だ?
俺は少し半目にしてみようとした。

「光を閉ざせ幻覚魔法…」

姉さんの声がした瞬間、半目にしようとした視界が真っ暗で沢山の目があった。
そして思わず。

「うわわぁ、姉さん助けて姉さん」

「助けて欲しいのー?うふふ、いいよー、もう準備できたから」

「うわぁ!」

どすん

俺は幻覚を見せられたまま布団に押し倒されていた。
柔らかい感覚と温もりを感じる。
耳元で突如として生温かい吐息を感じる。

「フゥー、うふふ♪レイン君、見ちゃだめって言ったでしょう?もう離さないんだから♪」

小さく息を吐くように耳元で囁かれ、ついピクんとしてしまう。
首筋がゾクゾクとし、体全体が熱くなってくる。
こういうシチュエーションではエロさを感じるのが普通なのだが、幻覚魔法で沢山の目がギョロギョロしているのを見せられているため、悪寒なのか心地良いのかよく分からなくなっている。
(神ちゃん、幻覚魔法解ける?)

『幻覚魔法を解く魔法は作れます、いつもの自分を想像して下さいね』

イメージイメージ
いつものレイン。いつものレイン。いつもの視界。
(狙うは通常状態。幻覚開放魔法。)
心の中で呟いた。

視界に光が差込み、目の前には…

「姉…さん?」

下着姿になって俺に抱き着きながらに泣いている姉さんがいた。

「えっ…み、見えるの…?」

俺の心の中は凄く熱くなった。
それは、姉さんが下着姿だったからではない。泣いていたのだ。とても。いつもの記憶の中の姉さんとはまるで別人のように、悲しそうに。

思わず姉さんを抱き締め返してしまった。
何があったのだろう。
助けたい。
悲しそうにする姉さんを見たくない。

「姉さん…何で泣いてるの…?僕、心配だよ…?大好きな姉さんの悲しそうな顔は余り見たくないよ…。」

「…………ありがとう。」

「姉さん…僕ね、魔法が使えるようになったんだ…。この前…人助けをしたんだ。でもね…僕の力が足りなかったせいで本当の意味で助けられなかったんだ…。だから…次は絶対に僕の力不足が原因で誰かが悲しんでたりするのを絶対に見たくないんだ。僕は今、姉さんや、母さんの力になれなかったら後悔する気がするんだ…。だからね…姉さん…僕に辛かった事とか悲しかった事とか聞かせて…?」

「レイン君…少し大人になったね…。私ね。お母さんに迷惑かけちゃってるんだ…。学園の入学費もまだ払い終わってないし…在学費は一切払えてない…。だからね、私のせいでお母さんは無理して沢山、仕事しててね。私も一応仕事してるんだけど全然お金が足りなくてね…。ミーシャさんには母さんを特別に住まわしてもらってるのに何のお礼もできないし…。なのにミーシャさんは私達を頑張って養おうって私達に内緒で寮母以外の仕事をしててね…。私がいなければ、こんな風にならなくて済んだのにって…。私なんかが…いたせいで……。」

姉さんはそこから泣き続けてしまった。
俺は小さな手で姉さんの頭をしばらくの間、撫でた。

「姉さん。僕は姉さんがいなかったら今まで退屈な人生だったと思う。一年も会ってないのに姉さんの事を考えると会いたいなーって思っちゃって。だからね。姉さんはいてくれなきゃ困るんだよ?僕は姉さんがいない人生なんて嫌だからね。だから、病気を治しにここまで来たんだし。それにね。姉さん。姉さんは学園に行ってるんだよ?姉さんは学園の勉強を一生懸命したらいいの。考えてみて。僕は1日ずっと何もする事が無くて暇で仕方が無いんだ。だからね。約束して。僕はこれから、小遣い稼ぎをしようと思うんだ。今日もね、銀貨2枚稼いだんだよ。僕も家族なんだよ?家族皆で、協力してお金集めようよ。お金が足りなくて母さんや、ミーシャさんが辛い思いをしてるのは、姉さんの責任じゃないよ。家族皆の責任だよ。だから、僕がお金を稼ぐ分、母さんと姉さんは仕事の量を少なくしてね。絶対だよ。ホントにホントに絶対だよ。その分、姉さんは学業に専念してね。今でも姉さんの事が憧れの存在なのに成績トップになったら、もっと憧れの存在になっちゃうよ。僕はそういう姉さんが早く見たいなー。母さんも、今日、僕と会ってから心から笑えてない気がするし、元気のない姉さんと母さんは普通に可愛いけど見たくない!だから!家族皆で負担し合おう!僕も皆の力になりたい!」

姉さんが驚いたように、また、何か大切な事を思い出したかのように目を大きく見開いて大粒の涙を沢山流し続けた。何度も何度もある言葉に乗せて。






「ありがとう…。ありがとう…。ありがとう……。」

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