復活のロリ勇者~腐属性添え~

ノベルバユーザー303849

第三話~シュールストレミングって開けると地獄だよね!添え~

 
 アリシアさんがまだ説明していたが早くレベル上げをしたいため、申し訳ないが途中で抜け出してダンジョンの入り口まで来ていた。
 冒険者ギルドからここまでは比較的近くにあり、広い城下町でも迷う事はなかった。
 早速ダンジョンに潜るとしますか!
 潜ろうとするとダンジョン入り口に立っている兵士に呼び止められる。 


「そこの少年ちょっと待ちたまえ。見馴れない顔だが、冒険者カードは持っているか?持っていないとダンジョンには潜れないぞ」


「冒険者カードなら持ってます。え~っと、はい、これですよね」


「ああ、見させてもらよ。ふむふむ………うん、問題無さそうだ。通っていいよ」 


「ありがとうございます」


 カードを返してもらい、そのままダンジョンへと入る。 


 ――もしこの時、兵士さんが僕を冒険者成り立てと気付き封印の事について注意していたならあの最悪は回避出来たのだろうか?
 そんな事を言ってもしょうがない事はわかってる。
 兵士さんには何も落ち度はないし、この時の僕が愚かだっただけ――


 ダンジョンの中に入った僕はとりあえず、一階である程度モンスターに慣れてから二階に行く事に決めた。
 さぁて、モンスターはどこかなぁ~と、早速発見。
 ゲル状の物体が地を這っている。
 おそらくスライムというやつだろう。
 本当にいるんだ、スライムって。
 この短剣で倒せるのか?とりあえず刺してみるしかないよなぁ。
 ズヌッ!接近する際、スライムは逃げようとズルズル後退していたが、スピードが遅すぎて簡単に刺すことができた。
 だけど、まだ動いてる。うおっ!?ゲル状のからだをアイスピックのように細く鋭い形に変化させて攻撃してきた。
 まぁ、動きがのろいので簡単に回避出来たんだけど。
 攻撃が効かないのか?そう言えば、ライトノベルとかでスライムを倒すとき核を壊すとか書いてあったけど……あった!本当にあったよ。水色の体とほぼ同色だったからわかりずらかったけど、真ん中に丸い核が確かにある。
 よぉし、あれを刺せばいいんだな。素早くスライムに近づいて真ん中の核目掛けて短剣を突き刺す。


 ガスッ!!先程刺したときとは違う感触を感じた。
 短剣を抜き取るとスライムの体は崩れ、光となって消えた。
 消えた跡の所には、水色の玉があった。 
 てにとってみる。おそらくスライムの素材だろう。冒険者ギルドで装備一式もらった時に一緒にもらっていた道具入れの為のアイテム袋に水色の玉を入れておく。
 このアイテム袋はレアリティーに応じて入れられる容量も変わってくるらしいけど、僕がもらったのは、レアリティーランクFのアイテム袋なのでゴブリン五体分の容量しか入らないとアリシアさんにもらう時に言われていた。
 まぁ、重さはアイテム袋自体の重さしか感じないし、入れている間は袋の中は時間が止まっているらしいので、物が痛まないしありがたいものだ。
 こんな便利なもの高いのではと恐る恐るアリシアさんに聞いてみたが、アイテム袋は簡単に魔法で作れるらしくランクが高いものでない限り安価で買えるらしい。
 まぁ、素材の持ち運びを簡単にできるのはありがたいし、この調子でモンスターを狩りますか!


 ――ピロリロリロリン。


 スライムを計六体倒したあと、軽妙な機械音が頭の中でなった。
 もしかしてと思い、ステータスを開いてみると、やはりレベルが上がりレベル2になっていた。
 素材も先程と同じ水色の玉が一つ、ビンに入ったスライムゼリーを4つ手に入れている。 
 だがこのペースではレベル20まで3ヶ月以上かかるかもしれない。 
 一階にはスライムしかいないみたいだし二階に行って別のモンスターを探すか。         


      
            ◇◇◇


  ~現在二階にて~


 な、何でこんなにモンスターがいるんだよ!? 


 ゴブリン。スライムと同じくらい弱いので有名なはずのモンスター。 
 その筈なのに仲間を呼びゴブリンが五体に増えた。
 ヤバいと思い逃げたんだけど逃げるところにモンスターがいて、追いかけてくるモンスターが倍近くになっている。 
 や、ヤバい。このままじゃ死んでしまう。そう言えば死んだらどうなるのか知らない。 
 ゲームみたいに蘇生魔法があるのか、それとも死んだら終わりなのか。どっちにしても死にたくない。 
 三階への道は先程発見したが、初心者で安全なのは一、二階と聴いていたので、通らなかったんだが、どうやらその道以外逃げ道がなくなったらしい。
 しょうがない。一旦逃げるために三階に行こう。
 モンスターさえ撒ければすぐに上の階へ行く。そうすればいいだけだ。うん、そうしよう!




