不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
ルッカとアナ①
「来たよ、アナ」
小豆色のカーテンが開いた。
「窓を開けてくれない?」
「……ごめんなさい。部屋には入れられないわ」
「ここで、大丈夫だよ」
「寒くない?」
「もうすぐ春が来る。それに、君と話せるだけで、心があったまるよ」
カーテン越しに、二人は会話をした。
最初は、お互いの家族について話した。
ルッカは両親の死を話し、叔父のカイゼルへの感謝や不満を語った。
それから、友人たちのことも。
アナは、それらを興味深げに聞いていた。
アナも、自分の両親のことを話し、学友や聖歌隊のことを説明した。
一日のうちに、面会できるのは、ほんのわずかな時間だった。
アナが眠る前には、必ず、両親のどちらかが部屋を訪れた。
それまでに、ルッカは退散しなくてはならない。
それでも話しをするうちに、二人の距離が少しずつ縮まっていくのを、ルッカは感じていた。
とはいえ、二人の間に、簡単に超えられない壁があるのもたしかだった。
育ちとか身分とかではい。
この恋は、ルッカからの一方通行だ。
アナは、明らかに一線を引いていた。
そのことも、はっきりと感じていた。
この窓は永遠に開きそうにない。
「ねえ、ルッカ。あなたは死ぬほど辛いことが起きたら、どうする?」
視線を月に向けて、アナが尋ねた。
アナはときどき難しい質問を投げかけた。
それはきっと、アナ自身の悩みに関係があるのだろう。
「うーん、死なないように、努力する」
正解かどうかはわからないが、ルッカは前向きなことを口にした。
落ち込んでいるのなら、励ましたい。
「つまり、どういうこと?」
アナは、別に何かを期待していたわけではないのだろうが、困ったような顔をした。
「信頼できる誰かに相談するよ。そうだなあ、オレの場合はアンドレやミゲル、それにグレン。まあ、ユウもかな。あいつらはオレの悩みを、自分のことのように真剣に考えてくれる」
「そっか」
アナはうらやましそうに目を細めた。
「いいわね、頼りになる素敵な友人がいて。私には、そんな学友はいないな。みんな、クレイブソルトのお嬢様として、親切だけど、本当の私には興味がない」
「そんなことないよ!」
オレがいる、と言いかけて、やめた。
まだ、それほどアナに信頼されている自信が、ルッカにはなかった。
「君のお父さんや、お母さんなら、きっと相談を聞いてくれるよ」
アナから聞く限り、彼女の両親は娘想いの素晴らしい人たちだ。
アナは、言われて喜んだ。
「そうね。私には父と母がいる。二人は信頼できる」
アナは、真面目にうなずいた。
「わかったわ。辛いことがあったら、ルッカの言う通り、両親に相談する」
「それと……」
ルッカは、やはり我慢出来くなった。
「オレも、オレも君のためだったら、なんだってするから、死ぬほど辛いことがあるなら、オレにも話をしてくれ!」
声が大きかったかもしれない。
どうしかしましたか、と遠くで声がした。
「誰かくるわ」
アナは慌ててカーテンを、閉ざした。
完全に閉じる前に、ルッカに微笑んだ。
「ありがとう、ルッカ。今夜は、楽しかった」
小豆色のカーテンが開いた。
「窓を開けてくれない?」
「……ごめんなさい。部屋には入れられないわ」
「ここで、大丈夫だよ」
「寒くない?」
「もうすぐ春が来る。それに、君と話せるだけで、心があったまるよ」
カーテン越しに、二人は会話をした。
最初は、お互いの家族について話した。
ルッカは両親の死を話し、叔父のカイゼルへの感謝や不満を語った。
それから、友人たちのことも。
アナは、それらを興味深げに聞いていた。
アナも、自分の両親のことを話し、学友や聖歌隊のことを説明した。
一日のうちに、面会できるのは、ほんのわずかな時間だった。
アナが眠る前には、必ず、両親のどちらかが部屋を訪れた。
それまでに、ルッカは退散しなくてはならない。
それでも話しをするうちに、二人の距離が少しずつ縮まっていくのを、ルッカは感じていた。
とはいえ、二人の間に、簡単に超えられない壁があるのもたしかだった。
育ちとか身分とかではい。
この恋は、ルッカからの一方通行だ。
アナは、明らかに一線を引いていた。
そのことも、はっきりと感じていた。
この窓は永遠に開きそうにない。
「ねえ、ルッカ。あなたは死ぬほど辛いことが起きたら、どうする?」
視線を月に向けて、アナが尋ねた。
アナはときどき難しい質問を投げかけた。
それはきっと、アナ自身の悩みに関係があるのだろう。
「うーん、死なないように、努力する」
正解かどうかはわからないが、ルッカは前向きなことを口にした。
落ち込んでいるのなら、励ましたい。
「つまり、どういうこと?」
アナは、別に何かを期待していたわけではないのだろうが、困ったような顔をした。
「信頼できる誰かに相談するよ。そうだなあ、オレの場合はアンドレやミゲル、それにグレン。まあ、ユウもかな。あいつらはオレの悩みを、自分のことのように真剣に考えてくれる」
「そっか」
アナはうらやましそうに目を細めた。
「いいわね、頼りになる素敵な友人がいて。私には、そんな学友はいないな。みんな、クレイブソルトのお嬢様として、親切だけど、本当の私には興味がない」
「そんなことないよ!」
オレがいる、と言いかけて、やめた。
まだ、それほどアナに信頼されている自信が、ルッカにはなかった。
「君のお父さんや、お母さんなら、きっと相談を聞いてくれるよ」
アナから聞く限り、彼女の両親は娘想いの素晴らしい人たちだ。
アナは、言われて喜んだ。
「そうね。私には父と母がいる。二人は信頼できる」
アナは、真面目にうなずいた。
「わかったわ。辛いことがあったら、ルッカの言う通り、両親に相談する」
「それと……」
ルッカは、やはり我慢出来くなった。
「オレも、オレも君のためだったら、なんだってするから、死ぬほど辛いことがあるなら、オレにも話をしてくれ!」
声が大きかったかもしれない。
どうしかしましたか、と遠くで声がした。
「誰かくるわ」
アナは慌ててカーテンを、閉ざした。
完全に閉じる前に、ルッカに微笑んだ。
「ありがとう、ルッカ。今夜は、楽しかった」
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