行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第二十九話 クラーケンのたこ焼き

 
 魔のトライアングルと呼ばれる三つの海流がぶつかる場所に奴らは生息している。
 そして今、その魔のトライアングル流域に魔王、エスナ、オリアナと共に冬太は来ていた。
 オリアナは必死に行くのを止めた。
 只でさえ危険な流域なのに、海の悪魔とも言われるクラーケンを捕まえようなんていくらなんでも無茶苦茶すぎる。
 止めはしたが、魔王に冬太の言う通りにしろと言われたら、案内するしかない。オリアナは知り合いの頑丈な船を持つ船長にお願いし、ここまで来ていた。


「クラーケンは8本の軟体の脚を持っていてその脚で船を海中に引きずり込むんです。例え脚を切ってもまた新しい脚がすぐに生えてくるので、普通は近づこうともしませんし、見かけたとしても皆すぐに旋回させて逃げています。それほどに危険な魔獣なんです! 聞いてますか!?」


「うん、聞いてるよ。脚を切ってもすぐに生えてくるんでしょ。なら食材として無限に活用出来るね。でも痛みがあると可哀想だなぁ」


「話が噛み合わないんですが!?」


 助けを求める様に魔王とエスナを見るオリアナだったが、二人は首を横に振る。


「もう遅いぞオリアナ。船の周囲を見てみろ。クラーケンだらけだぞ」


「ひぃぃっ! 何でこんなに集まってるんですか!?」


 オリアナが船の周囲を見ると、少なくとも十頭はクラーケンが集まっている。


「トウタがいるからだな」 「そうですね」


 呑気にお茶を飲みながら答える二人。


「トウタ殿が理由ってどう言うことですか? とゆうか呑気にお茶を飲んでる場合じゃないですよ! すぐそこにクラーケンがいるのに……あれ? 襲ってこない?」


「僕に会いに来てくれたんだね、ありがとう」


 冬太は海面に出ているクラーケンの脚を握り礼をいう。
 そんな冬太をクラーケン達の脚がペタペタ触る。
「ふふっ、くすぐったいよ。それでねお願いがあるんだけど僕たちと一緒に水族館をしてくれないかな?」


 船の船長とオリアナはクラーケンに水族館の話をしたところでわからないと少し嘲笑していたが、冬太が頭を下げるとクラーケン達は脚で船を抱え、冬太達がやってきた水族館の方向へ進んでいく。


「嘘でしょ!?」「嘘だろっ!?」


 船長とオリアナは冬太の言葉通りに動いているクラーケン達を見て信じられないと驚愕している。


「あと脚とか切ってもすぐに生えてくるって聞いたんだけど、切られて痛かったりする?」


 冬太の問いに首を横に振るクラーケン達。


「じゃあ、君達の安定した生活を保証する代わりに食材として脚を定期的にもらってもいいかな?」


 冬太がお願いすると首を縦に振るクラーケン達。


「な、なんですか? 魔王様、絶対普通の動物好きじゃないですよねあの人!?」


「もうそういう少年だと思って考えるのを諦めろ。私とエスナはとっくに考えるのを放棄した」


 船長とオリアナはお互いを見つめてこくりと頷き、一言。


「「はい、考えるの放棄します!」」


 そしてお約束の様に魔王だけがクラーケンの脚に捕まり海に捨てられる。


 しかし、こうなる事がわかっていたのか悟った顔で空中に浮き、船から離れて水族館の方向へ向かっていく。




 水族館に帰ってくるとクラーケンから脚を一本もらい、ドワーフ族の鍛治職人に前もって頼んでいたたこ焼きの鉄板に油をぬり、作っておいた生地を流し込み、一口だいに切ったクラーケンの脚を一個一個の穴に入れていく。
 ソースがないのは残念だが、酢はこの世界にあったので、マヨネーズをかけ、上から鰹節モドキと青のりをかけて完成!
 周囲の皆は最初食べようとしなかったが、冬太が美味しそうに食べているのを見て、皆食べ始めると、たこ焼き争奪戦になった。
 今回はあくまで試食だったのでオープンまでに納得の出来る段階まで調理スタッフの人魚を鍛えるとしてとりあえずは看板メニューは出来た。
 問題は次だ。
 冬太がオリアナに聞く。


「リヴァイアサンってどこにいるの?」


 オリアナはもう驚かなかった。





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