            ◇◇◇


  ~現在十階~


 どうしてこうなった!
 どの階に降りてもモンスターを引き剥がせず、所謂モンスタートレインを後方に作ってしまった。
 無我夢中で十階まで降りて大きな扉を開けくぐり、閉めてモンスタートレインを分断するのに成功したはいいんだけど。


 …………今目の前にボスモンスターらしき三メートル程の牛人間がいます。
 これってミノタウロスってやつじゃね。よくゲームとかの序盤でボスとして登場するやつ。
 ………うん、僕ボス部屋に入っちゃったみたい。 
 うわぁぁあ、どうすんだよ!?どうすればいい!?


 ガチャガチャッ!閉めた扉を開けようとするけどロックされてる。
 やっぱり、ボスを倒すまで出れない感じのやつか!


「ブモォォオッ!!」 


 二足歩行の牛人間―ミノタウロスは、僕目掛けて突進してくる。
 危ねぇぇっ!!咄嗟に避けなかったら壁とミノタウロスに挟まれて潰れた蛙のようになるところだった。
 まず、レベル2の人間が相手になるようなモンスターではないのが見てわかる。しかし、逃げるにもどうすれば………んっ?部屋の奥、右と左の壁にそれぞれ人一人が通れるぐらいの穴が空いてある。
 もしかしたら脱出口かも、と僕はミノタウロスの猛追を必死に避けながら、とりあえず右の穴の方へ行ってみる。
 右の穴に近づいていくと中が見える。畳六畳分程のスペースがあり、真ん中に宝箱がある。
 あそこに入ればモンスターは入ってこれないし、宝箱の中に何か役に立つ物があるかもしれない。 
 しかし、右小部屋に入ろうとした瞬間、シャッターの様に岩壁が降りてきて中に入れなくなる。
「そ、そんなぁ」


 ショックで動きを止めたのがよくなかった。


「ヴゥモォォォオッ!!」


いつの間にか後方にミノタウロスが来ており、右手に持っている大斧を僕目掛けて振り下ろす。


―――ズガァァァアンッ!!


 咄嗟に左手に装備していた木の盾を構えながら横にジャンプしたのが、良かったみたいで、なんとか死なずにすんだんだけど……


「う、うわぁぁぁあっ!?痛い痛い痛いっ!!」


 斧がかすっただけだというのに木の盾は壊れ、僕の左腕は変な方向に曲がっていた。 
 ううぅっ!痛いっ!だけどこのまま寝転んで居ても殺されるだけ。 
 僕に深手を負わせた牛野郎はもう次の攻撃に移ろうと僕をロックオンしている。
 僕に残された最後の希望は左奥の穴だ。あそこに入れなければこの命はなくなる。
 そんなの嫌だ!ついさっきドブ川で溺れ死んだ様なものなのだ。
 それで今度はすぐに何にもできないで何にもわからない世界で死ぬ?冗談じゃないっ!!


 僕は生きるために痛む左腕を右手で支えながら、左の岩穴に向かって走る。
 だが痛めた左腕のせいか先程みたいに素早く動けない。
 後方から牛野郎がどんどん近づいているのがわかる。
 嫌だ、死にたくない!岩穴はもう目の前なんだ。
 左の岩穴の中も右と同じで畳六畳分ぐらいの小部屋みたいだ。
 違うのは、小部屋がボンヤリと光っているところ。
 なぜ光っているのか今の場所からはわからないが、そんな事はどうでもいい!岩穴よ閉じてくれるな!
 牛野郎の攻撃の気配を感じ僕は岩穴に向かって決死のヘッドダイブを敢行した。


 ダイブの瞬間目を瞑っていた僕は、目を開けると床に光る魔方陣がある小部屋にいた。どうやら岩壁は降りなかったようだ。


「ブモッ、ブモォウゥッ!!」


 ミノタウロスの体格じゃこの部屋に入れないらしく、僕を捕まえようと手を伸ばしてくるが部屋奥に行く事で難を逃れる。


 ふうぅ、と一息つく。どうにか命を繋いだようだ。 
 ミノタウロスは手を伸ばして捕まえるのは諦めたらしく、今は小部屋の入口で頭をかがませ僕をじっとみている。


 まぁ、この部屋にいる限り安全そうだ。
 周囲に目を向ける余裕が出てきたのか、僕はこの部屋の異様さに気付いた。
 魔方陣があるのは見えていたけど、真ん中に鍋の蓋がおいてあり、そこを中心にして魔方陣が光ってる。
 そして、入口から見て魔方陣の左前、右前にそれぞれ『この封印破るべからず』と書かれている立て看板が刺さってる。
 入口から見て正面の壁にもでかでかと『この鍋の蓋開けるべからず』と書かれている。 


 なるほど、この鍋の蓋と魔方陣は何らかを封印してるのか。




 ……………これって封印を解けってことじゃね?


