BLストーリー

卯月//黒月//

天の聖と翔の晴 4

天童はふらつく足取りで学校の裏庭を歩いていた。

さっきヤンキーの1人を投げた時に肩を余計に痛めてしまった。多分脱臼してるだろう。

「グゥッ、」

ドサッ
人目につきにくい草の上に倒れ込む。

「はぁっ、はぁっ、はあっ……」

今回は無理をしすぎた。受身を取ったとはいえ5階分の高さ。全身が軋むように痛い。

「くそっ……!」

タッタッタッ

「!!」

誰かの足音が聞こえてくる。複数?いや、1人だ。誰だ?

「おい!天童!」

この声は……さっきの地味野郎!
とっさに木の裏にもたれ掛かるように隠れる。まだ思いっきり動くことは出来ない。

「はあはあはあ……ここら辺で物音がしたはずたが。あ、」

「天童!」

突然目の前にあの地味野郎の顔がズームで出てきた。
足は隠しきれていなかったようだ。だいぶ薄れていく意識の中必死に目を開け、表情を崩さないように睨みつける。

「はぁっ、はぁっ……んだよ。」

「大丈夫なのか!?怪我は!?」

「して、ねぇ……それよりなんで……」

息も絶え絶えに呼吸をするのも苦しそうな天童。それでもなお、自分のことと関係の無い質問をしてくる。その目には驚きと哀れみ?いや、悲しみか。

「ッッッ!……お前は!なんでまた……!」

「お前、には、関係ねぇよッ……!」

無理をして立ち上がる。墲內はなぜだか、心の奥からムカついた。なぜこいつは人を助けても自分を犠牲にするのだろう。なぜいつも独りなのだろう。俺はいつもお前を見ていた。お前は知らなくても俺はお前のことを知っていた。

ダン!

「なんで……」

怒りに任せて天童の両肩につかみかかる。だがその思いを声にしようとすると、うまく出せずにただ泣きそうな声だけが漏れる。なんなんだ……なんなんだこの気持ちは、一体……!

「離せ。」

今までにないくらいの冷たい声で言われる。

「嫌だ。お前が逃げるうちは離さない。」

「……いいから、離せよ。」

「……」

「……」

「……」

「……わかった。逃げねぇから、離せ。」

ため息と一緒に出た言葉からはあきらめの色が見えていた。
安心して手を離す。
すると突然天童が倒れるように座り込んだ。左手は右肩に。
今日の朝痛いと言っていたことを思い出した。目を凝らすとYシャツが透けて紫色に腫れた肩が見えた。

「!すまない。強くつかみすぎた。」

「いや、いい。お前は関係ねぇ。」

「またそれか……」

「は?なんか、言ったか?」

よく見れば先ほどよりも、とても息があらい。額を触るととても熱かった。今は秋、まだ暖かいとはいえ午前中ずっと裸でいたことも関係あるのだろう。

「なんでもない。それより肩は?どうなってる、見せろ。」

「大丈夫だ……軽い脱臼だろうからほっといて、も……」

ガクッ。
突然天童から力が抜ける。とっさに受け止めたが体格差のためそのまま倒れてしまった。
どうやら痛みと熱で気絶したようだ。
このままだと1人では何も出来ないが、誰も来そうにない。1度誰かを呼びにいこう。

「うぅ、ま…て……」

「え?天童?」

「行く、な……」

「……天童……」

天童は眉間に皺を寄せて、涙目になりながら夢の中の誰かに言っているようだ。
しょうがない。こいつを置いては行けない。ここから動かずにやるしかない。
取り敢えず俺一人では何も出来ないので携帯でアイツを呼び出す。

