行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第五十六話 マリアンローゼの過去
時は二十年前に遡る。
マリアンローゼは魔界の貧しい村に生まれた。
父親は生まれる前に死んでおり、母親は生むと同時に亡くなった。
生まれつきのコントロール出来ない程の膨大な魔力を持ったマリアンローゼは忌み子として村から離れた小屋に隔離されていた。
マリアンローゼは八歳まで隔離されていたが、当時の魔王――バーナード·シュナイダーが村に査問に来たことにより、バーナードに引き取られその日、マリアンローゼ·シュナイダーになった。
バーナードには日常生活の送り方、魔力の制御の仕方などを教えてもらい、数年で普通の生活ができるようになっていた。
バーナードはよく人間と共存したいと言っていた為、当時の四天王の一人――豪乱のバランを筆頭に一部の魔族から嫌われていた。
それにもめげずに共存を願うバーナードを凄いとマリアンローゼは尊敬していた。
そんなある日、人間側から和平の話があった。
和平場所は人間界側の港町だった、明らかに罠だとバーナードを引き止める部下もいたが、バーナードは行くの一点張りだった。
マリアンローゼもついていくとお願いしたが、必ず返ってくるとついていかせてもらえなかった。
代わりに護衛として珍しくバランとその部下が名乗りを上げた。
結果、やはり罠だった。ただしバランと人間側による共謀だったが。
バランは、「人間側と共謀して魔界を陥れようとした為、魔王バーナード·シュナイダーを殺害した」と自慢気にバーナードの首を掲げていたが、魔界の皆はわかっていた。
日頃から魔王に成りたがっていたバランと魔王を殺したい人間達の策略だと。
バランは魔王を倒した自分が次の魔王に相応しいと言っていたが、マリアンローゼがそれを許さなかった。
魔王になる資格は単純で魔界で一番強いかどうか。
当時十代前半のマリアンローゼはバランに勝負を挑んだ。
バランは笑いなから父親の仇を討とうとするマリアンローゼの挑戦状を受け取った。
バランには弱いものを痛めつける趣味があった為、喜んでその挑戦を受けた。
バランは性格こそ悪いが、四天王の中でも最強だった為、誰もがマリアンローゼの悲惨な最後を想像した。
だが、結果は逆で弄ばれ、殺してくれとバランが泣き叫んでもじわじわと痛めつけて殺した。
その日新しい魔王マリアンローゼが誕生した。
魔王になってからのマリアンローゼは、下の名前のシュナイダーを名乗らなくなった。
そして人間側に乗り込んで襲ってくる人間の兵士達を飽きるほど殺した時、自分が大怪我をしてるのに気が付いた。
近場の人間の兵士達は殺した為、休めそうな岩陰で休んでいると一人の人間の男の子がマリアンローゼに近付いてきた。
殺しに来たのかと思ったが、持っている物は剣ではなく、薬草や食べ物だった。
少年は何も言わずにマリアンローゼを手当てし始めた。そして食べ物を食べるように勧める。
空腹だったマリアンローゼはガツガツ食べ終わった後、少年に聞いた。
「どうして魔王である自分を助けたのか?」
答えはこの戦で死んだ父親の言葉で「自分達が勝手に攻めているのだから例え私が死んでも魔族を恨んじゃいけない。もし傷ついている魔族がいたら助けてあげなさい」と言われていたらしい。
「憎くはないのか?」
「憎いに決まっている。でも僕の父さんはかっこ良かったから、僕も父さんに誇れる人間でありたい。だから助けるんだ」と治療をしてくれる。
マリアンローゼは、バーナードが「すべての人間が悪いわけじゃない。良い人間もたくさんいる。だから一緒に仲良く生きていけたらいいなぁ」とよく言っていた事を思い出し涙を流す。
今の自分はバーナードに誇れる自分ではないと。
少年に礼を言うと、マリアンローゼは魔王国に戻り、和平案を人間側に送る。
バーナードに誇れる自分になる為に。
それまでシュナイダーの名前は封印しようと決め、和平に向けて動き出した。
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