 ボス部屋にわざとらしく封印部屋があるって、こういうときゲームならボスを倒すアイテムとかが眠ってたりするよな?
 それに注意書きが三回書いてある。この三回っていうのが重要だ。
 僕が尊敬するとある偉人は言いました。三回ダメと言ったら、良しの合図だと。
 つまりは鍋の蓋を開けろって事でオーケー?


 ―――ふんぬっ!さっそく鍋の蓋を開けようとするけど、地面に張り付いていてなかなか取れない。
 ぐぬぬっ!取れろぉぉぉおっ!!


 ―――すぽんっ!!


 鍋の蓋が抜けた勢いで後方に尻餅を着きながら、魔方陣の中心を見るけど何も起きない?
 いや、魔方陣がなんか高速で点滅してるんですけど。
 これってヤバくないですか?


 ――――ボカーン!!!!


 思った通り爆発したよ!
 けほっけほっ!爆発自体は大した威力じゃなかったけど、煙がすごくて前が見えない。
 だけど鍋の蓋があった場所に何かいる?


「お前か?あたちを解放したのは」


「だ、誰?」


「あたちか?」


 小部屋に充満していた煙が薄れていき、部屋の中心に現れた存在があきらかになる。


「あたちは勇者!人々はわたちのことを伝説のロリ勇者という!」


 そこに居たのは、勇者の格好をした幼稚園児ぐらいの小さな女の子だった。


「き、君が勇者?何かの冗談じゃ」


「おっ、お前ケガしてるのか。しょうがない、解放してくれた礼に治してやるよ」


 ぼくの話は聞かず、僕の左腕に手を当てると瞬く間に左腕が感知した。


「えっ、嘘!?な、何で!?」


「よしっ!これで借りは返したぞっ!じゃ、わたち急いでるから」


 やっぱり僕の言葉に返事はせず、急いで外に出ようとする。


「あ、危ないっ!!外にはミノタウロスがっ!」


「ブモォォオ!!!」


「んっ?邪魔」


「ブミョ!?」


 ………えっ!?………嘘だぁ。あんなに恐ろしかった牛野郎が幼女の裏拳一発で木っ端微塵になったんですけど!?
 なのに勇者を名乗った幼女は、振り返りもせずボス部屋の扉を通り去っていく。


 幼女が去り、しばらく呆然としたあと我に帰り辺りを見る。
 ミノタウロスが居た位置に大きな牛の角が落ちている。
 おそらく牛野郎のドロップアイテムだろう。
 ………いらないから放置したんだろうし、代わりにもらってもいいよね?と自分に言い聞かせながらアイテム袋にしまう。
 僕もボス部屋を出ようと思ったんだけど、右奥の穴の岩壁が無くなっている。たぶんボスモンスターを倒したからだ。
 ………まぁ、もったいないしね。もらえるもんはもらっておこう。
 みぎの小部屋に入り、宝箱を開けると、侍が着けていたような籠手が出てきた。
 先程のミノタウロスの攻撃で盾どころか革の手袋もズタボロになってしまったのでこれはありがたい。
 ――うん、しっくりくる。見た目重厚なのに軽くて手も動かしやすい。たぶんこれお高いやつだ。ラッキー。
 なんだか疲れたし、今日はもう外に出よう。
 だけど、十階から一階まで上がるのがヤバいぞ。
 びくびくしながらボス部屋から出てみたが、先程のモンスタートレインが嘘のようにいない。あるのは、モンスターが居た証であるドロップアイテムが道のように落ちているだけ。
 うわぁ、もしかしてあの子この数のモンスターを一人で倒したのか? 
 ミノタウロスといい大量のモンスターを倒した事といい、本当にあの子が言った通り勇者なのかもしれないと、ドロップアイテムを拾いながら思った僕である。 
 ドロップアイテムを拾い続けていたらいつの間にか一階の入口まで戻って来ていた。
 レアなアイテムはゲットできるし、ドロップアイテムも大量にゲットし、そのうえダンジョンから脱出できるのだから、本当にあの子のおかげだな。何だっけ?ロリ勇者?
 ロリ勇者様、様々だな。ありがとう、ロリ勇者!
 今日の晩ごはんは贅沢しちゃおうかなと考えながら、意気揚々と外に出る。 


「ぎゃあああっ、もう終わりだぁ!!」「伝説のロリ勇者が復活したぞー!!早く避難するんだ」「誰が封印解いたんだーっ!!」


 ―――外に出ると、街は混乱の最中。それもその筈。
 ここからでも見える城の尖塔にぽっかり大穴があいており、その、瓦礫が街に降り注いだみたいなのだ。
 な、なんだ!?隕石落下メテオストライクでも起きたのか!? 
 バカ王に落ちろとは思っていたけど、まさか城に落ちるとは!?
 勝手な事を思っていると、兵士がわらわらと僕を包囲する。


「!? な、なんですか急に!?」


「問答無用!」


 ぐえっ!?兵士の一人に腕をとられ、地面に叩き付けられた。


「元勇者メロリー·フラットパインの封印を解いた容疑で逮捕する!!」


 …………何ですとっ!?







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