不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

丘の上で

 森を抜けた。

 ルッカは、馬の速度を上げる。

 蒼い満月は、明るく夜を照らしていた。

 両親の墓の前まで一気に駆け上った。

 視界には、ウル湖が広がっている。

 ルッカとアナは、墓にたどり着くと、馬から降りた。
 
 おさげ髪の少女が待っていた。

「ユウ、ここで待っていてくれたんだ」

「その子を、一人で待たすのもあんまり、って思ってね」

 そうだった。

 もともとアナには、この墓で待ってもらうように頼んでいたのだった。

「いろいろあってさ」

「ルッカみたいなおバカさんにかかれば、せっかくのミゲルの計画も台無しね」

「そう言うなよ」

 ルッカは苦笑いをした。

「あの……そちらは?」

「ああ、幼馴染みのユウだよ。舟を運転してくれる」

「そうなんですね。女性なのに、舟を動かせるなんて、すごい」

 言ってから、アナは自分がまだ自己紹介をしていないことに気がついた。

「私はアナ、アナ=クレイブソルトです。ルッカの……」

 照れくさそうに、アナはルッカの顔を見た。

「オレの嫁さんになる。オレたちは、結婚するよ、ユウ」

 ユウは、ショックを受けたように、身を強張らせた。

「あ、あんたのことは知ってるよ。聖歌隊の子だろ。本当にこの男でいいのかい? とんでもないバカだよ」

 呆れたように振舞っているが、表情は曇っている。

「はい。ルッカと結婚しようと思います」

 アナは、ユウの様子が少しおかしいと感じたようだったが、はっきりと答えた。

「なんだ浮かない顔をして? 舟の運転が不安なのか?」

「だ、大丈夫に決まってんでしょ。うちの父さんの船だよ。ずっと見てきたんだから、心配いらないよ」

「隣の国まで、どのくらいかかる?」

「二日もあれば、行けると思うよ。心配いらないさ、屋根もあるし、寝床もある。ちょっと揺れるけどね」

「そうか、ありがとうユウ」

 急に、ルッカが真面目な顔をしたので、ユウは押し黙った。

「最後に、両親の墓に報告をするよ」

 ルッカは、アナを見つめた。

 アナも、ルッカを見つめ返す。

 二人が、結ばれることを、ルッカの亡くなった両親に報告すると言うのだ。

「あ、あんたたちが寝てる間も、あたいはずっと舵を取らないといけないんだ。今のうちに、舟で仮眠させてもらうよ」

 早口でそう言うと、ユウは丘を湖の方向へ降りていった。

 アナはその背中をじっと見つめていた。

「どうした、アナ?」

「あの娘、もしかしてあなたのことを……」

「ん?」

「……なんでもないわ」

 二人は、ルッカの父母の墓の前に立った。

 ルッカは、アナを両親に紹介し、アナは墓に向かって深々と頭を垂れる。

 二人は、ルッカの両親に結ばれることを伝え、永遠の愛を誓った。

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