不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
薔薇の蕾の恋①
人を好きになったのは、これが初めてだった。
唄を歌えれば、それで幸せ。
そんなふうに、ずっと思っていた。
父は頼りになるし、母は優しい。
学友たちも、親切で仲良くしてくれる。
なに不自由ない暮らし。
不満はなかった。
そんな、幼い私の世界に、あの人が現れた。
学友たちが、黄色い声で噂をしていたから、その存在は知っていた。
実際に会って、その瞳で見つめられて、心が引き寄せられた。
金色の長い髪をなびかせ、まるで、太陽のように輝いている。
それでいて、自分自身は陽の光を浴びたことのないような白い肌。
皆から、太陽の貴公子と呼ばれ、敬われている人。
ハーメルン。
誰よりも美しく、誰よりも強い。
私は、一目会ったそのときから、彼に夢中になった。
教皇の就任式展の帰りに、声をかけられた。
彼は、聖戦士。
大聖堂を護るこの国の英雄の一人。
いえ、十二人いる聖戦士の中でも、おそらく彼が一番、人気がある。
この国で、唯一無二の存在。
蒼い瞳に吸い込まれて、気を失いそうだった。
緊張して、思ったままを告げると、
「それは僕のセリフだよ、薔薇のお嬢さん。君の瞳こそ、月のように美しい」
そう、心がとろけそうなことを言ってくれた。
ハーメルンは、少し私と話がしたいと言って、優しく肩に手を置いた。
聖歌を歌っているときの警備について、相談したい、とのことだった。
演奏の邪魔はしたくないが、警備はぬかりなく行いたい。
真面目な人だと思った。
私は、言われるがまま、彼の私室についていった。
引率の先生に一言断りを入れたいと申し出たら、
「大丈夫、それは僕にまかせて」
と、麗しい笑みを浮かべた。
ハーメルンは、人に見つからぬよう気を付けながら、私を部屋に招き入れた。
そして、豹変した。
今まで見ていた姿が嘘のようだった。
「服を脱ぐんだ」
冷たい口調で言われた。
私は何が起きているかわからず、きょとんとして、固まってしまった。
彼は、声を荒げた。
「無理やり脱がすと面倒だ。自分で脱げ」
「……ハーメルン様?」
彼は、今度は口を開かず、代わりに剣を抜いた。
剣の刃先を、私の胸元に押し付ける。
戦士の剣とは、こんなにも重く冷たいものなのね。
気が動転していた私は、場違いにもそんなことを考えた。
「べつにこの剣で、服を裂いてもいいんだ。もし、お前がここで起こったことを人に告げても、誰も信じない。お前も知る通り、オレは、聖戦士であり、太陽の貴公子だ。クレイブソルトの小娘よ、どちらの弁が信用されると思う?」
泣いたけど、許してくれなかった。
結局、私は自分で服を脱いだ。
ハーメルンも服を脱いだ。
不覚にも私、アナ=クレイブソルトは、裸の彼も美しいと思った。
唄を歌えれば、それで幸せ。
そんなふうに、ずっと思っていた。
父は頼りになるし、母は優しい。
学友たちも、親切で仲良くしてくれる。
なに不自由ない暮らし。
不満はなかった。
そんな、幼い私の世界に、あの人が現れた。
学友たちが、黄色い声で噂をしていたから、その存在は知っていた。
実際に会って、その瞳で見つめられて、心が引き寄せられた。
金色の長い髪をなびかせ、まるで、太陽のように輝いている。
それでいて、自分自身は陽の光を浴びたことのないような白い肌。
皆から、太陽の貴公子と呼ばれ、敬われている人。
ハーメルン。
誰よりも美しく、誰よりも強い。
私は、一目会ったそのときから、彼に夢中になった。
教皇の就任式展の帰りに、声をかけられた。
彼は、聖戦士。
大聖堂を護るこの国の英雄の一人。
いえ、十二人いる聖戦士の中でも、おそらく彼が一番、人気がある。
この国で、唯一無二の存在。
蒼い瞳に吸い込まれて、気を失いそうだった。
緊張して、思ったままを告げると、
「それは僕のセリフだよ、薔薇のお嬢さん。君の瞳こそ、月のように美しい」
そう、心がとろけそうなことを言ってくれた。
ハーメルンは、少し私と話がしたいと言って、優しく肩に手を置いた。
聖歌を歌っているときの警備について、相談したい、とのことだった。
演奏の邪魔はしたくないが、警備はぬかりなく行いたい。
真面目な人だと思った。
私は、言われるがまま、彼の私室についていった。
引率の先生に一言断りを入れたいと申し出たら、
「大丈夫、それは僕にまかせて」
と、麗しい笑みを浮かべた。
ハーメルンは、人に見つからぬよう気を付けながら、私を部屋に招き入れた。
そして、豹変した。
今まで見ていた姿が嘘のようだった。
「服を脱ぐんだ」
冷たい口調で言われた。
私は何が起きているかわからず、きょとんとして、固まってしまった。
彼は、声を荒げた。
「無理やり脱がすと面倒だ。自分で脱げ」
「……ハーメルン様?」
彼は、今度は口を開かず、代わりに剣を抜いた。
剣の刃先を、私の胸元に押し付ける。
戦士の剣とは、こんなにも重く冷たいものなのね。
気が動転していた私は、場違いにもそんなことを考えた。
「べつにこの剣で、服を裂いてもいいんだ。もし、お前がここで起こったことを人に告げても、誰も信じない。お前も知る通り、オレは、聖戦士であり、太陽の貴公子だ。クレイブソルトの小娘よ、どちらの弁が信用されると思う?」
泣いたけど、許してくれなかった。
結局、私は自分で服を脱いだ。
ハーメルンも服を脱いだ。
不覚にも私、アナ=クレイブソルトは、裸の彼も美しいと思った。
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