鮮血の殺戮者と呼ばれた英雄 〜葛藤の先に見る景色〜
No.2 『協定関係』
人を殺してはいけない。そんなことは学校では習わなかった。
それは道徳的に、社会的に、本能的に、個人的に、当たり前と捉えているからだ。だけどそんな許容範囲も『戦場』という空間においては全くの無意味だ。強い者が生き残り、弱い者が死ぬ。
それが当たり前なのだ。だってこの世界は弱肉強食なのだから。
そんな世界を壊したいと思った。皆が楽しく住める世界。そんな世界を創りたいと思った。
そのためにはもっと力が必要だった。
圧倒的な力が。皆を守る為に。自分を守る為には。
3回目の戦地入り――僕はある決心をしていた。
人を殺そう。そう思ったのだ。自分の手で。自分の銃で。人を殺す。僕にとってそれは普通の人間に戻れないことを意味していた。
けれど敵を殺さないと僕の住んでいる国に居る人々が殺される。そう思い、僕は身体を動かした。いや、動かすしか無かったとでも言うべきか。
今回の戦地は沼地だった。敵の奇襲が起こり、咄嗟に銃を取り、反撃をするも味方はかなり死んだ。それは上司の判断が怠ったからだ。普段戦場で戦わない上司は突然の出来事に対処できない。その癖、強い武器を持っている為、敵も簡単には殺せない。その内に下っ端の兵士はあっという間に全滅というのも珍しくない。
そして今回もほぼ全滅だった。戦力になるのはたったの10人。
息をしていたが見捨てた兵士はゴマンといる。だがそんなもう欠陥品《使えないもの》は捨てる。
それが国の、軍の、兵士の、戦場の掟だった。
三回目の戦地入りをどうにか終え、兵士収容所へと戻った。
その時だ。俺は声を掛けられた。
「おい、お前。ピエロを倒したみたいだな?」
後ろを振り向くとそこには1回目の戦地入りで生き残った少年が居た。銀髪碧眼で見た目は美しかった。肩まで伸びた髪はサラサラで女の子と見間違いしてしまうほどである。
「ピエロ?」
「殺人ピエロだよ。笑いながら人を殺しまくる戦場の道化野郎さ」
「と言われても僕はただの囮に過ぎないよ。実際本当に殺した奴は僕じゃない。僕はただ苦しまない為に最後に引き金を引いただけだよ」
「謙遜なんてするな。お前が奴を殺した事には変わりはないだろ。それでなんだが、お前はこれからどうするつもりだ?」
「これからどうするって……戦場で戦い続けるしか」
「はぁ? それはそうだろうな。終わったあとだよ。戦争が終わったあと」
「終わったあとか……。考えたことも無かったな」
「そうか」
「そうだよ。そんな戦争が終わるなんてこと有り得はしないんだから。僕達が生まれる前からずっと戦争は続いてるようじゃないか」
「三十年前な。俺達の国の王が核兵器をドカンと一発やったのが問題らしいぜ」
「へぇーそうかい。戦争は終わらないの?」
「終わらないさ。意地の見せ合いだよ、もうただの。どちらかが折れるまではずっと続くさ」
「それは困るね。僕達はずっと若いわけじゃない。戦えなければお金は手に入らない」
「おまけに戦場は死が憑き物。一度戦地から戻ってきたとしても二度目は違うかもしれない。でも俺達三人は生き残った」
「三人……?」
「あぁ、三人だ。おい、来いよ。ルル」
そう呼ばれて僕の後ろから現れたのは赤髪の少女。
絹のような長い髪は側によるだけで良い匂いがしそうだ。
「……ワタシの名前はルル。宜しく」
ペコリと頭を下げた少女の目は何処か悲しそうだ。
「あぁ、僕の名前はレイル。宜しく」
「俺の名前を言うのも忘れてたな。俺はロイド。よろしくな」
「先に言っておくけどワタシは死にたくない。だから生き続ける為に協定を組みたい」
「協定……?」
「あぁ、協定だ。元々話は俺とルルだけで進めていたんだ。あの時のお前の顔は見ていられなかったからな」
「そ、それで協定ってなんだよ」
「なぁーに。簡単なことだ。チームを組もうってことさ。一人でずっと戦い続けるよりは三人で力を合わせ、戦った方が勝率が上がる。つまり、俺達の生存確率が上がるわけだ」
「そうか。それは良い話だ。だが生存確率を上げる為にと言っているが、それならここを離れて王都へ戻れば良い話だろ」
「たしかにそうだ。けれど俺達は戦うことにしか脳が無い馬鹿だろ。それに元々ここへ来た時点で決心はついていただろ」
「それに……ワタシには戦う目的がある」
「たしかにそうだな……僕にも」
「まぁ、そういうわけよ」
黒髪少年は人々を守る為に。
銀髪少年は平和な世界の為に。
赤髪少女は生き続ける為に。
彼等は共に戦い続ける事を決意した。
自分達の目標を叶えるために。
「あぁ、組もう。僕達は三人で一人だ」
