不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
聖戦士対自由軍の少年たち①
二組の集団は、手のひら空洞で対面した。
ゼウシス一行と、自由軍の少年たち。
どちらも、男三人に女一人という組み合わせだった。
それぞれの女たちの容貌は、双子のようによく似ていた。
「教皇のご一行が、こんなところまで何のようでしょうか?」
自由軍の代表は、アンドレが務めた。
その横に、ミゲルとグレンが立った。
グレンの傷はまだ癒えていなかったが、彼の存在はアンドレの気持ちを楽にしてくれた。
「王に歯向かう蒼い狼男なるものがここに匿われていると聞いた。引き渡してもらいたい」
教会側で口を開いたのはゼノーだった。
彼らとしても、できれば穏便にことをすすめたい様子だった。
しかし、その横に立つ二人の男は、グレンと同じくらいの背丈があり、逞しかった。
戦士であるのは間違いない。
アンドレは、困った顔をした。
「そんなもの、ここにはいませんよ」
両手を広げて、落胆してみせる。
「見ての通り、つい数日前、ここは六鬼に襲撃されました。自由軍はリーダーを失い、壊滅状態です。多くの仲間を失って、我々も途方に暮れているところです。もし、その蒼い狼男がいたとしても、匿う余裕なんてありませんよ。なんなら、このアジトをくまなく探してくれたっていいです」
ほとんど本音だった。
アンドレとしては、ルッカのことを正直に話してもよかった。
あいつなら、紅獅子城に向かったよ。
本当はそう言ってもよかったが、エイミーのために伏せておいた。
ゼノーは、背後にいる教皇に、小声で相談した。
アンドレは気がついていた。
女教皇の視線はずっと、アンドレたちの後ろで隠れるようにしているエイミーに向けられていた。
ゼノーが振り返り、回答した。
「そなたの言い分を信じよう」
「そうですか、それはなによりです。我々にはもはや、王に歯向かう気力は残っていません。お引き取り願えますか?」
「もちろん。我らはこれで引き返します。ただ一つ、お願いがございます」
「なんですか?」
「その、一番後ろに立っておられるお嬢さん、彼女も連れて帰りたい」
「え?」
アンドレは、不意を突かれたように言葉を失った。
「このような場所で若い女性一人は、あまりに不憫です。まして性欲盛んな若い男たちに囲まれて……」
ゼノーはゆっくりと、聞き取りやすい、抑揚のある声で語った。
まるで、信者に説教をするかのようだ。
「我らと共にくれば、教会が、彼女の安全を保証いたします」
アンドレたちにとっても、一考の余地がある提案だった。
もともとエイミーはそよものだった。
生粋の自由軍ではない。
それに今後、今の彼らだけで彼女を守れる保証もない。
とはいえ、ルッカとの約束もある。
ルッカが戻るまで、エイミーの安全を頼まれているのは、自分たちだ。
アンドレは、ミゲルとグレンの表情をうかがった。
彼らにしても、アンドレと同様で迷っている様子だった。
それならば、本人に決めてもらうしかない。
振り向くと、エイミーはすぐに大きく首を振った。
「いや! わたしはここでルッカを待つ!」
激しい拒否を示した。
アンドレは、承知した。
ゼノーに意思を伝える。
「と、いうことです。今回は、これでお引き取りを……」
「だめだ。その女は連れて行く」
女教皇は、二人の戦士に命じた。
「イフテリオス、クエイル、あの娘を捕らえよ!」
ゼウシス一行と、自由軍の少年たち。
どちらも、男三人に女一人という組み合わせだった。
それぞれの女たちの容貌は、双子のようによく似ていた。
「教皇のご一行が、こんなところまで何のようでしょうか?」
自由軍の代表は、アンドレが務めた。
その横に、ミゲルとグレンが立った。
グレンの傷はまだ癒えていなかったが、彼の存在はアンドレの気持ちを楽にしてくれた。
「王に歯向かう蒼い狼男なるものがここに匿われていると聞いた。引き渡してもらいたい」
教会側で口を開いたのはゼノーだった。
彼らとしても、できれば穏便にことをすすめたい様子だった。
しかし、その横に立つ二人の男は、グレンと同じくらいの背丈があり、逞しかった。
戦士であるのは間違いない。
アンドレは、困った顔をした。
「そんなもの、ここにはいませんよ」
両手を広げて、落胆してみせる。
「見ての通り、つい数日前、ここは六鬼に襲撃されました。自由軍はリーダーを失い、壊滅状態です。多くの仲間を失って、我々も途方に暮れているところです。もし、その蒼い狼男がいたとしても、匿う余裕なんてありませんよ。なんなら、このアジトをくまなく探してくれたっていいです」
ほとんど本音だった。
アンドレとしては、ルッカのことを正直に話してもよかった。
あいつなら、紅獅子城に向かったよ。
本当はそう言ってもよかったが、エイミーのために伏せておいた。
ゼノーは、背後にいる教皇に、小声で相談した。
アンドレは気がついていた。
女教皇の視線はずっと、アンドレたちの後ろで隠れるようにしているエイミーに向けられていた。
ゼノーが振り返り、回答した。
「そなたの言い分を信じよう」
「そうですか、それはなによりです。我々にはもはや、王に歯向かう気力は残っていません。お引き取り願えますか?」
「もちろん。我らはこれで引き返します。ただ一つ、お願いがございます」
「なんですか?」
「その、一番後ろに立っておられるお嬢さん、彼女も連れて帰りたい」
「え?」
アンドレは、不意を突かれたように言葉を失った。
「このような場所で若い女性一人は、あまりに不憫です。まして性欲盛んな若い男たちに囲まれて……」
ゼノーはゆっくりと、聞き取りやすい、抑揚のある声で語った。
まるで、信者に説教をするかのようだ。
「我らと共にくれば、教会が、彼女の安全を保証いたします」
アンドレたちにとっても、一考の余地がある提案だった。
もともとエイミーはそよものだった。
生粋の自由軍ではない。
それに今後、今の彼らだけで彼女を守れる保証もない。
とはいえ、ルッカとの約束もある。
ルッカが戻るまで、エイミーの安全を頼まれているのは、自分たちだ。
アンドレは、ミゲルとグレンの表情をうかがった。
彼らにしても、アンドレと同様で迷っている様子だった。
それならば、本人に決めてもらうしかない。
振り向くと、エイミーはすぐに大きく首を振った。
「いや! わたしはここでルッカを待つ!」
激しい拒否を示した。
アンドレは、承知した。
ゼノーに意思を伝える。
「と、いうことです。今回は、これでお引き取りを……」
「だめだ。その女は連れて行く」
女教皇は、二人の戦士に命じた。
「イフテリオス、クエイル、あの娘を捕らえよ!」
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