不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
三色月華②
魔封のイシドラが、ルッカに三色月華世界の話をしているのと同じ頃、白銀の魔女は、ゼウシスに語りかけていた。
その内容は、視点こそ違うがイシドラがルッカに語るのと、ほとんど同じ内容だった。
(あのまま我らが白銀の世界にとどまっていたら、世界は知らないうちに終焉を迎えるだけだった)
布教船の後方に座り、ゼウシスは黙って耳を傾けた。
(我とイシドラは敵になった。競うように、黒い雨を通って、蒼の月の世界に転移した)
三色の月の世界をすべて旅することが、世界を変容させるには必要だったのだ。
(そして、別の世界の自分の分身と出会い、一つとなる)
イシドラは、すぐに自分の分身を見つけたようだった。
だが、蒼の月の世界のイシドラはまだ幼く、意志の疎通を図るのに、時間を待たねばならなかった。
「あなたの分身は……?」
(我の分身は……)
白銀の魔女は、少しの時間沈黙した。
「……もしかして、わたし?」
(……)
「そうなのね」
ゼウシスは、沈黙を答えと解釈した。
(我に身を委ねよ)
「……いやよ」
(イシドラも、紅の月の世界にやってきた。もしも奴が、我より先にこの世界の分身とも一体化したら……)
「したら……?」
(イシドラが、三色月華世界の神となる)
ゼウシスは、すぐに意味を理解できなかった。
眉をひそめて、首を捻る。
「どういうこと?」
(世界が三つに分かれたとき、人間の存在も三つに分かれたのだ)
そのうちの一つが元の存在に戻るのをきっかけに、世界は一つに戻る。
そして、そのきっかけとなった一人の人間が、次の世界の神となる。
(イシドラが、もし我より先にそれを達成したら、偏屈者のイシドラ神の誕生というわけだ)
「じゃあ、もし、わたしたちがそれを先に達成したら……」
(さしずめ、絶対美の女神ゼウシス降臨といったところか)
「……面白そうじゃない」
ゼウシスは、ニヤリと笑った。
(ならば、我を今すぐ受け入れるがいい。早く、同化するのだ)
「いえ……それは、まだ後でもいいでしょ? それより、いち早くこの世界のわたしを見つけるのが先だわ」
ゼウシスは、考えこんだ。
「……どうしたら、すぐに見つけられるかしら?」
(自分の、本当の名前を思い出せばいい)
魔女は、言いかせるようにゆっくりと、しかし強い意志で伝えた。
本当の名前。
「本当の名前……」
(そうだ。世界が分かれても、分身は、同じ名で存在する。だから、その名前の女を探せばいい)
「エイミー……」
ゼウシスは、忌むようにその名をつぶやいた。
その内容は、視点こそ違うがイシドラがルッカに語るのと、ほとんど同じ内容だった。
(あのまま我らが白銀の世界にとどまっていたら、世界は知らないうちに終焉を迎えるだけだった)
布教船の後方に座り、ゼウシスは黙って耳を傾けた。
(我とイシドラは敵になった。競うように、黒い雨を通って、蒼の月の世界に転移した)
三色の月の世界をすべて旅することが、世界を変容させるには必要だったのだ。
(そして、別の世界の自分の分身と出会い、一つとなる)
イシドラは、すぐに自分の分身を見つけたようだった。
だが、蒼の月の世界のイシドラはまだ幼く、意志の疎通を図るのに、時間を待たねばならなかった。
「あなたの分身は……?」
(我の分身は……)
白銀の魔女は、少しの時間沈黙した。
「……もしかして、わたし?」
(……)
「そうなのね」
ゼウシスは、沈黙を答えと解釈した。
(我に身を委ねよ)
「……いやよ」
(イシドラも、紅の月の世界にやってきた。もしも奴が、我より先にこの世界の分身とも一体化したら……)
「したら……?」
(イシドラが、三色月華世界の神となる)
ゼウシスは、すぐに意味を理解できなかった。
眉をひそめて、首を捻る。
「どういうこと?」
(世界が三つに分かれたとき、人間の存在も三つに分かれたのだ)
そのうちの一つが元の存在に戻るのをきっかけに、世界は一つに戻る。
そして、そのきっかけとなった一人の人間が、次の世界の神となる。
(イシドラが、もし我より先にそれを達成したら、偏屈者のイシドラ神の誕生というわけだ)
「じゃあ、もし、わたしたちがそれを先に達成したら……」
(さしずめ、絶対美の女神ゼウシス降臨といったところか)
「……面白そうじゃない」
ゼウシスは、ニヤリと笑った。
(ならば、我を今すぐ受け入れるがいい。早く、同化するのだ)
「いえ……それは、まだ後でもいいでしょ? それより、いち早くこの世界のわたしを見つけるのが先だわ」
ゼウシスは、考えこんだ。
「……どうしたら、すぐに見つけられるかしら?」
(自分の、本当の名前を思い出せばいい)
魔女は、言いかせるようにゆっくりと、しかし強い意志で伝えた。
本当の名前。
「本当の名前……」
(そうだ。世界が分かれても、分身は、同じ名で存在する。だから、その名前の女を探せばいい)
「エイミー……」
ゼウシスは、忌むようにその名をつぶやいた。
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