行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第五十一話 シリウス·ブラッドリリー



 魔王マリアンローゼは怒りに震えていた。
 先程バルドラ皇帝の番号から魔導フォンに電話が
かかってきて電話をとると、相手は皇太子で冬太もエスナも皇帝、皇后、ケルム宰相、ジパンの忍者全員を処刑したとの電話だった。


「やはりだめだったのか。ここまで努力しても平和になれないというのならもういい。消してやる、私から大事なものを奪ったすべてを殺してやる!!」


その日魔王から全魔界の民に向けて人間界との戦争をする事が告げられた。








            ◆◆◆


 世界樹のある大島エルドラドにあるエルフの里にて六人の怪我人が治療を受けていた。
 それは奇跡だった。エスナが通常転移できるのは、自分も含めて三人まで。だがあの時、無理をしてでも転移する必要があった。おかげで皇帝、皇后、ケルム宰相は無事で、盾になってくれたランガと影丸は大怪我をおったものの無事だった。たった一人を除いては。
 エスナは転移防止の結界を上回る魔力で無理して自分を入れて七人も転移させた為、反動で暫く魔法が使えなくなってしまった体で空を見上げる。
(トウタ君どこに行っちゃったんですか~)






            ◆◆◆


 エルドラド近くの小島の洞窟内にて冬太はなんとか生きていた。
 目が覚めると冬太の顔をじっと見つめる白色のコウモリが目の前にいた。


「わっコウモリ!? ……ここは?」


「僕の名前はシリウス。君が居るのはエルドラド近くの小島の洞窟さ。そしてここは僕の大事な寝床でもある。目が覚めたなら早く出ていって欲しいけど、その怪我だと動けないよね。しょうがないから怪我が回復するまで面倒を見てあげるよ」


