最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

1章。エクストラリラックスは悪用禁止!

アンダンテ領の王都へ来たレインは、母のスノウと姉のサンの家を走りながら探していた。

「お腹すいてきたなぁ。朝、何も食べなかったし…お金もないし…」

『帰りに魔獣を討伐して行きましょう。村の人も喜びます。そんな事より、コッチですね。ココを右に曲がって…まっすぐです。』

「カーナビみたいだなぁ。神ちゃん凄い。」

『(どやさぁ)』

「……うん。そんな事より、やっぱり女性が多いね。皆、可愛いから目の癒しにはピッタリかも。」

『レイン様、自分が今は五歳という事を忘れないようにしてくださいね?まぁ、欲情したとしても女性からは喜ばれるだけですが』

「欲情しないよ。俺はビビリだし。見てるだけでいーの!」

『なら安心です。そろそろ着きますよ。』

「ふぅ。沢山走ったぁ。にしても、ココ?何か、寮に見えるんだけど…」

『はい、ここは学園寮ですね。』

「母さんもここに居るの?」

『はい、レイン様の記憶には無いかもしれませんが、スノウ様はレイン様を学園に入学するためのお金を稼ぐためにサン様と一緒に王都へ向かったそうです。恐らく、お金の節約のために、サン様の部屋にスノウ様も泊まってらっしゃるのかと。』

「迷惑かけてるんだなぁ。僕も何か稼げないかなぁ。」

『冒険者ギルドに行ったら、手っ取り早く稼げますよ。レイン様なら石だけで、Cランクレベルまでの敵を瞬殺できると思います。それ以降は剣や魔法を使えば、Sランクレベルも余裕かと。油断は駄目ですけどね。』

「やってみようかなぁ、親孝行したいし。」

『今はまだ親に頼るべき年ですけどね。するに越した事はないでしょう』

「今日の帰りに寄ってみようかなぁ」

『そうですね。それが良いと思います。』

「よし、姉さん達に会いに行こうっ!」




がちゃ。

「すみませーん。誰かいませんかー」

「はーい、ご要件はなんで…………。え!?女子寮に男の子!?かかか、可愛い!可愛い!可愛い可愛い!」
出てきたのは18歳くらいのキレイな銀髪ロングの若い女性だった。とても可愛い。


「えーっと……。」

(こんなんばっかりだな。嬉しいけど。)

「どうしよう!え!?もしかして、私を探しに来てくれたの!?お嫁さんになら喜んで!うふふ!」

(駄目だこりゃ、恥ずかし)

「………。レインと申します。あの、スノウ様とサン様はいますか?」
顔を赤くしながら俺はそう言った。

「あ………寮母のミーシャと申します…。家族の方ですか…?いますが…今、病気で…二人共寝込んで居られて…。寮母の私がもっと二人の健康に気を使ってあげれてれば…。本当に申し訳ございません!」

寮母と称したミーシャさんは悲しそうに涙を流しながら、先程とは全く違う様子で頭を下げた。
前世では全く考えられないが、この世界での風邪は死を意味する。薬は薬草だが勿論高い。平民にはとても買えるような物ではない。

「頭を上げてください。今の言葉と態度で、母と姉が良くしてもらっていたのが分かりました。いつもありがとうございます。部屋に案内して頂けますか?」

「は、はい…。」



連れて来られた先は普通の部屋だった。
中には布団で横になって寝ている真っ白なキレイな髪の母と真っ赤なキレイな髪の姉がいた。
聞いた話によると3日前から二人とも風邪になり、日々悪化しているという事だ。
風邪の人間を隔離している様子も無いため、誰かから伝染ったのだろう。
そして…。

「この寮に他に風邪の方はいますか?」

「はい…、最近、風邪の子が増えてしまって…、私の不注意で…私のせいで…皆、死んでしまうかもしれない…薬もないし…回復魔法師はどうにも出来ないって言うし…どうしたら…」

自分を責めて泣き崩れてしまったミーシャさんに心を打たれた俺はつい、頭を撫でていた。
「大丈夫です。僕が何とかします。それに、落ち込むよりも対策を考える方が大切ですよ?」

(うーん、5歳児が18歳の年上の女の子を慰める。俺なら気に入らないシチュエーションランキング第8位にはいりそうだな。)

『この世界では初対面のイケメンに頭を撫でてもらえれば、妊娠するって言われてますから慰め方としては上出来ですよ?』

(どういう原理だよ!!ん?ミーシャさん?)

