不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
決行前夜③
「アナ……」
「ルッカ」
私は、ルッカの温もりを肌で感じていた。
ルッカの手が、優しく髪を撫でる。
「細いのに、筋肉質なのね」
「カイゼル叔父さんの手伝いで、ずいぶんと鍛えられた」
私は、ルッカの腹筋の線をなぞる。
ルッカは、決して自分から私の体に触れようとはしなかった。
私を大事に思ってくれている。
「いいのよ、触って」
私がそう告げると、いつも顔を赤くした。
彼は、私の反応を見ながら、嫌じゃないか、痛くないか、と聞いてくれた。
野暮ったいと思わないでもなかったが、その優しさは、ルッカの長所の一つだった。
長所といえば、私を驚かせたのは、その指先だ。
「本当に……初めてなの?」
ルッカの細長い指は、繊細だった。
「うん……アナが初めてだよ」
不思議な感触とリズムに、自分自身が楽器になった気分だった。
ルッカに触れられると、たまらず声が溢れた。
とろける快感に、下半身が泉になったようだ。
ルッカとの触れ合いは、私に不幸を忘れさせた。
「いよいよ、明日だ」
行為が終わった後、ベッドに横たわりながら、ルッカは、天井を見上げてつぶやいた。
「明日、オレは、大聖堂から蒼の神玉を盗む」
私は、彼に寄り添いながら、静かにうなずいた。
「一つ、お願いがあるんだ」
「なに?」
「初めて出会ったウル湖のほとり、覚えてるかい?」
「うん」
ルッカのセリフで、出会いの場面がよみがえる。
「あそこから少し登ると、オレの両親の墓がある。そこで、明日の夜、オレを待っていてくれないか」
ルッカは、私を見つめた。
「盗みを働けば、罪人だ。追われる身になる。もう、この国にはいられない。遠くへ逃げなきゃならない」
私は、見つめ返した。
「一緒に来てくれないか?」
もう一度、そう言ったルッカに、私はもちろん、とうなずいた。
「成功しそう?」
「ああ。ミゲルは頭がいいんだ。オレの友達にはもったいない。あいつの考えた作戦だから、うまくいくさ」
そうは言っているが、ルッカの表情には、かすかな緊張が浮かんでいた。
「私に、出来ることはない?」
「今言ったろ? 丘にある墓の前で待っていてくれ。そして、無事に逃げることができたら」
私は、ルッカの唇を自分の唇でふさいだ。
舌を入れた。
愛情たっぷりに舐め回す。
私は、唇を離してから、ルッカが我に帰るより早く答えた。
「無事に逃げることができたら、あなたと結婚する」
ルッカは、一瞬驚いた顔をした。
そのあと、満面の笑みを浮かべた。
私は微笑みを返した。
しかし、内心、別のことを考えていた。
あの男が、きっとルッカの邪魔をする。
なんとかしなくては、ルッカの命が危ない。
私がなんとかしなくては。
私が。
「ルッカ」
私は、ルッカの温もりを肌で感じていた。
ルッカの手が、優しく髪を撫でる。
「細いのに、筋肉質なのね」
「カイゼル叔父さんの手伝いで、ずいぶんと鍛えられた」
私は、ルッカの腹筋の線をなぞる。
ルッカは、決して自分から私の体に触れようとはしなかった。
私を大事に思ってくれている。
「いいのよ、触って」
私がそう告げると、いつも顔を赤くした。
彼は、私の反応を見ながら、嫌じゃないか、痛くないか、と聞いてくれた。
野暮ったいと思わないでもなかったが、その優しさは、ルッカの長所の一つだった。
長所といえば、私を驚かせたのは、その指先だ。
「本当に……初めてなの?」
ルッカの細長い指は、繊細だった。
「うん……アナが初めてだよ」
不思議な感触とリズムに、自分自身が楽器になった気分だった。
ルッカに触れられると、たまらず声が溢れた。
とろける快感に、下半身が泉になったようだ。
ルッカとの触れ合いは、私に不幸を忘れさせた。
「いよいよ、明日だ」
行為が終わった後、ベッドに横たわりながら、ルッカは、天井を見上げてつぶやいた。
「明日、オレは、大聖堂から蒼の神玉を盗む」
私は、彼に寄り添いながら、静かにうなずいた。
「一つ、お願いがあるんだ」
「なに?」
「初めて出会ったウル湖のほとり、覚えてるかい?」
「うん」
ルッカのセリフで、出会いの場面がよみがえる。
「あそこから少し登ると、オレの両親の墓がある。そこで、明日の夜、オレを待っていてくれないか」
ルッカは、私を見つめた。
「盗みを働けば、罪人だ。追われる身になる。もう、この国にはいられない。遠くへ逃げなきゃならない」
私は、見つめ返した。
「一緒に来てくれないか?」
もう一度、そう言ったルッカに、私はもちろん、とうなずいた。
「成功しそう?」
「ああ。ミゲルは頭がいいんだ。オレの友達にはもったいない。あいつの考えた作戦だから、うまくいくさ」
そうは言っているが、ルッカの表情には、かすかな緊張が浮かんでいた。
「私に、出来ることはない?」
「今言ったろ? 丘にある墓の前で待っていてくれ。そして、無事に逃げることができたら」
私は、ルッカの唇を自分の唇でふさいだ。
舌を入れた。
愛情たっぷりに舐め回す。
私は、唇を離してから、ルッカが我に帰るより早く答えた。
「無事に逃げることができたら、あなたと結婚する」
ルッカは、一瞬驚いた顔をした。
そのあと、満面の笑みを浮かべた。
私は微笑みを返した。
しかし、内心、別のことを考えていた。
あの男が、きっとルッカの邪魔をする。
なんとかしなくては、ルッカの命が危ない。
私がなんとかしなくては。
私が。
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