最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

1章。ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!

俺は角クマがいなくなった村を歩き回っていた。
どうやら、一匹残らず倒せたみたいだ。

「神ちゃん、父さんがどこにいるか分かる?」

『クラウド様や村人は皆、それぞれ家にいるようです。ただ、警戒状態にあるので扉は強固に閉じられています。』

「あー、でも、壊したらマズいしなぁ。どうしよう。」

『レイン様…。声で呼びかけたら良いではありませんか…。』

「あ。」

(俺も人の事ドジとか余り言えないなぁ。)




こうして、家の前にやってきた俺はドアをノックして、大きめの声を出した。
因みに、俺の身体能力は神ちゃんずが随時コントロールしているらしいので今は5歳の一般的な力のままだ。
「父さーん!帰ってきたよー!角クマさんはもういないよー!」

暫くすると大きな足音が聞こえてきた。

ドタドタドタドタ!

がちゃり、

ドアが開いた。


クラウドは体中に血が付いている俺を見て唖然としていた。
そして、涙を流していた。

「ただいまー!お腹空いたよー!何日食べてないんだっけ?あはは!」
俺の記憶にあるレインの元気な話し方を真似してみた。

クラウドは何も言わずに俺を抱きしめていた。

「父さん?怪我とか何もしてないから、大丈夫だよ?安心して?でも、父さんが無事で良かったよ。僕、怖くて逃げちゃったからさー。そのまま、山の下の方まで転げ落ちちゃって。あは。」


まだ、クラウドは何も言わない。
ただ、分かったことがある。
ずっと涙を流している。


俺はそれから暫くはそのまま、ずっと父さんを無言で抱きしめたままでいた。


『優しいですね。レイン様。』


声に出すとバレるので、心の中で俺はこう呟いた。




もう誰も自分のせいで未来みくのようにはなって欲しくないからな。





そんなこんなで家に入り俺はここまでの状況を父さんに話した。

「山から落っこちちゃってさ、そこから、走って戻ったんだけど、クマが沢山死んでたんだよね。」

そう、5歳児が倒すには明らかに角クマという魔獣は強すぎるという事を神ちゃんが教えてくれたため、何か勝手にクマが死んでた事にした。

『角クマはCランクの冒険者が2人居れば安全に倒せる相手です。ただ、この村は冒険者がいないため、隠れる事しかできなかったのでしょう。』

(そっかー、護衛みたいなのも派遣されてないんだね。そういやさ、クマを倒したって言うのは無理があるって分かるんだけどさ、回復魔法は言っても大丈夫なのかな?ずっと、父さんの腕の包帯が気になって仕方が無いんだけど。)

『多分、大丈夫だと思いますよ。流石。ファザコンですね。』

そんな、神ちゃんを無視して俺は

「父さん。何か、山から落ちた時にさ僕、捻挫してたんだけど適当に手を当てたら何か治ったんだよね。これって魔法なのかな?父さんの腕の傷、治せるかもしれない。」

「ええええええ!?レイン、お前…、魔法が…というか…回復魔法が…使えるのか?」

(あれ、大袈裟過ぎね?神ちゃん。)

『あ、忘れてました。この世界では回復魔法を使える人が少ないんでした。医学知識が余りありませんからね。ん?あっ!神ちゃん選手やってしまったー!!!!!』

(ドジちゃんに改名しようか。)

呆気に取られたクラウドに返事を返す
「回復魔法っていうの?何か、それっぽいかもしれない。僕、凄いの?どっかに売り飛ばされちゃう?」

「…回復魔法は実用的に使える人が少ないんだ。一般人でも呪文を唱えたら光は出るんだが、小さな掠り傷くらいしか治らないようなものだ。なのに、捻挫を治すっていうのは…流石に…まぁ、無事なんだから良い、どうだ、レイン、父さんの腕を治してみせろ。」

「そうなんだ。意外だなぁ。まーいっか、やってみるよ。」


ん?待てよ?ヒールって言ったら何で呪文を知っている?ってなりそうだなぁ。五歳児がそんな言葉知ってるのか?
んー。


『多分、心の中で呟いてもできますよ。試しにやってみましょう。』


おー。そうなんか。よし。

(細胞血管筋肉神経よっこいしょ。ヒール)