「妊娠しちゃうよおおお……私なんかが………あああ」
泣きながら俺に抱き着いてトンデモ発言をするミーシャさん。

「あは…は……。」
嬉しいし、恥ずかしいんだが、どう対応して良いのか分からない。
前世の俺、もっと女子と話しとけよ。

「ぼ、僕、こう見えて、回復魔法が使えるんですよ。任せて下さい。魔力が尽きるまで何度でも付き合いますから」

「…ほんとうに?…治せる?…でも学園の優秀な回復魔法師に頼んでも無理だったのよ?」

「出来るか分からないですけど、やらないで諦めるよりかは僅かな可能性に賭けてやった方が良いでしょう?それに、僕は家族を失う気なんて全くありませんし。何が何でも治してやりますし。」

「ですよね…。ありがとうございます…。お願いします。」

「最善を尽くします。」



そうして、母さんと姉さんの寝ている部屋にミーシャさんと入った。

「グッスリ眠ってますね。可愛いです。」

「ずっと…二人共、昨日から寝たきりなんです…。」

「大丈夫です。姉さんからやってみます。」

(神ちゃんず!作戦会議!)

『はい!風邪の治療ですね!』

(うん。風邪っていうだけで原因は分からないけど、取り敢えず普段は体の中に居ない異物を消すイメージが必要だよね。)

『そうですね。殺菌した後は栄養不足による免疫の低下を抑える必要があります。二人の爪が栄養不足を物語ってますので。先日、捕まえた角クマを私達は持ってますので風邪になった人達に特別に何か作った方が良いかもしれません。角クマの角は長ければ長い程、栄養が豊富と言われていますし。』

(了解!じゃあ、取り敢えず、殺菌をイメージしてみて回復魔法をかけるよ。一応、異物が無くなれば熱は下がってくれるだろうし。あ、ちや、待った。ストレスの可能性もあるか。)

『はい、ストレスの場合は殺菌とは違う対処が必要ですね。そちらは後にしましょう。取り敢えず、殺菌しましょう。』

イメージイメージ。
殺菌をイメージ。
うーん。
というか、風薬をイメージしたらいいのか?

(ごめん、神ちゃん、風邪薬をイメージするのってあり?)

『中に何が入ってるかとかの成分が分かれば魔法で自然構築できますから大丈夫ですよ。』

イメージし直し。
解熱剤と言えばアセチルサリチル酸。
構造式をイメージしたのだけれどこれで良いのかな。
これに加えて…殺菌はやっぱりしとこう。
免疫細胞が戦ってるのに協力協力。

よし。何となくでイメージできた。
『呪文はヒールではなく、ハイヒールにしてみて下さい。ハイヒールは傷にも効きますが病気にもイメージが出来ていれば効きます。』

(了解)

「殺菌殺菌!免疫細胞に協力!トドメののアセチルサリチル酸!ハイヒール!」

手を当てているのは姉さんのお腹なのだが、姉さんの体全体が白い光に包まれている。
どんどん、姉さんの体の中の悪い物が消えていく感覚が頭に伝わってくる。
神ちゃんの力を乗せていることで、そういうのが分かるようになってるらしい。

「お!手応えあり!」

「ほんとですか!?」

「はい!暫くしたら熱が下がると思います。ただ、栄養不足が見られるので後で調理場を貸していただけますか?」

「え、栄養不足!?うそ?私、しっかりとご飯は作って食べもらってるつもりよ?」

「栄養にも種類が沢山あってその内の何かがきっと不足しているんですよ。後で、一緒に作りましょう!」

「は、はい!」
ミーシャさんに少し元気が戻っていた。

「次は母さんだな。取り敢えずは…さっきと同じ…ハイヒール!」

うーん、異物が消えてはいる。だけど、それだけじゃない。まだ何か黒いモヤモヤがある。
やっぱり、ストレスかなー。
お金稼ぐのも大変だろうしな。
ありがとう母さん。

『上級魔力のエクストラヒールは何にでも効きます。ただ、私達を経由しても魔力の消費は多いです。先程、殺菌はできたので、疲労を取る魔法だけを造りましょう。レイン様ならきっとできます。』

(リラックス効果のある成分を集めるか…。でも流石に分からないなぁ…。というか、疲労はすぐには消えないしなぁ。ん?疲労?強制回復って使えるの?)

『強制回復を利用すればどんな物でも一発解消です。他人に使う際には色々する事があります。ですが、強制回復を使ってしまえばレイン様の魔法修行になりません。これは魔法を作る練習なんです。』

(修行だったのね?これ。よーし。考えてみるよ。)

『この魔法が終わったら反省会ですね。指摘する部分がいくつか見られますから。』

(了解!)

