不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

自由軍の終わり

 目覚めると、ルッカの体の上には、まだアンドレが乗っていた。

「どいてくれ……」

 ルッカは言ったが、アンドレは気を失ったままだ。

 寝息が聞こえたので、生命は無事のようだ。

 一撃しか食らっていないのだ。

 そんなにダメージはなかったはずだ。

 そう思ってアンドレを見る。

 彼の寝顔には緊張感がなく、どこか安堵が感じられた。

 とはいえ、アンドレにしても、沢山の仲間や頼りにしていたリーダーを失ったのだ。

 それに最後、中身の体でクローチェに立ち向かっていくのは、よほどの勇気が必要だっただろう。

 ルッカはアンドレを、そのまま寝かしておくことにした。

「起きたようね」

 ユウとエイミー、それにミゲルがいた。

 三人の前には、死神のような顔つきの男が、ロープで全身を縛られている。

 見覚えがあった。

 アナの屋敷で会った。

 獣化する前のクローチェだった。

「どうやって……?」

 あれから、彼らは、クローチェを捕らえることに成功したのだ。

「アナの屋敷でのことを聞いたのよ。エイミーの声には不思議な力がある。この声で、前にもこいつを止めたんでしょ? もう一度やってもらったの」

 ユウは続けた。

「リーダーは、獣化の薬を作っていただけでなく、それを解く薬も開発していたから、それを、こいつの口に投げ入れたってわけよ」

 ユウは、耳栓を取り出して見せた。

 あのとき、ユウだけはエイミーの叫び声を聞かなくてすむようにしていたわけだ。

 ルッカは、ユウの知略に感服した。

 これには、蒼の月の世界のミゲルも負けるかもしれない。

 そう思って、この世界のミゲル見た。

 彼は、何重にもクローチェの体を縛っていたが、それでもまだ縛り足りないようで、不安な顔をしている。

「……うまくいって良かった……エイミーや、アンドレのおかげよ」

 ユウは、自分のことより、先に行動をしてくれた二人を称えた。

「お前たち、これから、どうするんだ?」

 そう尋ねたのは、クローチェだった。

 彼の獣化は完全に解けていた。

 ダメージが効いているのか、もともとそんな肌の色なのか、死神のように青白い顔をしている。

 ユウもミゲルも、何も答えられなかった。

 彼ら自由軍は、多数の仲間と、リーダーであるイシドラを失った。

 存続は難しいだろう。

「ここで、オレを殺したところで、六鬼の別の誰かが、ふたたびやってくるだけだ」

 クローチェは、ニヤリと笑った。

「たしかに……そうね」

 ユウは、うつむいた。

「自由軍は、これで終わり。この国で紅獅子王に対抗するものは、誰もいなくなるわ」

「そうだ。晴れて、王は妃を迎えて、新たな時代になる」

「新たな時代……」

「だめだ」

 ルッカの声は強かった。

「アナは……アナは、紅獅子王の妃になんかならない!……オレが、オレが、必ず救いだす!」

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