それは道徳的に、社会的に、本能的に、個人的に、当たり前と捉えているからだ。だけどそんな許容範囲も『戦場』という空間においては全くの無意味だ。強い者が生き残り、弱い者が死ぬ。
それが当たり前なのだ。だってこの世界は弱肉強食なのだから。
そんな世界を壊したいと思った。皆が楽しく住める世界。そんな世界を創りたいと思った。
そのためにはもっと力が必要だった。
圧倒的な力が。皆を守る為に。自分を守る為には。
3回目の戦地入り――僕はある決心をしていた。
人を殺そう。そう思ったのだ。自分の手で。自分の銃で。人を殺す。僕にとってそれは普通の人間に戻れないことを意味していた。
けれど敵を殺さないと僕の住んでいる国に居る人々が殺される。そう思い、僕は身体を動かした。いや、動かすしか無かったとでも言うべきか。
今回の戦地は沼地だった。敵の奇襲が起こり、咄嗟に銃を取り、反撃をするも味方はかなり死んだ。それは上司の判断が怠ったからだ。普段戦場で戦わない上司は突然の出来事に対処できない。その癖、強い武器を持っている為、敵も簡単には殺せない。その内に下っ端の兵士はあっという間に全滅というのも珍しくない。
そして今回もほぼ全滅だった。戦力になるのはたったの10人。
息をしていたが見捨てた兵士はゴマンといる。だがそんなもう欠陥品《使えないもの》は捨てる。
それが国の、軍の、兵士の、戦場の掟だった。
三回目の戦地入りをどうにか終え、兵士収容所へと戻った。
その時だ。俺は声を掛けられた。
「おい、お前。ピエロを倒したみたいだな?」
後ろを振り向くとそこには1回目の戦地入りで生き残った少年が居た。銀髪碧眼で見た目は美しかった。肩まで伸びた髪はサラサラで女の子と見間違いしてしまうほどである。
「ピエロ?」
「殺人ピエロだよ。笑いながら人を殺しまくる戦場の道化野郎さ」
「と言われても僕はただの囮に過ぎないよ。実際本当に殺した奴は僕じゃない。僕はただ苦しまない為に最後に引き金を引いただけだよ」
「謙遜なんてするな。お前が奴を殺した事には変わりはないだろ。それでなんだが、お前はこれからどうするつもりだ?」
「これからどうするって……戦場で戦い続けるしか」
「はぁ? それはそうだろうな。終わったあとだよ。戦争が終わったあと」
「終わったあとか……。考えたことも無かったな」
「そうか」
「そうだよ。そんな戦争が終わるなんてこと有り得はしないんだから。僕達が生まれる前からずっと戦争は続いてるようじゃないか」
「三十年前な。俺達の国の王が核兵器をドカンと一発やったのが問題らしいぜ」
「へぇーそうかい。戦争は終わらないの?」
「終わらないさ。意地の見せ合いだよ、もうただの。どちらかが折れるまではずっと続くさ」
「それは困るね。僕達はずっと若いわけじゃない。戦えなければお金は手に入らない」
「おまけに戦場は死が憑き物。一度戦地から戻ってきたとしても二度目は違うかもしれない。でも俺達三人は生き残った」
「三人……?」
「あぁ、三人だ。おい、来いよ。ルル」
そう呼ばれて僕の後ろから現れたのは赤髪の少女。
絹のような長い髪は側によるだけで良い匂いがしそうだ。
「……ワタシの名前はルル。宜しく」
ペコリと頭を下げた少女の目は何処か悲しそうだ。
「あぁ、僕の名前はレイル。宜しく」
「俺の名前を言うのも忘れてたな。俺はロイド。よろしくな」
「先に言っておくけどワタシは死にたくない。だから生き続ける為に協定を組みたい」
「協定……?」
「あぁ、協定だ。元々話は俺とルルだけで進めていたんだ。あの時のお前の顔は見ていられなかったからな」
「そ、それで協定ってなんだよ」
「なぁーに。簡単なことだ。チームを組もうってことさ。一人でずっと戦い続けるよりは三人で力を合わせ、戦った方が勝率が上がる。つまり、俺達の生存確率が上がるわけだ」
「そうか。それは良い話だ。だが生存確率を上げる為にと言っているが、それならここを離れて王都へ戻れば良い話だろ」
「たしかにそうだ。けれど俺達は戦うことにしか脳が無い馬鹿だろ。それに元々ここへ来た時点で決心はついていただろ」
「それに……ワタシには戦う目的がある」
「たしかにそうだな……僕にも」
「まぁ、そういうわけよ」
黒髪少年は人々を守る為に。
銀髪少年は平和な世界の為に。
赤髪少女は生き続ける為に。
彼等は共に戦い続ける事を決意した。
自分達の目標を叶えるために。
「あぁ、組もう。僕達は三人で一人だ」
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