イメージイメージ。
疲労回復。
でも、疲労ってすぐは治らないもんなぁ。
いや、それをどうにかするのが魔法の役目。
まずはアロマだアロマ。リラックスできるぞ。イメージ。イメージ。そっか!匂いをイメージしても良いのか!家にあったアロマに匂いをイメージして…。
次はお風呂!少しぬるいお湯に長く浸かる。
体にぬるま湯と同じくらいの温度の水みたいな硬度の膜をまとわせるイメージ。うんうん。
あとは…松の木の成分!確か… フィトンチッド?でも、構造式が分からないし…。でもイメージだからな。あくまでイメージ。松の木から放たれる匂いをイメージして。
脳内物質のセロトニンを分泌。イメージは…うーん…脳から心を落ち着かせる成分が出てる大雑把なイメージ。適当だなぁ。でもしないよりかはましだよね。
次に血流促進。つまった老廃物を流すイメージ。
一応、思いつくだけイメージしたんだが…リラックスって時間をかけるのが大切なんだもんなぁ。うーん。
時間をかけて少しずつ体から黒いモヤモヤが抜けていく感じをイメージする。イメージイメージ。イメージ!
よし。
イメージを全部くっつけて…。
凄い大変だなぁ引っ付けるの。
できてるのかなぁ。
ミーシャさんに試してもらおう。

「ミーシャさん、今から僕が作ったリラックスの魔法を試してみる気はありますか?」

「え?リラックス?そんな事できるの?というか魔法を作った?それ本当?確かにハイヒール使えるだけで驚きだけど、その時の詠唱も何か不思議だったなぁ。うーん。うん。これで、スノウさんが治るなら。ドンと来い!」

「じゃあいきます。」


「アロマの香りとフィトンチッド!セロトニンを分泌!ぬるま湯の膜を張って、血流促進で老廃物を流す!これらを少しずつ少しずつモヤモヤを消しかけるように実行!リラックス!」

ふぅ随分と長い詠唱になった。

ミーシャさんが柔らかい光に包まれた。
すると…

「あっ//、えっ、いやっ、な、何これ、気持ちい////、ああっ、だ、だめ、あぁ////」

(エロいエロいエロいエロい何これ。)

『反省会をしましょう。まずですね。一つ。魔法は呪文も効果の内です。使用者が呪文の意味を理解していればそれなりに結果はでます。なので、リラックスという言葉の意味を考えながらリラックスと唱えればリラックス効果がでるのです。ヒールの例を考えましょう。一般人がヒールと唱えた時にかすり傷を治す事しか出来ないのは、傷を治すというイメージがあるからです。抉れた傷を治す時にそのイメージだけでは傷の形にそって皮膚を覆うだけで、抉れた部分は戻りません。そこに再生のイメージを付け加えるだけで、細胞分裂を促すような効果が付与される訳です。なので、今回のリラックスは言葉の意味を考えている事と具体的なリラックス方法を考えていた事で総合的な相乗効果で快感に襲われる程のリラックスの魔法という事になります。エクストラリラックスですね。エロエロです。』

「い、ああ///、あっ、い、いい///、あぁあ、レイン君、れ、レイン君、も、もっと…////ああああああ//////」

(やべぇ、エクストラリラックス。エロ過ぎ。ん?あ、やべぇ、ミーシャさんなんか、床が濡れてません?どんどん、水溜りが…。そんなに効果あるの?エロいエロい。これ。自分にやってみたい気が…、いやいや、やばい、罪悪感湧いてきたな…止めてあげよう。)

『あと、構造式とか色々考えていましたが、そこまでする必要はありません。名前だけ想像して頂けたらこちらで集めますので十分です。今回の収穫は匂いによるイメージ方法ですね。想像した匂いが出せるようになるということです。まぁ、それは物質名が分からない時に有効活用すると良いと思います。もう一つ言うと、殺菌とかも殺菌という言葉の意味を考える事が大切です。免疫細胞に協力とかは具体的にはなりますが、そこまで意味はありません。』

(そうなのか…。学ぶ事が沢山あるなぁ。ん?ってことはさ…さっき栄養がどうこう言ってたけど、ビタミンB1とか考えてたら補充できるわけ?)

