不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

行き先

 しばらくすると、エイミーも目を覚ました。

「体は、大丈夫ですか?」

「まだあちこち痛いけど……なんとか」

 ルッカは、笑う努力をしたが、虚しく目尻が下がるだけだった。

「……アナは、どうなった?」

 それが気がかりだった。

 クローチェの前に立ちはだかってから、その後を覚えていない。

「アナは、六鬼によって、紅獅子王の城に連れていかれました」

「殺されてはいない……?」

「おそらく。紅獅子王は、アナを妃にしようとしていました。だから、そう簡単には殺さないと思います」

「助けに行かないと……」

 ルッカは唇を噛み締めた。

「もちろん、そうしてほしい……けど」

 それは簡単なことではない。

「王と六鬼は、満月でなくとも、術を使うことで獣化できます。ただのりこんでも死ににいくようなものです」

 たしかに、昨晩の二の舞になるだけだ。

 いや、ルッカは紅の月の力を借りないと獣化できないし、六鬼にはまだ仲間がいる。

 死ににいくようなものだった。

 計画を立てて、慎重に行動しないと。

 ミゲル……。

 ルッカは、友人たちの顔を思い出した。

 彼らは蒼の月の世界で、今ごろどうしているだろう。

「いや待てよ」

 ルッカは思い至った。

 この世界にも、アナ同様ミゲルや仲間たちはいるはずだ。

 彼らの協力を得ることはできないだろうか?

「ルッカ?」

 考え込むルッカに、エイミーが声をかけた。

「いや、少し考えがあるんだ……でも、その前に、彼を埋めてやろう」

「はい……そうですね」

 二人は森の一角に穴を掘って、虎の死体を埋めた。

 そのあと、ルッカは森の枝で罠を作って、野鳥を捕まえた。

「器用なものですね」

「えへへ。こういうのなら得意なんだけどね」

 小川で水をくみ、野鳥を焼いて、エイミーと分けて食べた。

 腹ごしらえがすむと、二つの竹槍をつくり、エイミーにも渡した。

 二人は、森を北へと進んだ。

「もし、オレの友人たちがいてくれたら、力になってくれると思う」

「この国に、知り合いがいたんですか?」

「いや、まだ知り合ってはいないんだけど……」

 もしかしたら、この世界のぼくらにも会うかもしれないよ。

 魔のルッカがいま目覚めたように、声を出した。

「そうだな……それは問題か?」

「わからないけど、怖いよ」

「なんでだよ?」

「三つの世界の自分が同じ場所で出会うんだ。何が起こるか……きみとぼくのようにさらに融合するのか……それとも」

「それとも?」

「消滅するか……」

「どうしたんですか、さっきから?」

 急にはじまったルッカのひとり言に、エイミーは目をパチクリさせた。

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