行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第九話 動物園開園



 ついに動物園当日を迎えた。
 フードコートの調理スタッフには完璧に味を再現できるまで特訓してもらったし、お土産屋も食品を始め、エスナさん率いる魔王国のメイドさんが冬太のいた世界でも市販されてるかのようなぬいぐるみを作ってくれた。
 なにより動物達が魔王以外には非常になついた事が大きい。
 安心してオープンできる。
 さぁ、開園だ!


 ~一日目~


 魔王が宣伝したことによって魔人の客はなかなか多かったが、人間界の客は一人も来なかった。
 だけど、魔人のお客がなついている魔獣を見て、気絶したり、触れたことに感動したり、多少の混乱もあったが、お客さん皆が喜んでいるのが印象的だった。
 あとは、フードコートやお土産店が大好評だった。
 どれも貴重な食材を使った料理を安価で食べられることもあって、長蛇の列がなった。
 中でもプリンはバカ売れし、その日作っていた300個のプリンが完売した。
 初日としては大成功と言えるだろう。


 ~一週間後~


 魔界では、魔獣動物園が大人気の観光場所になっていた。
 通常では触れないホーンラビットをもふもふでき、バトルモウの乳絞りで絞りたての極上の牛乳が飲める。さらにコカトリスやワイバーン、ペガサスなどに乗る事が出来ることが思ったよりも大好評で待ち時間も二、三時間も待たせる形になっている。
 そして、人間の観光客も数名噂で聴いたのかビクビクしながらも最後は笑顔で帰っていった。


 ~1ヶ月後~


 大変な事になった。
 人間の数名のお客さんから魔獣動物園の噂が広がり、一気に人間の観光客が来場したのだ。
 元々観光客が来るのを見越して港町に人間用の宿場を作っていたが、思ったよりも多くテント泊をしてまで動物園に来てくれている状況だ。
 魔獣の生態、暮らしかた、しぐさなどが自然に見れる環境は、人間界のただ檻に動物を入れたのと違い、人々にとってとても新鮮で魅力的に映った。
 動物とも身近に触れ合え、マンイーターに餌やりもできるし、シュガータートルの甲羅の栄養の高い砂糖もビンに入れて持って帰る事ができる(有料)。
 何よりもフードコートの食べた事のない料理とお土産店に売ってあるプリンは人々を一瞬で魅了してしまった。


 ―――時間は夕方。
 閉園の時間となり、後片付けをするスタッフ一同。


「皆の者、今日もご苦労だった。皆のおかげで動物園は大繁盛だしこれなら借金返済も夢じゃない、本当にありがとう」


 後片付けも終わり帰ろうとしていたスタッフにお礼を言う魔王。
 スタッフ達も笑顔で楽しい職場で働かせてくださってありがとうございますと礼を言い合う。
 スタッフ達が帰った後、動物園内に家がある冬太に魔王が改めて礼を言う。


「ありがとう。騙した形で済まなかったが、お前を呼んで本当に良かったと思う」


「お礼を言うのは、まだ早いですよ。でも僕もここに来れて良かったと今は思ってます」


「そうか、それは良かったのだが、園長の仕事って清掃と動物園の見回りなのか?正直雑用をしてるとしか思えないのだが」


「しょうがないじゃないですか。園長は動物に嫌われてるんだから」


 どうも魔王の強力過ぎる魔力のせいで動物はもちろん魔獣も警戒してしまうらしい。


「まぁ、良いじゃないですか。動物園は上手くいってるし」


「それもそうだな。よし、今日は、冬太の部屋に行って三人でオープンして1ヶ月祝いの宴会をするぞエスナ!」


「はいです~。冬太さんの料理楽しみです~」


「僕が作るのは決定なんですね」


 そう言いつつこんなのもたまにはいいかなと、二人のあとを追って自宅への道を進む。
 このあと一波乱二波乱あるとも知らずに三人は、夜の食事で頭がいっぱいになっていた。
 

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