不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
新教皇と紅獅子王①
最初に広間に入ってきたのは、痩せた老人だった。
着ている服もボロボロで、顔色も病人のように青白い。
足取りもやけに重かった。
「どうしたゼノー? 新教皇とは、どういうことだ?」
紅獅子王は、王座に腰をすえた。
高い位置から、ゼノー老人を見下ろす。
「紅獅子王陛下、お久しぶりでございます。わたくしはこのたび、教皇の座を、若いものに譲ることにいたしました」
「そうか。長き間、ご苦労であった」
紅獅子王は、興味なさげな声で答えた。
早く帰って欲しいに違いない。
アナの裸で、自慰の続きがしたいのだ。
「今日は、このたび指名制によって、わたくしが選びました、新教皇様をお連れしました」
そう言うと、ゼノーは扉を向いて、礼をした。
黒いローブをまとった少女が入ってくる。
着ているものは貧相だが、本人には気品があった。
蒼い目、黒い髪。
肌は、透き通るように白い。
天井の身を潜めながら、イシドラは目を見開いて驚いた。
ゼウシス……!
そこに現れたのは、蒼い月の世界でも新教皇であった少女だ。
彼女は、イシドラやルッカと共に黒い雨に打たれて、この世界にやってきた。
まだ数日しか経っていない。
それなのに、もうこの世界で教皇に上り詰めたのか。
「これは……新教皇がこのような可憐な少女とは」
王も、さすがに驚いた様子だった。
ゼウシスは、目を細めて王を見返した。
「これがこの国の国王か。デカいな。化け物ではないか」
前に進み出ると、ゼウシスは開口一番そう言った。
大広間が、緊張感に包まれた。
あの高圧的な物言い。
やはり本物のゼウシスだ。
イシドラは、息を呑んで状況を見守る。
「あなた、そのような口は慎みなさい!」
籠の中から、アナがたしなめた。
「ほう」
ゼウシスは、そのアナを見上げて、面白そうに微笑む。
「化け物の王様は、女を裸にして、ペットのように飼って遊ぶのか。頭の中もずいぶんとイカれているようだ」
「……余を、侮辱するのか?」
「我は、ゼウシスだ。ゼウシス=アキレウス。前教皇ゼノーより指名を受けて、新教皇となった。王よ、神の名の下にお前に命ずる。籠の女を解き放つがよい」
誰もが絶句した。
ゼウシスの後ろには、二人の男がいた。
ゼウシスの護衛だろうか。
それなりの戦士に見えた。
そのうちの一人に、イシドラは既視感を覚えた。
あれは……もしや、この世界のイフテリオス?
兵士たちが動くと同時に、その二人も守るようにゼウシスに背後につく。
「さあ、王よ、我の指示に従うがよい。そうすれば、そなたには神の御加護は約束されるだろう」
ゼウシスは、力強い言葉で告げた。
着ている服もボロボロで、顔色も病人のように青白い。
足取りもやけに重かった。
「どうしたゼノー? 新教皇とは、どういうことだ?」
紅獅子王は、王座に腰をすえた。
高い位置から、ゼノー老人を見下ろす。
「紅獅子王陛下、お久しぶりでございます。わたくしはこのたび、教皇の座を、若いものに譲ることにいたしました」
「そうか。長き間、ご苦労であった」
紅獅子王は、興味なさげな声で答えた。
早く帰って欲しいに違いない。
アナの裸で、自慰の続きがしたいのだ。
「今日は、このたび指名制によって、わたくしが選びました、新教皇様をお連れしました」
そう言うと、ゼノーは扉を向いて、礼をした。
黒いローブをまとった少女が入ってくる。
着ているものは貧相だが、本人には気品があった。
蒼い目、黒い髪。
肌は、透き通るように白い。
天井の身を潜めながら、イシドラは目を見開いて驚いた。
ゼウシス……!
そこに現れたのは、蒼い月の世界でも新教皇であった少女だ。
彼女は、イシドラやルッカと共に黒い雨に打たれて、この世界にやってきた。
まだ数日しか経っていない。
それなのに、もうこの世界で教皇に上り詰めたのか。
「これは……新教皇がこのような可憐な少女とは」
王も、さすがに驚いた様子だった。
ゼウシスは、目を細めて王を見返した。
「これがこの国の国王か。デカいな。化け物ではないか」
前に進み出ると、ゼウシスは開口一番そう言った。
大広間が、緊張感に包まれた。
あの高圧的な物言い。
やはり本物のゼウシスだ。
イシドラは、息を呑んで状況を見守る。
「あなた、そのような口は慎みなさい!」
籠の中から、アナがたしなめた。
「ほう」
ゼウシスは、そのアナを見上げて、面白そうに微笑む。
「化け物の王様は、女を裸にして、ペットのように飼って遊ぶのか。頭の中もずいぶんとイカれているようだ」
「……余を、侮辱するのか?」
「我は、ゼウシスだ。ゼウシス=アキレウス。前教皇ゼノーより指名を受けて、新教皇となった。王よ、神の名の下にお前に命ずる。籠の女を解き放つがよい」
誰もが絶句した。
ゼウシスの後ろには、二人の男がいた。
ゼウシスの護衛だろうか。
それなりの戦士に見えた。
そのうちの一人に、イシドラは既視感を覚えた。
あれは……もしや、この世界のイフテリオス?
兵士たちが動くと同時に、その二人も守るようにゼウシスに背後につく。
「さあ、王よ、我の指示に従うがよい。そうすれば、そなたには神の御加護は約束されるだろう」
ゼウシスは、力強い言葉で告げた。
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