「もしもし?セイジュか?ちょっと頼みたいことがあるんだけど……」

そうしてセイジュの手も借りながら取り敢えず俺の家まで運んだ。




「……なぁ、いいんちょ。こいつ良かったのか?保健室とかじゃなくて。」

「あぁ。なんか今そっちに連れてったら大変になりそうだったから。」

「あぁそうだな。にしてもこいつの体すげえな、筋肉もすげぇがそこらじゅうに傷があるぜ。」

天童は予想以上に体を鍛えていた。だが無駄な筋肉は一切付いていない。そして体のあちこちに切り傷や痣など沢山の傷跡とまだ生々しい傷もあった。

「……痛そうだな。」

「…………あれ?この所々にあるのってなんだ?」

「どれだ?」

「ほら、このちっちゃい丸い跡。」

「これって……!……煙草の、跡だ。」

「え?ま、じかよ。それって……」

「どうだろうな。それより早く服着せるの手伝ってくれよ。」

「おう。わかったよ。」

「じゃあな!なんかあったらまた呼んでくれ。」

「ありがとう……晴樹。」

「お、おう!」

…………

「ん……」

「起きたか?天童。」

「?……地味メガネ?なんで?」

「地味メガネって……俺は墲內 慶翔むない けいとだ。」

「ケイト?……ここは?」

朝が弱いと言っていた通りでだいぶ寝ぼけている(朝ではないが)。いきなりファーストネームで呼ばれた。

「あぁ、ここは俺ん家。お前が屋上から落ちて、裏庭で倒れたから連れて帰ってきた。」

「……そ、うだ!あのヤンキーは!?イッッッ!」

勢いで起き上がると右肩が傷んだようで蹲る。

「安静にしてろよ。右肩脱臼と打撲の両方してるし。あとお前がぶん投げたヤンキーなら無事に教頭に叱られてたってさ。」

「そうか……よかった……」

「は?」

「……あいつだよ、腐ってるフェンスに突っ込んじまって、そのあと俺、思いっきり投げちまったから。怪我してなくてよかったって。」

「馬鹿野郎!!」

「……っ!?」

「何が怪我なくてよかっただ!天童!お前が1番の被害者だ!」

「いや、でもあいつにはそれを悲しむヤツいるだろ!俺と違って……」

「そんなことない!」

「?それってどう言う……」

「俺はあんなやつよりお前が怪我しないで欲しかった……!お前が倒れた時どうしようかと思った、もうこのまま起きなかったら、どうしようって……!」

「なんなんだ?なんなんだよ……なんで、こんなクソみてぇなやつに……」

「ッ心配なんだよ!お前のことが……!」

「え?今、なんて……?」

「だからッ……お前が入学して最初見かけた時から、噂の割には優しそうで、悪い噂ばっかたってるけど、お前頭も良くて、隠してるだけでみんなのこと優しくて、かっこよくて……それに……」

途中から訳が分からなくなっている。声もだんだん涙声になってきた。なんなんだ一体、俺はなんて言ってる?

「もういい(ボソッ)……もういいから!」

「ぁ……」

遮るように声をかけられて初めて目を開けてみる。
やってしまった。そう思った。
だが天童は手で目のあたりを隠してはいるが顔を赤くしていた。

「もう、わかったから……それ以上は恥ずいからッ……」

心底恥ずかしそうに絞り出すような声で言った。

「わ、かった。やめる……お前、何でそんなに可愛いんだよ……(ボソッ)」

「かわっ……!それ以上言うなって……あ"ぁ"ぁ"ぁ"ー」

「ごめん。……ところで、ご飯……食べる?」

クゥゥゥゥ

可愛らしい音がした瞬間天童はボンッという音が聞こえてきそうなくらいに真っ赤になった。

「!ははっ。わかった、お粥でいいか?」

「ぉ、おう……」






そのあとは二人揃って目を合わせないようにしながら過ごした。天童の回復力はすごいもので、熱はあったが夕方にはもう自由に動き回れるようになっていた。だがそのまま帰ろうとするので、つい引き止めてしまい結局明日の学校に行くまでここに泊めることになった。

どうしよう。めっちゃ恥ずい


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