創造と学習のスキルを手に入れたので薬でステ上げします

蒼沢そら

街へ

スライムを撃退し、再び街へ向かい歩き始めてしばらくすると、ユリアが呟いた。

「―ほんと、スキルって便利ねぇ・・・」
「・・・何だ急に。」
「いや、だって・・・」

ユリアが視線を向けた先には、2人の荷物を嫌な顔1つせずに運ぶもう1人のヒロ分身体がいた。

「あー・・・まぁ、確かに便利だけど良心が痛むな。」
「最初に持たせようって言ったのはどこの誰だったかしら。」

―スライムとの1戦を終え、分身体を解除しようとしたヒロだったが、どうやら分身体は戦闘とは別に宿主からの命令を果たすまで消滅しないらしい。
分身は本体の命令に従順だったので、ヒロは「自分たちの荷物を持つ」という命令を与えた。要するにパシリだ。

「ま、まぁ、少し楽したいって気持ちもなくはない・・・けど。」

―ホントは楽したい気持ちしかないが。

「あと少しで街につくから、それまでよろしくね!」

ユリアの労いの言葉に、ヒロ分身体はこくりと頷いた。

ふと、ヒロはあることに気づき、ユリアに質問を投げかけた。

「・・・そう言えば、スキルが便利とか言ってたけど、スキル持ちってそんなに珍しいのか?」
「ほんとに何も知らないのねぇ、ヒロは。」

まぁいいか。と呟き、ユリアは続けた。

「スキルの発現方法には2つあってね、1つは冒険者になって、職業につくこと。こういった発現の仕方をすると、職業に応じたスキルが発現しやすいの。」

―職業ごとのスキル。ますますゲームみたいだな。

「2つ目は生まれつき持っていたり、転移・転生をした時にスキルを得る場合ね。こっちの発現の仕方をすると、戦闘向きのスキル以外のスキルも発現するみたい。」
「つまり、俺は後者か。」
「そういうこと。だけど、2つのスキルを持っている人間なんてギルドマスターと、<修剣術士ブレイヴキャスター>くらいしか知らないわね。」

<修剣術士ブレイヴキャスター>というのが少し気になったが、この世界で2つのスキルを持っている人間はそう多くないようだ。

ふと、気になってユリアに聞いてみる。

「それじゃあ、<創造クラフター>のスキルはどうなんだ?」
「もう1つのスキルの方だけど、『MPを消費して物品を創造することが出来る』っていう説明だけだと他の生産スキルと比べてあまり大差はなさそうね。」
「そっか。」

しかし、ヒロ達はまだ知らなかった。<創造クラフター>のスキルこそが真に恐れる能力だったということを。

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