クラウドの腕が白く輝く。
どんどん傷が塞がっていく。



「え?レイン、何でもう腕が光ってんだ?お前まだ何も言ってないだろ?てか、ホントに使えるのか。」

「え、ダメなの?」

「ダメじゃないけど、どうやったんだ?」

『……?あ…………。』

(あ、コイツやりやがった。)

「あはは、父さんに聞こえないくらい小さな声でヒールって呟いたんだけどなぁ…。」

『演技力48点ってところですかね。』

(誰のせいだよ。)

「…何言ってるんだ?呪文はヒールだけじゃないだろ?」

突如、クラウドがよく分からない事を言い出す。
「え?ん?あー…そうだよね。あはは。」

(おい、神ちゃん、もしかして何かまだ俺、やらかしてる?)

『レイン様!私とした事が普通の呪文を教えるのを忘れていましたわ!【光れ、傷を癒し給え、ヒール】っていうのが、一般的な呪文なのよ?でも、何か、いちいち面倒じゃない?だから、【ヒール】でいっかって思っちゃったのよ。私ったらもうダメね。』

(魔法の神ちゃんか…。うん…。もうダメなのは知ってたよ…。大丈夫…。)


何とか父さんに勘付かれないようにせねば…。



「何か、呪文を詠唱するのが早口でできたんだよね?父さんも出来るでしょ?ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!ほら!ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!ね?」

「おお?そうか!ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!ヒカレキズヲイヤシタマエヒール!おお!父さんにも言えたぞ!ははは!」

(よし!誤魔化せた!)

「誤魔化せると思うか?」


(だにぃ!!!!??)



「まず、大体、どこで呪文を知ったんだ?魔法は学園に入って本格的に学ぶものだぞ?そりゃ、山の下に降りたら魔法を知ってる人が多いから呪文を知ってる人がいてもおかしくないが、この村には魔法が使える者はいても、教えてる奴はいないはずだぞ?小さい子が覚えると悪く使いそうだからっていう村の掟だぞ?何でお前が知ってるんだ?」


誤魔化せ誤魔化せ!俺!
「山から落ちてた先に、回復魔法に関する本があったんだ。それを読んでて…。」

「あぁ、なら無理もないな。レインは何故か昔から平民なのに文字も読めてたからな。そういう事か。疑って悪かった。でも、ホントに使えるとはな…。この村には回復魔法を使える者はいない。でも、他に怪我をした人がいるからな。助けてやれ。ついてこい。」

(勝った!勝った!勝った!レイン選手!勝ちました!!)



それから、神ちゃん経由で回復魔法をヒカレキズヲイヤシタマエヒールという片言の呪文で使いまくって、村人から感謝され、問い詰められたのは言うまでもない。何故かキャーキャーと騒ぎ立てられもしたが。

その日から俺は

【癒やしのレイン君】という二つ名が村の中だけでついた。

少し恥ずかしい。

そして、気づいた事がある。村人に女性が多いのだ。何故かは前のレインの記憶を辿ってもわからなかった。


そして、一通り治療が終わった後、疲れたため、家の布団で寝転がりながら5歳までのレインの記憶を深く辿っていた。




父クラウドと母スノウから産まれたレインには姉のサンがいた。
父のクラウドは灰色の髪をしていて黒目で優しそうな顔をしている。
母のスノウは真っ白な髪で目が赤く兔のような雰囲気がする。
姉のサンは、綺麗に真っ赤に染まった髪をしていて、目も赤色だ。とても可愛い。可愛い過ぎる。嫁にしたい。
弟のレイン、つまり俺は、母親譲りの白い髪に少々水色の髪が混ざっていて青白い目をしている。多分、イケメンだ。
遺伝子どうこうのレベルで無く血が繋がってないようにしか思えない家族だが、どこかしら顔のパーツの配置が似ていて、髪の色が違うだけというようにも思える家族だ。

