行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第十二話 アスファルト帝国にて③
アスファルト帝国皇帝私室のドアをノックし、許可を得て中に入る宰相ケルム。
「失礼いたします陛下」
「うむ、その顔を見るからに作戦通りにいったようだな」
「それ以上の成果でございます」
ケルムはニヤリとし、皇帝にプリンの入った箱からプリンを取り出し渡す。
「これはなんだ? ケルム」
「魔界の動物園の看板商品です。それこそが魔獣の動物園人気の原因だったのです」
「こんな物が人気の原因だと?」
疑う気持ちはわかりますが、食べてください。言ってる意味がわかりますから」
上の部分が黄色で下の底の部分が黒い見たことのない食べ物は、皇帝にとって食べがたい物だったが、ここまで宰相に言われて食べない訳にもいかない。勇気を持って口に入れると、
「うっまぁぁぁあっ!? なんだこの口どけする甘さとコクのハーモニーは!?」
「下の黒い部分と一緒に食べるとさらに格別ですぞ」
ケルムの言葉をきき、ごくりと喉がなり、下の黒い部分と一緒にスプーンですくい口にいれる。
「甘苦いっ!? しかし見事に調和され一つの見事な料理へと昇華されている!! 旨い! もう一個だ、もう一個おかわりだ!」
「申し訳ありません先程召し上がって頂いたのが、お土産の最後の一個です。人気商品の為、陛下と私の分しか手に入らなかったのです」
「ぐぬう、それは残念だ。しかしこのプリンという食べ物が人気の原因なのには納得したが、これが何なのだ?」
「当初の通り、動物園の土地をアイデア料で奪いとるつもりでしたが、相手は、土地を奪わない代わりに、このプリンのレシピと使用料を無料で渡してきたのです」
「……それは特なのか?」
「特もなにも魔界の動物園の看板商品をこちらで大量生産し、あちらの値段よりも安く売れば、客はこちらに流れ、あのプリンを身近でいつでも食べれる様になるのですぞ! 材料も卵、牛乳、砂糖と帝国でならば簡単に手に入る物ばかり。あちらは、動物園が奪われなかった事に安心しているでしょうが、大量にプリンを生産すれば、魔界の動物園は人が入らなくなるでしょう!!」
「なるほど、さすが我が宰相。さっそくプリンを生産し流通させよ!」
「ははっ、陛下の仰せのままに」
すぐにプリンは生産され、世界中に流通された。
だが、そのプリンの人気はいまいちだった。
「どういうことなのだっ!?」
 現在皇帝私室にて帝国の料理人によって、作られたプリンを食べ机にドンッと乱暴に置く。
「魔王国のプリンはこんなものではなかった!! 口どけは悪く、甘さやコクもすべてが薄い。魔界の国のは300ゼル(=円)なのに対し、200ゼルで売ったのにもかかわらずこれでは思ったより売れないぞ」
「はい、あまりにも味に違いがありすぎるので、魔界に諜報員を潜り込ませたのですが、どうも材料が違うようなのです」
「材料がだと?」
「使っている材料がコカトリスの卵、牛乳がバトルモウの牛乳、砂糖がシュガータートルの砂糖だそうです」
「な、何ぃ!? コカトリスの卵とシュガータートルの砂糖はどちらも入手困難度Sに認定されてあるし、バトルモウの牛乳など今まで誰も手に入れる事などできなかった筈だ。」
「私の諜報員からの情報ですと、どれも単品でも超一級品の美味しさだそうです。それがわかっていたから魔界側はレシピと販売許可をしたのでしょうな。魔界の動物園のプリンの人気はさらに上がったそうですしな」
「おのれ、この作戦を考えたのは魔王か?」
「いえ、諜報員の情報からですと、勇者召喚で喚ばれたカシワギトウタという少年らしいですな。私も直接談話しましたが、まさかあの幼い少年が知恵者とは思わず」
「ええいっ!! どうするのだ! このままだと本当に借金を返されるぞ!」
「大丈夫です。次の手はすでに考えております」
「本当か? 次は大丈夫なのだろうな?」
「ええ、魔界の動物園の人気が落ちること間違いない作戦です。」
ケルムは顔を歪ませて(カシワギトウタ、借りは返させてもらうぞ!)と心の中で誓う。
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