不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

イフテリオス兄弟

「そなたが、イフテリオスか」

「はい」

「歳はいくつだ?」

「三十になります」
 
  蒼の世界のイフテリオスと、顔立ちも体型もよく似ていたが、だいぶ老けて見えた。

 ゼウシスは、ゼノーを伴って、イフテリオスに会いに行った。

 貧民街の小さな家に、彼は弟と住んでいた。

 若い女性の新教皇に、イフテリオスは戸惑いを見せた。

「そなたに、聖戦士の職についてもらいたい」

 ゼウシスは、単刀直入に言った。

「ありがいおことばです。しかし……わたしには、難病の弟がいるのです」

 ゼウシスは、勝手に彼らの家に入っていた。

 奥の部屋に、イフテリオスの弟はいた。

 彼は、肉の塊だった。

 丸い。
 
 人の皮で作った大きな球体だった。

 手足が、枯れた枝のようについているが、それで体を支えられていない。

 顔も、球体に埋もれていた。

 探して確認しないと、目や口や鼻がどこにあるかわからない。

「女!」

 弟は、よだれを垂らしながら言った。

「クエイル、やめなさい。こちらは新しい教皇様だ」

 イフテリオスは恐縮して、弟のクエイルをたしなめた。

 十年も前のことらしい。

 クエイルは、紅の月を見て、獣化した。

 暴れた弟を、イフテリオスは、なんとか押さえ込んだが、完全に元には戻らなくなってしまった。

 中途半端に獣性を残したままになってしまったのだ。

 閉じ込めておかないと、子供や女を襲いかねない。

「クエイルは、かつて私など及ばない戦士でした。しかし、もはや人ではなくなってしまった……この手で殺すことも考えたのですが……やはり、実の弟をそうすることは、できませんでした……」

「治すことはできないのか?」

「当時、まだ町医者をしてたマディン様に診てもらいましたが、逆に症状が悪化するばかりで……いま思えば、逆に弟の体で獣化の研究をしていただけかもしれません」

「女……女……」

 クエイルは、情熱的な眼差しをゼウシスに注いでいた。

 長いあいだ、ここに閉じ込められ、兄以外の人間と会わなかったのだろう。

 まして、女性ともなれば、彼の興奮は高まるばかりだった。

「おまえの弟と二人にしてくれ」

 ゼウシスは、イフテリオスに言った。

「しかし、教皇様、危険です。弟は、何をしでかすか、かわりません!」

「心配ない。わたしには、ノーラの加護がある」

 ゼウシスは、押し通した。

「どうなっても知りませんよ……」

 しぶしぶそう言って、イフテリオスは部屋から出て行った。

「さて、クエイル」

 ゼウシスは、服を脱いで、白い肌を出した。

 まだ子供らしさを残した乳房に、小さなピンクのつぼみが載っている。

「おお……」

 クエイルは、顔を上気させて、口からよだれをたらした。

 球体の一部から、ふいに棒状の肉塊が飛び出た。

「それが、おまえの性器?……見た目より、だいぶ普通なのね」

 ゼウシスは、クエイルに近寄って、その棒を握った。

 クエイルの動きは完全に止まる。

 ゼウシスは、一定のリズムで、棒をしごいた。

 しばらくすると、大量の白い粘液がそこから発射された。

 何度かそれを繰り返すと、球体は徐々にしぼんでいった。

「どうだクエイル、少しは獣性が鎮まったか?」

「……はい、教皇様。」

 体は、まだ本来のものではなかったが、少なくとも、手足と顔は判別できた。

 何より、言葉が明瞭に話せた。

「わたしは、そなたとそなたの兄を、我が教会の聖戦士に任命したい。受けるか?」

「……喜んで。全力で、あなたと教会にお仕えいたします」

 クエイルの瞳には、理性が宿っていた。

 こうしてゼウシスは、二名の聖戦士を、手に入れた。

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