行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第十七話 満員御礼の側に種。

  
 ベヒーモス騒動から一週間経ち、動物園には長蛇の列が並んでいる。
 以前プリンの時にもたくさんの人が並んでいたが、その比ではない。
 目的は、世界で災害とされていたベヒーモスである。
 世界の人々にとっては、破壊の権化とされているベヒーモスが本当に動物園で見れるのかと、疑いながら当初は来ていた。
 しかし、ブラッドリリーの銀色の首輪で力をコントロール出来るようになったベヒーモスは、見れるだけじゃなく、触れる事も出来るし、ベヒーモス自身が元々優しい性格なのがよかったのか、お客さんを四、五時間待たせるはめになっている。
 万が一の為にベヒーモスの横には、園長である魔王が控えている。
 首輪をくれた恩を感じてるのか、本来動物や魔獣に嫌われやすい魔王にベヒーモスはなついている。
 魔王も初めて動物になつかれたのが嬉しいのかベヒーモスの世話を率先してやっている。
 その分冬太の仕事が増えたが、冬太は楽しそうに仕事をしている。
 つい最近まで更地だった場所に動物園――それも観ること事態珍しい魔獣まで集め、そして大変多くのお客さんがいる今のこの状況は感慨深いものがあったのだろう。
 仕事をしながら作業用に被っている帽子を深く被り、涙を隠す。
 寝そべったベヒーモスの背中に魔人の子供、人間の子供関係なく登って遊んでいるのを見ると今この動物園だけは魔人、人間、関係ない中立の場所。


 ――それは現在の魔王マリアンローゼの目指すべきものだった。
 最前線で戦ってきた魔王は一番戦争の虚しさをしっている。
 だからこそ冬太と同じ様に涙を見せないように俯いて泣いていた。
 その気持ちを理解してか、魔王の侍従であるエスナはそっとハンカチを渡す。
 エスナは皆が幸せな今の状況がずっと続けばいいのにと涙目で周囲を見ていた。


 だが幸せとは、長くは続かないもの。


「頼もぉぉぉぉおっ!! 私は勇者アリサ! ベヒーモスを退治しにきた者だ!!」


 さっそく問題の種がやってきた。





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