行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第三十六話 長年の約束
白鯨が船頭をしてくれたおかげであっという間に人魚の集落の港に着いた。
早速リヴァイアサンに会う為に森に入り、滝の裏の洞窟を抜ける。
「お主らもう戻って来た………助蔵?」
リヴァイアサンは五代目の助蔵を見て驚いている。
「いや、よく見ると助蔵じゃない。助蔵の面影があるお主は?」
リヴァイアサンの姿に見惚れていた助蔵は声をかけられ慌てて答える。
「あっしはあなた様が知っている助蔵の孫にあたる五代目助蔵と申します。先々代の助蔵があなた様の為に造ったお酒をお持ちいたしました。どうぞお飲み下さい」
そういって魔王が魔法で持ってきた酒樽をリヴァイアサンの前に置く。リヴァイアサンにコップを渡し酒樽を開ける。
長年封をされていたジパン酒は、熟成し黄金色に輝いていた。
リヴァイアサンはごくりと喉を鳴らし、酒樽から黄金の酒をコップに入れる。
口に入れると熟成された味わい深さが口いっぱいに広がる。
コップに入っていたお酒を飲み干すと、余韻を楽しむかの様に目を閉じ、リヴァイアサンは涙を流した。
三代目助蔵との思い出を頭の中で再生しているのだろう。
しばらくして目を開け、冬太達の方に目をやる。
「皆に礼を言う、ありがとう。おかげで助蔵との約束を果たせた。もうこの洞窟に籠る必要もないし、約束通り水族館に協力しよう。でさっきから気になっていたそこの変わった髪型の男は誰じゃ?」
「この髪型はちょんまげと申します。余は助蔵の国の王である徳山信綱と申します。この度はこうして出会えた事光栄の極み」
「そうか、主が助蔵の国の王か。こうして助蔵の酒を届けてくれたこと礼を言う。先程からこの酒ばかり見てる所を見るとそなたもこの酒を飲みたいのであろう?」
「いや、その酒は三代目助蔵が命をかけてあなたの為に造った酒だ。飲むわけには……」
そう言いながらも目は酒樽から離れない。
「そう言いながら顔が飲みたいと言ってるぞ。構わぬよ。妾と助蔵の約束は確かに叶ったのだから、それを祝して人魚の集落で宴会をしよう」
そのあと、信綱は三代目助蔵の酒を飲んで感動し泣き始めたり、五代目助蔵は自分が造ったお酒をリヴァイアサンや皆に振る舞い、リヴァイアサンに誉められ泣き始める。
エスナさんはいつものニコニコ顔で顔色変えず酒を飲みまくり、魔王は最初の一杯で撃沈し、冬太の膝の上で寝ている。
ベヒ子や鵺は酒は苦手らしく用意された料理をがつがつ食べている。
冬太はそんな光景を見て幸せだなぁと感じているとオリアナが冬太の隣に座る。
「トウタ殿、この度は本当に感謝してもしきれない。漁が出来なくなった私達に水族館スタッフという新たな仕事を与えてくれて、養殖という道も示してくれた。それだけじゃなく、リヴァイアサン様の長年の思いを叶えてくれた。本当にありがとう」
オリアナは涙目になりながら頭を下げる。
「まだ感謝するところじゃないですよ。水族館のオープンもまだなんだから一緒に頑張りましょう、
オリアナ館長」
皆の総意で水族館館長になったオリアナは顔を上げ、涙を流しながら「頑張ります」と笑顔で答えた。
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