『あ………。そこまで頭が回りませんでした…。ま、まぁ、栄養は食べ物から得るものです!そうです!』

(天然かなぁ。ドジかなぁ。それともアホかなぁ。)

「はぁはぁはぁ。さ、さっきの、もう一回、もう一回して欲しいです。はぁはぁ。」
女座りをしているその床がどうなってるかも知らずに顔をトロンとさせた、ミーシャさん。

「あ、あの…すみません…思った以上に効果があったんですけど…その…床が…多分、着替えてきた方が…良いかもしれません…。」
申し訳なさそうに言う俺。

「はぁはぁ。な、なんの事で…す………か…………。え。う、ううう、嘘!?あわわ、すみません!き、着替えてきます!!」

(ミーシャさん、ごちそうさまでした。)

『レイン様、その魔法、悪用しちゃ駄目ですよ。』

(うん、何か悪い事しちゃったなぁ。掃除しよ。でも、俺が掃除していいのか?変態に思われないかなぁ。)

『うーん、多分ミーシャさんはイケメンに嬉しい事をしてもらえたと思ってるでしょうね。変態には思われないと思います。寧ろ、私のこんなものを掃除してくれて嬉しい!結婚して!ってなると思います。世界観が前世とは相当違いますからね。あ、清掃魔法を作ってみて下さい。これは簡単ですね。』

(なるわけなだろ。清掃魔法ね。)

イメージイメージ。
えーっと反省を活かして…言葉の意味を考える。
清掃。キレイにする。菌を無くそう。除菌除菌。水分の除去。埃の除去。

「水分、埃の除去。とどめに除菌。清掃魔法。」

目の前にあった、水たまりが消えた。

『完璧ですね。』

「魔法って便利だなぁ。じゃあ、母さんにも魔法かけようかな」

『加減してくださいね、ミーシャ様の二の舞にならないように』

(それはそれで面白そう…いやいや、相手は病人だ。清く正しく美しく。)

『心に清掃魔法かけましょうか?』

「ごめんなさい、真面目にやります。」

イメージ。
リラックス。疲労感の完全除去。主に筋肉の無駄な強張りとか。心地良さを追求。

「疲労感の完全除去!リラックス!」

母さんが柔らかい光に包まれる。
すると、黒いモヤモヤが少しずつ小さくなっていった。だが、残っている。核のような物が残っている。

「これは、あれかな?ストレスの根源が解消出来てないから、駄目ってやつか。」

『はい、恐らく。そこは、現実的な解消が必要です。これで、二人は暫くしたら起きるでしょう。次は栄養ですね。やはり、食べてもらいましょう。レイン様も食事してませんし。』

「あー、確かにそうだね。じゃあ、ミーシャさんが戻ってきたら、他の部屋の風邪の人を治すのと、調理だな。」

ドタドタドタ。

ミーシャさんが戻ってきたようだ。
「はわわ、さ、さっきはすみません。恥ずかしい所を、えへ、えへへ。はっ。そそ、掃除させて頂き……。あれ?」

「あ、掃除はもうさせて頂きました。先程はすみませんでした。」

「う、嘘…でしょ…、こんな…よ、汚れ…仕事を…男の子が………す、好きです!!結婚して下さい!!!」

(なんだこの世界。)




そして、その後も別の学生にハイヒールをかけ続け、皆、すぐに熱が引いたようだ。
そして、今からは調理の時間だ。


「ミーシャさん、角クマの調理法は分かりますか?」

「つ、角クマ!?し、知りません!倒すんですか?やめた方がいいですよ!?」

「いや、もう倒した後です。じゃあ、調理法は僕が教えますね!」

(神ちゃん、角クマだーして。)

『承りました!』


ドドドドドドドスン!

何も無い空間から角クマが七匹落ちてきた。


ミーシャさんの顔はムンクの叫び的な雰囲気だ。ちょっと滑稽。

(そういや、これ、魔法?)

『収納魔法です。レイン様が使えるようになるまでは神ちゃんずが支援します。かなり沢山の魔力が必要なんです。』

(凄え、流石、神ちゃんず!)

「収納…魔法ですか……しかも、こんな量……?」

「量?収納魔法って量が決まってるんですか?」

「あ、当たり前ですよ。使える人は少ないですし、使えても角クマ一匹入るくらいですよ?それに、いつ倒したんですか?ついさっき倒したってくらい新鮮なんですが…」

(あれ、神ちゃん?これ、やらかしだよね?)

『…………てへ!時間停止機能もあるのです!』

(だめだ、チートだ。)

「奇跡ですよ、奇跡!たまに、何かの間違えで入っちゃうんですよ。それにさっき倒したんですよ?寮の前にいきなり現れたんで、誰にも見られないように瞬殺したんです!」

「嘘でしょ…?有り得ないよ…。でも、レイン君、素敵!だーいすき!」


そう、さっきの求婚以来、何をしても褒めちぎられる。一人治すたびに求婚され、笑って誤魔化し、褒めちぎられ、あーもう。照れちゃう照れちゃう。
ミーシャさん、可愛いし可愛い!
抱きつきたーい!
もう一回エクストラリラックスかけたーい!


という内心は隠しておいて…

『うんうん、隠しておいて…。』



(勝手に聞くなー!!)




そして、波乱万丈のチート式調理実習が始まるのであった。

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