不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

聖戦士対自由軍の少年たち①

 二組の集団は、手のひら空洞で対面した。

 ゼウシス一行と、自由軍の少年たち。

 どちらも、男三人に女一人という組み合わせだった。

 それぞれの女たちの容貌は、双子のようによく似ていた。

「教皇のご一行が、こんなところまで何のようでしょうか?」

 自由軍の代表は、アンドレが務めた。

 その横に、ミゲルとグレンが立った。

 グレンの傷はまだ癒えていなかったが、彼の存在はアンドレの気持ちを楽にしてくれた。

「王に歯向かう蒼い狼男なるものがここに匿われていると聞いた。引き渡してもらいたい」

 教会側で口を開いたのはゼノーだった。

 彼らとしても、できれば穏便にことをすすめたい様子だった。

 しかし、その横に立つ二人の男は、グレンと同じくらいの背丈があり、逞しかった。

 戦士であるのは間違いない。

 アンドレは、困った顔をした。

「そんなもの、ここにはいませんよ」

 両手を広げて、落胆してみせる。

「見ての通り、つい数日前、ここは六鬼に襲撃されました。自由軍はリーダーを失い、壊滅状態です。多くの仲間を失って、我々も途方に暮れているところです。もし、その蒼い狼男がいたとしても、匿う余裕なんてありませんよ。なんなら、このアジトをくまなく探してくれたっていいです」

 ほとんど本音だった。

 アンドレとしては、ルッカのことを正直に話してもよかった。

 あいつなら、紅獅子城に向かったよ。

 本当はそう言ってもよかったが、エイミーのために伏せておいた。

 ゼノーは、背後にいる教皇に、小声で相談した。

 アンドレは気がついていた。

 女教皇の視線はずっと、アンドレたちの後ろで隠れるようにしているエイミーに向けられていた。

 ゼノーが振り返り、回答した。

「そなたの言い分を信じよう」

「そうですか、それはなによりです。我々にはもはや、王に歯向かう気力は残っていません。お引き取り願えますか?」

「もちろん。我らはこれで引き返します。ただ一つ、お願いがございます」

「なんですか?」

「その、一番後ろに立っておられるお嬢さん、彼女も連れて帰りたい」

「え?」

 アンドレは、不意を突かれたように言葉を失った。

「このような場所で若い女性一人は、あまりに不憫です。まして性欲盛んな若い男たちに囲まれて……」

 ゼノーはゆっくりと、聞き取りやすい、抑揚のある声で語った。

 まるで、信者に説教をするかのようだ。

「我らと共にくれば、教会が、彼女の安全を保証いたします」

 アンドレたちにとっても、一考の余地がある提案だった。

 もともとエイミーはそよものだった。

 生粋の自由軍ではない。

 それに今後、今の彼らだけで彼女を守れる保証もない。

 とはいえ、ルッカとの約束もある。

 ルッカが戻るまで、エイミーの安全を頼まれているのは、自分たちだ。

 アンドレは、ミゲルとグレンの表情をうかがった。

 彼らにしても、アンドレと同様で迷っている様子だった。

 それならば、本人に決めてもらうしかない。

 振り向くと、エイミーはすぐに大きく首を振った。

「いや! わたしはここでルッカを待つ!」

 激しい拒否を示した。

 アンドレは、承知した。

 ゼノーに意思を伝える。

「と、いうことです。今回は、これでお引き取りを……」

「だめだ。その女は連れて行く」

 女教皇は、二人の戦士に命じた。

「イフテリオス、クエイル、あの娘を捕らえよ!」
 

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く