父と母はどちらもとても優しく、姉は俗に言うブラコンでレインにデレデレだった。まぁ、何故か母もレインにデレデレだった。
いつも、二人が可愛い可愛いレイン君!と言って抱きついてきた。
あはは。嬉しすぎて。鼻血が…。
記憶ではレインもシスコンかつ、マザコンらしい。
だからか分からないが、今は睦月ハジメとしての意識なのに姉や母の事を考えると心がキュンキュンしてしまうのは反射的なものなのだろう。
お金はあまり無いものの日々、木材や薬草などをお金に変えてヒッソリと暮らしていた。
食事は主に、山の下から取り寄せたパン。たまに、この山の付近で取れた魔獣の肉などを食べていた。
勿論、前世を知っていると十分な食事とは言い難いが、村の規模が小さいため互い取れた食事を分け合ったり、村人皆が同じくらいの量を食べる事に決まっていた。
平和そのものだ。
何故かは分からないがこの村には女性が多い。
そして、よく父のクラウドと伴にチヤホヤされている記憶がある。
そして、去年、姉のサンは10歳になったため、母のサンと伴に王都へと向かい学園に通った。
だから、実質、今、この村にいる家族は父のクラウドのみだ。
とても寂しい。早く王都に行きたい。
姉さんや、母さんは元気だろうか?

『スノウ様とサン様が今、病気らしいんですよ。』

「うわああ!!」

いきなり神ちゃんが話してきてつい声を出して驚いてしまった。

『あははは、レイン様、驚き過ぎです。それと、先程から気になっていましたが、この世界は男女比率が少し前世と違っています。女性の方が男性より明らかに多いため、男性は皆から注目されるのです。だから、スノウ様やサン様、村の女性はレイン様にキャーキャー言うのです。勿論、クラウド様もモテモテですよ?』

男女比がおかしかい?俺は余り読まないがそれは例のラノベとかでよくあるやつでは…?とか思いつつ、質問を返す。
「じゃあ、男性ってどんな職に就いてるんだ?女性もだけど。」

『男性は殆ど身分の高い貴族で領地を治めてますね。あとは王様は殆ど男性です。この村にいる人は貴族にはなりたくないという一心で逃げてきたような方々が多いです。女性は一夫多妻制であるため子を授かろうと懸命です。ですが、この世界の仕事は主に女性が回してると考えて良いと思います。男性は偉そうな態度を取ったり、優越感に浸ってるクズ野郎ばかりの世界なので、レイン様はそうはならないよう気をつけて下さい。この村の男性は比較的、優しい人ばかりなので前世との環境に限りなく近いという理由でこの村にレイン様に転生させたのだと思います。』

「これ、ハーレム的な何かある?余りグイグイ来られるのは母さんと姉さん意外、苦手なんだけれど。」

『限りなくあると思います。ですが、レイン様から行動しない限り恋心を寄せて近づく人は少ないと思います。皆、流石にレイン様のイケメン顔を見たら緊張で動けないと思いますので。歩く災害です。それに、もしかしたらレイン様は王都に行く事をクラウド様が許さないかもしれません。間違いなく貴族に目を付けられるからです。まぁ、明日、王都に行ってもらうんですけどね。』

「何か、俺の存在、迷惑だな。で、何で明日?」

『スノウ様とサン様が二人とも、病気にかかっておられるのです。治しにいくべきかと。』

「医者に行けばい……あ、いないのか。でも回復魔法師は?」

『前世とこの世界とでは、病気というものの重みが違いますね。前世の風邪はこの世界での死を意味します。まず、医者はいません。それに医学知識のない回復魔法師の回復魔法は傷に消毒液をつけるだけのようなもんです。レイン様が行かなければ恐らく……。』

「今から行こう今すぐ行こう絶対行こう!」

『それもよいのですが、暗いと災害レベルのレイン様は危険にさらされやすいです。主に女性から。なので、明日の朝、クラウド様から逃げるように神速を使い、王都まで行きましょう。ここから王都までは下りなので大体4時間です。しかし、帰りは大体7時間かかります。』

「ねぇ、そういえば、一気に移動できる魔法ってないの?」

『転移魔法はありますが、今は魔力的に難しいですね。』

「神ちゃんずの力を使っても?」

『あ。できますね。それなら。ただ、行きだけは神速を使ってもらいます。一度行った場所にしか行けませんので。あと、転移魔法は余り使わない事をオススメします。』

「何で?」

『レイン様の夢は人助けです。道を歩いていて困っている人がいるかもしれない。それを素通りするのと同じことなのです。』

「納得。じゃあ、緊急事態のみ転移魔法は使おう。」

『そうですね。では、明日、計画実行です。』

「姉さん達の事を伝えてくれてありがとう。おやすみ。」



こうして、男女比がおかしいながらも、最強になったレインの人助けをする異世界生活が始まるのである。


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