不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

布教船の上で

「やけに、今日は暑くないですか?」

 ゼノーが、布教船の先頭でつぶやいた。

「なんだ、あれ?」

 イフテリオスの弟クエイルが、空を指差した。

 ゼウシスもつられて空を見上げた。

「あ、あれは……」

 屈強な戦士であるイフテリオスが慄いていた。

 ゼノーも開いた口が塞がらないといった様子だ。

 太陽が、肥大化していた。

 光源の周りに、無数の紅い点があった。

 それらが太陽を大きく見せている。

「アグンの気がふれたのか……」

 ゼノーは胸の前で、バルティアンの印を作った。

「神よ、御守りたまえ」

「大丈夫だ、心配しなくてよい」

 ゼウシスは、平然と信者たちに伝えた。

「あれがなんであろうと、まもなく新しい神が誕生する。お前たちは、その神によって、一番に救われるだろう」

 三人は、ゼウシスを見た。

「たがら先を急げ。ことを早くなすのだ」

「教皇様……」

 クエイルが控えめに声を上げた。

 控えめだが、その瞳には欲望がギラついていた。

「なんだ?」

「オレたちに、褒美を約束してくれ」

「こら、クエイル、こんなときに何を言い出すんだ!」

 兄のイフテリオスがたしなめたが、クエイルは言い返した。

「兄者だって、本当は、して欲しいんだろう?」

 イフテリオスは、図星だったのか、言葉に詰まる。

「して欲しい? 何をだ?」

「オレたちは、男だ。この紅の月の世界の。満月でなくても、教皇様のような美しい女性とずっといっしょで、ガマンできるわけがない」

「……ああ」

 ゼウシスは理解した。

 ゼノーだけが、三人の問題だとばかりに視線を別な場所に移していた。

「そうだな……よかろう。褒美をやろう。いや、ここまでの感謝として、いまからしようじゃないか」

 クエイルの顔が喜びで弾けた。

「あ、兄者、兄者からいいぞ。一番苦労してきたからな」

「ば、馬鹿を言うな。お、恐れ多い……」

 そうは言ったものの、イフテリオスの顔には期待が浮かんでいた。

 心なしか、すでに下半身はふくらみを帯びている。

「……二人同時でいいぞ……前と後ろだけ決めろ」

 ゼウシスは、淡々と告げた。

 炎天下の船上だった。

 女教皇は、聖衣を脱いで、白い肌を露出した。

 まだ少女を思わす、美しい裸体だった。

 彼女の信者である兄弟も裸になった。

 すでに二本の男根は、弧を描いて反り上がっていた。

 ゼウシスは二人を並ばせて立たせた。

 そのら前に正座で座り、二本の側面を交互に、公平に、丁寧に舐め始めた。

 ぴちゃぴちゃと、水滴が遊ぶ音が奏でられる。

 両方の指と手のひらが、同じリズムで刺激していく。

 兄弟は兄弟らしく、似た表情で悦に浸っていた。

「さて、そろそろわたしのことも気持ちよくしてもらおう」

 ゼウシスは、日陰を選んで、四つん這いになった。

 二人は野獣のように、ゼウシスを前後から攻めた。

 とても教皇と信者とは思えぬ、淫らで背徳的な行為が続いた。

 その間、ゼノーは、ずっと太陽を見ていた。

 熱量は高まり、紅い斑点は徐々に増えていた。

 それは、どこか男たちの高まりに似ていた。

 膨張して、弾ける寸前。

 太陽神アグンは、もうすぐ絶頂を迎えようとしていた。

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