不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
絶望の窓②
私は呆れた。
ルッカの言葉は、あまりに見当違いだ。
なぜ今、結婚の話になるのか。
腹が立ってきたので、勢いよくカーテンを閉めた。
「帰って」
「アナ!」
「もう、来ないで」
「アナ!」
返事はしない。
しつこい。
私が考えるべきは、結婚とか甘い話ではない。
私が考えるべきは。
そう、復讐。
忌まわしい記憶を消して前に進むには、復讐しかない。
どうしたら、父の仇を取れるのか。
どうしたら、あの男を懲らしめることが出来るのか。
しかし、思ったように考えはまとまらなかった。
窓を背にして、私は沈黙した。
ルッカはまだいるだろうか?
無視するつもりだったが、その存在が気になっていた。
しばらく私は、何も結論を出せずに、そのまま立ち尽くしていた。
「今日のところはこれで帰る。けど、また来るから」
突然、ルッカの声が聞こえた。
だいぶ時間が経っていたから、まだいるとは思わなかった。
私は驚いて、カーテンの隙間から外を覗く。
いつのまにか朝日が昇っており、眩しさに目を細める。
ルッカの姿は、すでになかった。
私は、何だか寂しさを感じた。
ルッカは優しい人だ。
窓辺越しに話すわずかな間だけだったが、彼との時間は、私に嫌なことを忘れさせた。
本当は、もっとルッカと話しをしたい。
でも、それは不幸を生むことになるだろう。
きっと、彼のためにも良くない。
ルッカは、私のためなら何でもしてくれる。
だったら……。
私は、一つの考えにたどり着く。
しかし……。
「アナ」
言葉通り、次の夜もルッカは現れた。
私は部屋にいたが、カーテンを開けなかった。
私は、ルッカの呼びかけを無視し続けた。
それからしばらくして、彼の声は聞こえなくなった。
あきらめて、ついに帰って行ったんだろうか?
涙が出てきた。
毎晩、やって来てくれた、彼を想った。
正直なところ、恋愛感情は持っていなかった。
でも、ルッカは辛いときに励ましてくれた。
こんな私に、結婚しようと言ってくれた。
「ありがとう」
小声でつぶやいた。
すると、窓の外から弦楽器の音色が聞こえてきた。
リュートの音。
優しい、透き通った音。
私は、カーテンを開いた。
屋根の上で、ルッカは弦を奏でていた。
やめて! お母様が目を覚ましてしまうわ。
こんな真夜中に、とても迷惑!
そんなことを言おうと思って、窓を上げた。
心地よい音楽が、耳に入ってくる。
思いとは裏腹に、私の唇からは、唄が溢れでた。
「不死鳥の恋よ、安らかに眠れ」
ルッカは、二人の出会いの曲を弾いていた。
ルッカが弾いて、私が唄う。
心地よい共鳴。
この世界で起こる、全ての不幸を憂いを、包み込む。
彼の演奏に身を任せ、唄うことにより、私自身の恐怖も取り除かれていく。
「アナ」
曲が終わると、ルッカは私に笑いかけた。
母に許してもらった子供のような、ほっとした笑顔だ。
私も微笑み返した。
「来て」
私は、ルッカを部屋に招き入れた。
窓を閉め、カーテンも閉める。
そして、彼を抱きしめた。
仕方ない。
なるようになるしかない。
ルッカの言葉は、あまりに見当違いだ。
なぜ今、結婚の話になるのか。
腹が立ってきたので、勢いよくカーテンを閉めた。
「帰って」
「アナ!」
「もう、来ないで」
「アナ!」
返事はしない。
しつこい。
私が考えるべきは、結婚とか甘い話ではない。
私が考えるべきは。
そう、復讐。
忌まわしい記憶を消して前に進むには、復讐しかない。
どうしたら、父の仇を取れるのか。
どうしたら、あの男を懲らしめることが出来るのか。
しかし、思ったように考えはまとまらなかった。
窓を背にして、私は沈黙した。
ルッカはまだいるだろうか?
無視するつもりだったが、その存在が気になっていた。
しばらく私は、何も結論を出せずに、そのまま立ち尽くしていた。
「今日のところはこれで帰る。けど、また来るから」
突然、ルッカの声が聞こえた。
だいぶ時間が経っていたから、まだいるとは思わなかった。
私は驚いて、カーテンの隙間から外を覗く。
いつのまにか朝日が昇っており、眩しさに目を細める。
ルッカの姿は、すでになかった。
私は、何だか寂しさを感じた。
ルッカは優しい人だ。
窓辺越しに話すわずかな間だけだったが、彼との時間は、私に嫌なことを忘れさせた。
本当は、もっとルッカと話しをしたい。
でも、それは不幸を生むことになるだろう。
きっと、彼のためにも良くない。
ルッカは、私のためなら何でもしてくれる。
だったら……。
私は、一つの考えにたどり着く。
しかし……。
「アナ」
言葉通り、次の夜もルッカは現れた。
私は部屋にいたが、カーテンを開けなかった。
私は、ルッカの呼びかけを無視し続けた。
それからしばらくして、彼の声は聞こえなくなった。
あきらめて、ついに帰って行ったんだろうか?
涙が出てきた。
毎晩、やって来てくれた、彼を想った。
正直なところ、恋愛感情は持っていなかった。
でも、ルッカは辛いときに励ましてくれた。
こんな私に、結婚しようと言ってくれた。
「ありがとう」
小声でつぶやいた。
すると、窓の外から弦楽器の音色が聞こえてきた。
リュートの音。
優しい、透き通った音。
私は、カーテンを開いた。
屋根の上で、ルッカは弦を奏でていた。
やめて! お母様が目を覚ましてしまうわ。
こんな真夜中に、とても迷惑!
そんなことを言おうと思って、窓を上げた。
心地よい音楽が、耳に入ってくる。
思いとは裏腹に、私の唇からは、唄が溢れでた。
「不死鳥の恋よ、安らかに眠れ」
ルッカは、二人の出会いの曲を弾いていた。
ルッカが弾いて、私が唄う。
心地よい共鳴。
この世界で起こる、全ての不幸を憂いを、包み込む。
彼の演奏に身を任せ、唄うことにより、私自身の恐怖も取り除かれていく。
「アナ」
曲が終わると、ルッカは私に笑いかけた。
母に許してもらった子供のような、ほっとした笑顔だ。
私も微笑み返した。
「来て」
私は、ルッカを部屋に招き入れた。
窓を閉め、カーテンも閉める。
そして、彼を抱きしめた。
仕方ない。
なるようになるしかない。
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