不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
真夜中のクレイブソルト家
「結局、この方法か」
グレンは呆れていた。
ミゲルの表情も曇っている。
「危なくなったら、すぐに降りてこい」
「大丈夫だミゲル、オレの身軽さは知ってるだろ?」
クレイブソルト家の裏門に回って、壁を前にしていた。
「そういうことを言ってるんじゃない。誰かに見つかりそうになったら、すぐに引き返すんだ!」
「わかってるって」
ルッカは、器用に壁をよじ登った。
使用人に追い返されたあと、三人で屋敷の周りを巡った。
ミゲルが建物の内装を推定し、アナの部屋に目星を付けた。
その部屋の窓を目指そうというのだ。
ルッカは器用に屋根を伝っていった。
叔父のカイゼルは大工仕事もしている。
その手伝いで、屋根の上を歩くのはお手の物だった。
「あれじゃ、ただの泥棒だな」
「うむ。あまり、感心できるやり方じゃない」
「だが、こういうシチュエーションに女性は弱いはずだ」
「それも、本で読んだことか?」
「まあな」
そんな会話をしながら、ミゲルとグレンは、心配そうにルッカを見守る。
「アナ! アナ=クレイブソルト!」
目的の場所にたどり着くと、ルッカは窓ガラスを叩いた。
窓の内側は、小豆色のカーテンで閉ざされている。
しばらく様子をみた。
ドキドキした。
あまりいい状況での遭遇とはいえない。
強盗と間違えられてもおかしくない場面だ。
しかしそれでも、ルッカは早く彼女と会って話がしたかった。
必ず、彼女となら分かり合える。
そう信じていた。
もう一度、窓を叩こうかと思ったとき、カーテンが左右に開かれた。
少女の顔がある。
アナ=クレイブソルト。
薔薇の蕾のソプラノリーダー、湖で歌を唄っていた少女。
ミゲルの見立ては当たっていた。
室内の内装も綺麗にまとまっており、彼女の部屋に間違いなかった。
美しい。
ルッカは、アナの姿に見惚れた。
蒼い月は半月となり、輝きを増している。
「どうか驚かないで。君は、オレを覚えているかな?」
彼女は、目を見開いていた。
「あの、ウル湖のほとりで出会ったルッカだよ、自己紹介したと思うけど……」
「ああ……」
ガラスの向こう側で、唇がわずかに動いた。
「話をしようと思ったけど、なかなかキッカケがつかめなくて。ものすごく失礼なのはわかってるけど、こうして会いに来たんだ」
ルッカは気持ちを込めて訴えた。
「話をしてくれないかい?」
アナは、しばらくルッカの様子をうかがっていた。
「あなたは、なぜ私があんな時間に、あんなところで一人でいたと思う?」
唐突に、アナは尋ねた。
思ってもみない質問に、ルッカは戸惑った。
「それは……」
ルッカは口ごもる。
想像もつかなかった。
全然わからない。
「運命だと思っている」
だから、自分の想いを告げた。
「君があの場所にいた理由がなんであれ、君と出会ったのは運命だ。月の光に照らされて、あの歌を口ずさむ君は美しかった」
ルッカは、アナの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「君に恋をした。だから、こうして会いに来たんだ」
グレンは呆れていた。
ミゲルの表情も曇っている。
「危なくなったら、すぐに降りてこい」
「大丈夫だミゲル、オレの身軽さは知ってるだろ?」
クレイブソルト家の裏門に回って、壁を前にしていた。
「そういうことを言ってるんじゃない。誰かに見つかりそうになったら、すぐに引き返すんだ!」
「わかってるって」
ルッカは、器用に壁をよじ登った。
使用人に追い返されたあと、三人で屋敷の周りを巡った。
ミゲルが建物の内装を推定し、アナの部屋に目星を付けた。
その部屋の窓を目指そうというのだ。
ルッカは器用に屋根を伝っていった。
叔父のカイゼルは大工仕事もしている。
その手伝いで、屋根の上を歩くのはお手の物だった。
「あれじゃ、ただの泥棒だな」
「うむ。あまり、感心できるやり方じゃない」
「だが、こういうシチュエーションに女性は弱いはずだ」
「それも、本で読んだことか?」
「まあな」
そんな会話をしながら、ミゲルとグレンは、心配そうにルッカを見守る。
「アナ! アナ=クレイブソルト!」
目的の場所にたどり着くと、ルッカは窓ガラスを叩いた。
窓の内側は、小豆色のカーテンで閉ざされている。
しばらく様子をみた。
ドキドキした。
あまりいい状況での遭遇とはいえない。
強盗と間違えられてもおかしくない場面だ。
しかしそれでも、ルッカは早く彼女と会って話がしたかった。
必ず、彼女となら分かり合える。
そう信じていた。
もう一度、窓を叩こうかと思ったとき、カーテンが左右に開かれた。
少女の顔がある。
アナ=クレイブソルト。
薔薇の蕾のソプラノリーダー、湖で歌を唄っていた少女。
ミゲルの見立ては当たっていた。
室内の内装も綺麗にまとまっており、彼女の部屋に間違いなかった。
美しい。
ルッカは、アナの姿に見惚れた。
蒼い月は半月となり、輝きを増している。
「どうか驚かないで。君は、オレを覚えているかな?」
彼女は、目を見開いていた。
「あの、ウル湖のほとりで出会ったルッカだよ、自己紹介したと思うけど……」
「ああ……」
ガラスの向こう側で、唇がわずかに動いた。
「話をしようと思ったけど、なかなかキッカケがつかめなくて。ものすごく失礼なのはわかってるけど、こうして会いに来たんだ」
ルッカは気持ちを込めて訴えた。
「話をしてくれないかい?」
アナは、しばらくルッカの様子をうかがっていた。
「あなたは、なぜ私があんな時間に、あんなところで一人でいたと思う?」
唐突に、アナは尋ねた。
思ってもみない質問に、ルッカは戸惑った。
「それは……」
ルッカは口ごもる。
想像もつかなかった。
全然わからない。
「運命だと思っている」
だから、自分の想いを告げた。
「君があの場所にいた理由がなんであれ、君と出会ったのは運命だ。月の光に照らされて、あの歌を口ずさむ君は美しかった」
ルッカは、アナの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「君に恋をした。だから、こうして会いに来たんだ」
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント