四ツ葉のヒロイン候補達は幸福を届けてくれない
4話思春期妹はデレてくれない
夜の八時半を過ぎた頃、リビングには俺の姿しかない。
基本この時間帯だと、春香と愛秋がいることはあるのだがご存知の通り春香は風邪で寝込んでいる。 愛秋は風呂ナウか。
バラエティー番組に耳を傾けつつ、俺は洗濯物を一枚一枚丁寧に畳んでいた。
しかし……姉妹四人の洗濯を畳むのはやはり気がひけるな。 これがクラスの女子とかだとまたやったぜ! って思えるのだろうか? 特に下着とか出てきた時には半分目を瞑るまである、なんて良い男なんだ。 彼女くれ。
「ただいま」
静かに何かを確認するように少女が入ってくる。 ようやく帰ってきたか……この家の不良娘。
少し長めのボブカットに、ハート柄のピアスを開けて着崩した制服に短いスカート……それからこの時間帯に帰宅。 典型的な思春期だな。
四葉家四人姉妹の最後の一人、四葉冬華《よつばふゆか》は俺の姿を確認すると怪訝そうな眼差しを向ける。
「それアタシの下着……。 アタシの洗濯物は置いといてって言ったよね、変態」
開口一番に変態呼ばわりですか、そんなドMじゃないんですけど。 それも黒って……
「待て、俺はそんな話聞いてない」
「言った。 スマホで送った、なんで確認してないの?」
俺の手から下着を奪い、山積みの洗濯物から自分のモノと思われる衣服を取っていく冬華。
「なんでって……俺も洗い物とか洗濯とか家事で忙しかったから」
……たしかに送ってきてやがる、十分前に。
「冬華、お前この時間まで何してんだいつも。 学校終わるのもっと早いだろ」
「別にアンタに関係ない……アタシだって高校生なんだから少しぐらい友達と遊んだらしても良いじゃん!」
無論高校生ともなれば学校終わりに友達と遊ぶのは一種の青春かもしれない。
だが、この町栄えているわけでもなく俺達の住む住宅街の夜道は極めて危険だ。
とりあえずもう少し明るい時間に帰ってきてほしい。
「それよりなに? 説教してるわけ? 親でもないのに?」
「違う! 心配してるんだよ。 俺だけじゃない、他の奴らもお前の帰りが遅いっての心配してだな……」
「……嘘つき。 心配なんかしてない、アタシがどっかに行っちゃったって皆、アタシのこと心配なんかしてくれない!」
「してる……少なくともお前の帰りを待ってる」
声を荒げる冬華を落ち着かせようと、俺は優しくトーンを下げたが。
「そいう所が一番嫌い。 いつも良い顔見せて、ホントは何もアタシのこと理解してないくせに……バカ」
何も言い返せない俺に、居心地の悪さを感じたのか冬華は二階に上がってしまう。
「飯……」
「いらない」
勢いよく閉められたドアの音が耳に届く、俺はどうしたもんかと頭を掻いた。
「はーいい湯だったなぁ。 愉快や愉快……およ? 冬華帰ってきたん?」
呑気にタオルを首から掛けながら、愛秋が風呂から丁度上がってきた。
どうしてこうも双子で性格が変わってしまうのだろう。
「冬華ご飯食べないん?」
「いらねーってさ。 あーせっかく残しておいたのにもったいねぇな」
機嫌が悪いことは日常茶飯事だから、好物の肉でも食って機嫌良くして欲しかったが、いらないと言われたもの仕方がない。
「おぉーならあっしが食べるよ! 焼いて焼いて!」
目を輝かせながら愛秋は明日に飛び乗りトングをカチカチと鳴らす。
「お前、さっきたらふく食って吐きそうになってただろ……」
俺が呆れた調子でいうと指を横に振りながら得意げに言う。
「チッチッチ! 食後のお肉とデザートは別腹ってそれ一番言うから!」
聞いたことも言ったこともねぇ。
だが余ったお肉を保存してても量が量だけに使い道もないのでここは愛秋に消化してもらうか。
「冬華も年頃の女の子だからねぇ。 ゆーにぃ乙女心わからないし、機嫌が悪くなっても仕方ないよ」
「人の心を理解していないお前に言われたくねぇけどな」
「ひ、ひどい!? それが大好きな妹に言う言葉か!!!」
なら、お前の大好きなお兄ちゃんに何言ってんだ。
焼き上がった肉を愛秋の皿に乗せていく。
「かなり量あるけど食えるのか?」
「ふっふっふ。 あっしは冬華と一卵性の双子。 つまり、あっしと冬華は一心同体! それは即ち胃袋が二つあるってこと!!!」
「へー凄いなー」
棒読みで流しつつ俺も余った野菜を食べると愛秋は少し不機嫌になる。
「ゆーにぃのその興味なさげの表情を見ると、冬華がゆーにぃに強く当たるのも納得いくなー」
「お前の場合はどう反応すれば良いの困ってんだよ。 その発想力をもっと褒めやすいところで発揮してくれ」
……しかし、そんなに俺は人に関心がなさそうに見えるのか。 元から感情を表に出すのが得意じゃないが、改めてみようかな。
「愛秋は俺のことどう思ってるんだ?」
「んえ? あっしはゆーにぃのこと大好きだよ? 優しいし気を使うこともないしね!」
俺が聞きたいのはそいうことじゃなかったんだが、聞く人間違えたか。
「でも冬華もきっと同じ気持ちだよ? だって小さい頃はあっし達ずっとゆーにぃのお嫁さんになる!って言い合ってたもん!」
「子供の頃は平和だな……俺はお前たちがお嫁とか嫌だけどな」
良くある話だ。 
小さい子が『〇〇ね! 将来パパと結婚するの!』ってずっと言ってくれて仕事の疲れとか悩みがすっ飛ぶんだけど、大人になるにつれて娘ってのは離れていくんだよな。 お父さんも辛いよ。
そんなことしみじみ思っていると背後から何か壁を殴る音が聞こえた。
「愛秋? 変なこと言わないでくれる?」
……なんてこった、大変怒ってらっしゃる。
これ以上何も言うなと愛秋に口パクで言葉を送るも愛秋は全く聞いていない。
「またまたー小さい頃の昔話だよ! ほら、冬華いつも家族写真の時ゆーにぃの手握ってたじゃん? 大好きって言ってさ!」
「なッ! それは嘘!!! アタシは一度もそこのブサイクなんかのこと好きなんて思ったこと無いから!」
おっと冬華選手の渾身のストレートが僕のストライクゾーンど真ん中に決まりました。
「冬華は顔で選びすぎだよ! 恋はね中味なんだよ……それが長続きする秘訣さ! そう見ればゆーにぃはあっしの中じゃ一番だよ!」
遠回しにディスられた気もするんだが、よくわからない持論を持ちだしてきたなこいつ。
「あんたら兄妹じゃん……」
ごもっともです、でも俺はそんなこと一切思ってないからね。
「愛があれば、兄妹の壁なんて小さな問題さ! あっしとゆーにぃが愛し合えばどんな困難でも乗り越えられる……」
「いや、お前はちょっと……黙れよ!?」
「でもそんな深く考えなくても、あっし達とゆーにぃって《《本当の兄妹》》じゃないんだしさ!」
一瞬部屋が静まり返った気もするが、すぐに冬華のため息がその空間を打ち消した。
「……アホらし。 二人がどんな関係になろうがアタシには関係ないから……そこに巻き込まないで。 じゃ」
不愉快そうな眼差しを向けながら冬華の姿はまた消える。 あいつ何しに来たんだ一体。
まぁそれよりも先に目の前にいるやつに少し指導が必要なようだがな。
「お前……要らぬことをペチャクチャペチャクチャ話しやがって……。 悪いこと言う口はどの口だ!」
俺が手を伸ばしたところを軽く交わし、愛秋は自分の部屋の方へ逃げていく。
「アレは言葉のあやだよ! あっしなりのゆーにぃと冬華への気遣いで!」
「お前に日本語を教えたい……」
「……あ! そーいえば、今から友達と電話する予定だったんだっけ! ゆーにぃおやすみっ!」
逃げられた、愛秋の逃げ足だけはサバンナの動物並みだな。
それより、食ったものぐらい片付けろよ……。
俺は棚に置かれた写真たてを手に取る。
十年前の家族旅行でスキーに行った時の写真だ。 五人の子供達が並ぶ中で、小さな女の子がお兄ちゃんの手をギュッと握っている。
この頃は確かに冬華はずっと俺に甘えていたな。 それが今となっては……自立したと考えれば良いのか、それとも本当に嫌われたのか、寂しいな。
*
朝五時、アラームの音と共に俺は目を覚まし洗面所へと向かい顔を洗う。 意識がハッキリしてきたところでそのまま洗濯機の起動させ、キッチンへと足を進める。
俺の朝はとにかく早い。
朝ごはんの準備、弁当を作り、洗濯物を干す、朝の時間は息をつく暇もないぐらいに忙しい。 
しかし、今日は先客がいるようでキッチンに入ると冷蔵庫から光が漏れていた。
水色を基調とした水玉パジャマを着た、冬華は何やらゼリー状のモノを手に取るとこちらに気がついたようで。
「……おはよ」
「お、おぅ」
昨日の件もあってかどこか気まずい。
冬華はそのゼリーを食べるや否、すぐに部屋に戻ろうと俺の横を通り抜ける。
「昨日は……その、悪かった」
何も言わないと決め込んだはずなのに、俺の声は気がつけば自然に漏れていた。
すると階段手前で冬華が足を止める。
「別に、謝られることなんてされてない。 アタシまだ寝るから……おやすみ」
「おやすみ…………って聞こえてないか」
これが世にいうツンデレというものならどれだけ可愛く見えるだろうか。
現実は甘くない、アレはツン百パーセントの思春期少女だ。
それに加えてこの家にはあいつだけじゃなく、他にまだ三人いるんだよな。
それぞれ個性も特徴も好みも何もかも違ってその都度俺は困らされ。
休む暇もなく今日も一日始まるのか。
基本この時間帯だと、春香と愛秋がいることはあるのだがご存知の通り春香は風邪で寝込んでいる。 愛秋は風呂ナウか。
バラエティー番組に耳を傾けつつ、俺は洗濯物を一枚一枚丁寧に畳んでいた。
しかし……姉妹四人の洗濯を畳むのはやはり気がひけるな。 これがクラスの女子とかだとまたやったぜ! って思えるのだろうか? 特に下着とか出てきた時には半分目を瞑るまである、なんて良い男なんだ。 彼女くれ。
「ただいま」
静かに何かを確認するように少女が入ってくる。 ようやく帰ってきたか……この家の不良娘。
少し長めのボブカットに、ハート柄のピアスを開けて着崩した制服に短いスカート……それからこの時間帯に帰宅。 典型的な思春期だな。
四葉家四人姉妹の最後の一人、四葉冬華《よつばふゆか》は俺の姿を確認すると怪訝そうな眼差しを向ける。
「それアタシの下着……。 アタシの洗濯物は置いといてって言ったよね、変態」
開口一番に変態呼ばわりですか、そんなドMじゃないんですけど。 それも黒って……
「待て、俺はそんな話聞いてない」
「言った。 スマホで送った、なんで確認してないの?」
俺の手から下着を奪い、山積みの洗濯物から自分のモノと思われる衣服を取っていく冬華。
「なんでって……俺も洗い物とか洗濯とか家事で忙しかったから」
……たしかに送ってきてやがる、十分前に。
「冬華、お前この時間まで何してんだいつも。 学校終わるのもっと早いだろ」
「別にアンタに関係ない……アタシだって高校生なんだから少しぐらい友達と遊んだらしても良いじゃん!」
無論高校生ともなれば学校終わりに友達と遊ぶのは一種の青春かもしれない。
だが、この町栄えているわけでもなく俺達の住む住宅街の夜道は極めて危険だ。
とりあえずもう少し明るい時間に帰ってきてほしい。
「それよりなに? 説教してるわけ? 親でもないのに?」
「違う! 心配してるんだよ。 俺だけじゃない、他の奴らもお前の帰りが遅いっての心配してだな……」
「……嘘つき。 心配なんかしてない、アタシがどっかに行っちゃったって皆、アタシのこと心配なんかしてくれない!」
「してる……少なくともお前の帰りを待ってる」
声を荒げる冬華を落ち着かせようと、俺は優しくトーンを下げたが。
「そいう所が一番嫌い。 いつも良い顔見せて、ホントは何もアタシのこと理解してないくせに……バカ」
何も言い返せない俺に、居心地の悪さを感じたのか冬華は二階に上がってしまう。
「飯……」
「いらない」
勢いよく閉められたドアの音が耳に届く、俺はどうしたもんかと頭を掻いた。
「はーいい湯だったなぁ。 愉快や愉快……およ? 冬華帰ってきたん?」
呑気にタオルを首から掛けながら、愛秋が風呂から丁度上がってきた。
どうしてこうも双子で性格が変わってしまうのだろう。
「冬華ご飯食べないん?」
「いらねーってさ。 あーせっかく残しておいたのにもったいねぇな」
機嫌が悪いことは日常茶飯事だから、好物の肉でも食って機嫌良くして欲しかったが、いらないと言われたもの仕方がない。
「おぉーならあっしが食べるよ! 焼いて焼いて!」
目を輝かせながら愛秋は明日に飛び乗りトングをカチカチと鳴らす。
「お前、さっきたらふく食って吐きそうになってただろ……」
俺が呆れた調子でいうと指を横に振りながら得意げに言う。
「チッチッチ! 食後のお肉とデザートは別腹ってそれ一番言うから!」
聞いたことも言ったこともねぇ。
だが余ったお肉を保存してても量が量だけに使い道もないのでここは愛秋に消化してもらうか。
「冬華も年頃の女の子だからねぇ。 ゆーにぃ乙女心わからないし、機嫌が悪くなっても仕方ないよ」
「人の心を理解していないお前に言われたくねぇけどな」
「ひ、ひどい!? それが大好きな妹に言う言葉か!!!」
なら、お前の大好きなお兄ちゃんに何言ってんだ。
焼き上がった肉を愛秋の皿に乗せていく。
「かなり量あるけど食えるのか?」
「ふっふっふ。 あっしは冬華と一卵性の双子。 つまり、あっしと冬華は一心同体! それは即ち胃袋が二つあるってこと!!!」
「へー凄いなー」
棒読みで流しつつ俺も余った野菜を食べると愛秋は少し不機嫌になる。
「ゆーにぃのその興味なさげの表情を見ると、冬華がゆーにぃに強く当たるのも納得いくなー」
「お前の場合はどう反応すれば良いの困ってんだよ。 その発想力をもっと褒めやすいところで発揮してくれ」
……しかし、そんなに俺は人に関心がなさそうに見えるのか。 元から感情を表に出すのが得意じゃないが、改めてみようかな。
「愛秋は俺のことどう思ってるんだ?」
「んえ? あっしはゆーにぃのこと大好きだよ? 優しいし気を使うこともないしね!」
俺が聞きたいのはそいうことじゃなかったんだが、聞く人間違えたか。
「でも冬華もきっと同じ気持ちだよ? だって小さい頃はあっし達ずっとゆーにぃのお嫁さんになる!って言い合ってたもん!」
「子供の頃は平和だな……俺はお前たちがお嫁とか嫌だけどな」
良くある話だ。 
小さい子が『〇〇ね! 将来パパと結婚するの!』ってずっと言ってくれて仕事の疲れとか悩みがすっ飛ぶんだけど、大人になるにつれて娘ってのは離れていくんだよな。 お父さんも辛いよ。
そんなことしみじみ思っていると背後から何か壁を殴る音が聞こえた。
「愛秋? 変なこと言わないでくれる?」
……なんてこった、大変怒ってらっしゃる。
これ以上何も言うなと愛秋に口パクで言葉を送るも愛秋は全く聞いていない。
「またまたー小さい頃の昔話だよ! ほら、冬華いつも家族写真の時ゆーにぃの手握ってたじゃん? 大好きって言ってさ!」
「なッ! それは嘘!!! アタシは一度もそこのブサイクなんかのこと好きなんて思ったこと無いから!」
おっと冬華選手の渾身のストレートが僕のストライクゾーンど真ん中に決まりました。
「冬華は顔で選びすぎだよ! 恋はね中味なんだよ……それが長続きする秘訣さ! そう見ればゆーにぃはあっしの中じゃ一番だよ!」
遠回しにディスられた気もするんだが、よくわからない持論を持ちだしてきたなこいつ。
「あんたら兄妹じゃん……」
ごもっともです、でも俺はそんなこと一切思ってないからね。
「愛があれば、兄妹の壁なんて小さな問題さ! あっしとゆーにぃが愛し合えばどんな困難でも乗り越えられる……」
「いや、お前はちょっと……黙れよ!?」
「でもそんな深く考えなくても、あっし達とゆーにぃって《《本当の兄妹》》じゃないんだしさ!」
一瞬部屋が静まり返った気もするが、すぐに冬華のため息がその空間を打ち消した。
「……アホらし。 二人がどんな関係になろうがアタシには関係ないから……そこに巻き込まないで。 じゃ」
不愉快そうな眼差しを向けながら冬華の姿はまた消える。 あいつ何しに来たんだ一体。
まぁそれよりも先に目の前にいるやつに少し指導が必要なようだがな。
「お前……要らぬことをペチャクチャペチャクチャ話しやがって……。 悪いこと言う口はどの口だ!」
俺が手を伸ばしたところを軽く交わし、愛秋は自分の部屋の方へ逃げていく。
「アレは言葉のあやだよ! あっしなりのゆーにぃと冬華への気遣いで!」
「お前に日本語を教えたい……」
「……あ! そーいえば、今から友達と電話する予定だったんだっけ! ゆーにぃおやすみっ!」
逃げられた、愛秋の逃げ足だけはサバンナの動物並みだな。
それより、食ったものぐらい片付けろよ……。
俺は棚に置かれた写真たてを手に取る。
十年前の家族旅行でスキーに行った時の写真だ。 五人の子供達が並ぶ中で、小さな女の子がお兄ちゃんの手をギュッと握っている。
この頃は確かに冬華はずっと俺に甘えていたな。 それが今となっては……自立したと考えれば良いのか、それとも本当に嫌われたのか、寂しいな。
*
朝五時、アラームの音と共に俺は目を覚まし洗面所へと向かい顔を洗う。 意識がハッキリしてきたところでそのまま洗濯機の起動させ、キッチンへと足を進める。
俺の朝はとにかく早い。
朝ごはんの準備、弁当を作り、洗濯物を干す、朝の時間は息をつく暇もないぐらいに忙しい。 
しかし、今日は先客がいるようでキッチンに入ると冷蔵庫から光が漏れていた。
水色を基調とした水玉パジャマを着た、冬華は何やらゼリー状のモノを手に取るとこちらに気がついたようで。
「……おはよ」
「お、おぅ」
昨日の件もあってかどこか気まずい。
冬華はそのゼリーを食べるや否、すぐに部屋に戻ろうと俺の横を通り抜ける。
「昨日は……その、悪かった」
何も言わないと決め込んだはずなのに、俺の声は気がつけば自然に漏れていた。
すると階段手前で冬華が足を止める。
「別に、謝られることなんてされてない。 アタシまだ寝るから……おやすみ」
「おやすみ…………って聞こえてないか」
これが世にいうツンデレというものならどれだけ可愛く見えるだろうか。
現実は甘くない、アレはツン百パーセントの思春期少女だ。
それに加えてこの家にはあいつだけじゃなく、他にまだ三人いるんだよな。
それぞれ個性も特徴も好みも何もかも違ってその都度俺は困らされ。
休む暇もなく今日も一日始まるのか。
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