「コ、コウモリが喋ってる~!?」


「なんだい、喋っちゃ変かい?」


「うーん、そう言われると変じゃないかも」


「……君こそ変って言われない?」


「うーん、言われるかも?」


「あはは、僕君の事気に入ったよ。名前は?」


「柏木冬太――冬太でいいよ」


「トウタだね。で今って魔界暦何年でなんでこんな小島にボロボロの状態で流されてきたのさ」


 冬太は今が魔界暦千六百年ということも、そして自分が異世界から呼ばれて経験したことすべて話した。


「うわぁ、僕千五百年も寝ちゃっていたんだね。それで魔界と人間界の関係は変わらないと。つくづく思うよ。人間って愚かだなって」


 なぜかは分からないが、シリウスの言葉に重みを感じる。


「愚かかもしれない。でも平和を共存を望んでいる人だっているんだ。まだ終わりじゃない。諦めてない人達だっているはず。だから僕は行くよ」


「君は本当に面白いな。姿も性格も違うのにどこかあの人に似てる。そんな君にサービスだ」


 次の瞬間、体の傷がなくなっていく。


「回復魔法が使えるのかい? おかげで楽になったよ」


「滅多に他人に使わないんだから感謝してよトウタ」


「うん、ありがとう。さぁて問題はこの小島からエルドラドまで泳げるかどうかなんだよなぁ」


 あんまり水泳が得意ではない冬太が悩んでいると、「僕が飛んで連れていってやるよ」と冬太の背中に掴まり、翼を十倍程に大きくして翼を羽ばたかせると空中に浮く。


「すごいシリウスってこんなことも出来るんだね」


「まぁね、この距離ならすぐ着くよ」




           ◆◆◆


 エスナが空を見上げていると、何か鳥か何かが近付いてくる。
 だがよくよく見ると、冬太だったので驚くエスナ。


「なんでトウタ君に翼が生えてるんですか~!?」


「ただいま帰りましたエスナさん。この翼はね近くの小島で友達になったコウモリのシリウスが力を貸してくれているんです」


 説明しながら砂浜に着地すると、エスナに抱き締められる。


「本当に無事で良かったです~! 私が無理矢理転移したせいで死んだのかと思っていました~」


泣きながら抱きつくエスナ。


「苦しいです、エスナさん。でもエスナさんが無事で良かったです。他の皆は?」


「ランガさんと影丸さんが大怪我をしていますが命に別状はありませんし、皇帝様と皇后様は無事です~」


「そっか、安心しました。それで僕を助けてくれたシリウスが
隣で飛んでるコウモリです」


「やぁ、僕は、シリウス。君の名前は?」


 エスナは白い赤い目のコウモリの放つ魔力と名前のシリウスでこのコウモリの正体に気付き、ガタガタ震える。


「ひゃい。わ、私は現魔王の侍従をしております、エスナです~」


「ふぅーん、エスナだね。覚えたよ。それでエルフの里に帝国の人間が三人いるんだよね?」


 それを聞いて慌てるエスナ。


「こ、皇帝様達は魔族と共存を望んでらっしゃる方なので」


「そんなに怯えなくてもいいよ。だいたいの成り行きはトウタから聞いたから。とりあえずは会って話をしたくてね。案内してくれるかな?」


 エルフの里に着くと、シリウスを見てガタガタとエスナみたいに震えている。
 冬太が帰ってきたと知らせを受けランガや影丸、皇帝や皇后、ケルム宰相が間借りしている家から飛び出してくると、ランガがシリウスに気付き、片膝を地面につけ頭を下げる。
「まさかあなた様がご健在とは。わたしは現魔王国で元帥を勤めさせて頂いているランガです」


 気付けば帝国の3人と影丸と僕以外は全員がランガと同じように頭を下げている。


「そんなに畏まらないでいいよ。僕をがここに来たのはトウタをここへ連れていくついでにそこの3人の人間に聞きたい事があってね。ねぇ、今の状況でもまだ魔族と共存したいと思ってる?」


 そう質問されて口を開いたのは皇帝。 


「確かに今の帝国は我がバカ息子のせいで戦争を魔王国に仕掛けようとしておる。だが元は魔族は野蛮で狡猾で低俗な生き物と、教えてきた帝国の歴史と皇帝である儂――バルドラ·アスファルトのせいだ。しかし、実際に魔族とふれあい感じたのは、姿、能力は違えど同じ心を持った人間なのだと。儂が愚かだったのだ。そのせいで息子を魔族嫌いにさせたのだから」


「なるほどなぁ。それで君は今からどうしたいの?」


「儂はこの戦争を止めたい。だから儂の他にも共存を望んでいる四大貴族の一人――ブレリュート公爵を筆頭に人をかき集め、現帝国軍を抑える軍を編成するつもりじゃ』


「君の気持ちはわかったよ、でも少し遅かったみたいだね」


 全員が頭を傾けているなか、隠密担当エルフが外から戻り、


 魔王マリアンローゼが戦争を容認し、自身も前線に出る準備をしている事が伝えられた。


「なんでマリー様が~?」


「恐らく君達が死んだと思ってるからじゃないかなぁ」


「じゃあ、すぐに転移して園長に生きてることを伝えないと。エスナさん転移魔法を」


 だかエスナは今は魔法が使えない為、首を横に振る。


「誰か他に転移魔法遣えるかたかは居ないんですか!」


 全員が首を横に振る。 


「転移魔法は非常に扱うのが難しくて使えるのも私とマリー様以外聴いたことないです~」


「じゃあ、とりあえず生きてることを証明するた為に魔王国に行きましょう!」


「それは得策とは言えないなトウタ」


「どういう事?」


「すでに両軍動き出している。ここで魔王に会った所で戦争をやめる可能性は低い」


「じゃあ、どうすれば……」


「僕に策がある。僕のお願いを聞いてくれるなら」


 シリウスが突然光だしたと想ったらそこには長い白髪と赤目が特徴的な美少女が立っていた。


「この第二代目魔王シリウス·ブラッドリリーが力を貸そうじゃないか!」



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