不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

二人の夜

「ルッカ」

 アナに抱きしめられて、ルッカは動揺した。

 本来なら、窓を開けてもらい、中に入れただけで有頂天になるところだ。

 彼女はそれ以上の行為をしてきた。

 唇で、唇を塞がれた。

 なぜだか、ユウの怒っている顔が思い浮かんだ。

「ルッカ?」

 まじかで、アナに見つめられる。

 蒼い瞳は、潤んでいた。

「何を考えているの?  私と、こういうこと、したくない?」

 首を振って、脳裏に浮かんだユウの顔を消し去る。

「アナ……大胆すぎるよ、オレ、どうしていいかわかんないよ」

「私と結婚したいんでしょ? だったら、こういうこともしないと」

 アナの指先が、ルッカの服の中に入ってきた。

 彼女の指と唇が、小動物のように、ルッカの肌をくすぐる。

「可愛い」

 さらに動揺しているルッカを見て、アナは、嬉しそうに微笑んだ。

「こっちへ」

 アナは、ルッカをベッドの上に押し倒す。

 石鹸の匂いがした。

 自分のカビ臭いベッドとは違う。

 ここはどこだろう? 

 夢の中だろうか?

 アナが、ルッカに馬乗りなって、服を脱がしている。

「あ……!」

 ズボンと下着も脱がされた。

 彼女の髪が、視界の端で上下する。

 とろけるような快感に、身悶える。

「気持ちいい……?」

 アナの指先と舌が、今度は大きな動作でルッカの肉体を這っていった。

「ルッカ」

 アナは、自分も服を脱いだ。

 白い肌に、ピンク色の小さな乳首が目の前で揺れた。

 ルッカが目を覆おうとすると、

「あら、初めてじゃないくせ! 湖であったときに、ちゃんと見てたでしょ?」

 責めるように笑ってささやいた。

 アナは、ルッカの手を取って、自分の幼い胸に誘った。

「私のことも」

 アナの唇が、耳たぶを甘く噛んだ。

 私のことも、気持ち良くして……。

 先ほどよりも気持ちを込めて、吐息のような小声で、アナはささいた。

 ルッカの理性は弾けた。

 ルッカは自分の興奮した一部を、アナの濡れた一部に擦り付けた。

 最初はうまくいかなかったが、ある瞬間に、それはするりと入り込んだ。

 犬のように激しく、二人は呼吸に合わせて、動いた。

「アナ……アナ……!」

 彼女の名を、絶えず呼んだ。

「愛してる……」

 ルッカは心を込めて、体と心が別々にならないように、何度も何度も口にした。

 数時間後、疲れ果てた二人は、抱き合ったまま、ベッドで横になっていた。

 先に目を覚ましたアナは、立ち上がり、カーテンを開けた。

 蒼い月が、中天に差しかかろうとしている。

 もうすぐ満月だ。

 大聖堂で、祝祭が行われる。

 そのときまで、ハーメルンは神玉を護る役目を担うという。

 教会の秘宝。

 蒼の神玉と呼ばれ、神の聖遺物だ。

 もしも、それを彼が守れなかったら、その栄光は失墜するだろう。

「アナ」

 振り返ると、ルッカが起きて来た。

 隣に立ち、共に月を見上げる。

「ルッカ。あなたは私のためなら何でもしてくれると言ったわ」

「あ、ああ。言ったとも」

「その言葉、信じていい?」

「もちろんさ」

「じゃあ、頼みがある」

「なんだい?」

 アナは、瞳を空から下界に落とした。

 蒼い視線が、刃物のように光る。

 その方向には、大聖堂があった。

「ルッカ、あなたに、大聖堂にある秘宝、蒼の神玉を盗んで欲しい」

 



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