俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる
握り飯配給後
「それにしてもコルト、物作り以外の仕事もしてくれて助かるわ。効率のいい仕事はみんなにも有り難いことだろうからな」
「うん。でもウォック君も手伝ってくれてるから、それでおにぎりの配給は早く終わることが出来たんですよ?」
こいつがうどんを欲しがったのは昨日の話だぞ?
一夜明けてこの変化か。
ま、人それぞれだ。
世界が違えば自分の主義主張をどう扱うかも違ってくるんだろ、きっと。
けどな。
「そこまでしてうどんが欲しいのか?」
「……握り飯、一個もらったからいいよ」
随分態度が変わったな。殊勝なことを言ってくれる。
もっともこっちに面倒がかからなければどうでもいいが。
「よう、手は空いたかい?」
さっきの男戦士だ。
まぁ何度も俺の顔を見れば、近しい思いも持つようになるんだろう。
残念ながらこっちはそっちの顔を覚える余裕はないんだからな?
「それと、そっちの嬢ちゃんも随分血色がよくなったな。……ちと痩せたか?」
「えーと……あ、ひょっとして」
コルトとこの男、急に和み始めやがった。
顔見知りか?
「あの時はお世話になりました。あの後コウジさんのおかげでこうして元気で、ここで頑張ってます」
おいこら。
俺の知らない所で俺を巻き込むな。
「うん、知ってる。『働かせてください!』って言ってた時もいたからな。うどん啜ってるのも見たぞ?」
ストーカーか何かか? この男。
つか、そんなに入り浸るなよ。
「あ、コウジさんは覚えてないですか? 私を助けてくれた方ですよ。私をここに連れて来てくれた方」
「あぁ、そんな奴いたっけな。けど顔も装備の特徴も覚えてねえな」
「はは、無理もないさ。けど、俺もこれから先、しょっちゅうここに出入りするからよろしくな」
地元に帰る気はないって宣言しちゃってるよ。
俺よりもここの主づらするんじゃないだろうな?
「しょっちゅうって……何かあったんですか?」
「俺がいたダンジョンで、退路が塞がっちまってな。穴をあける作業をしてるんだが、奥の方からちと手に負えない魔物がやって来るんだよ。行き止まりとここの扉までの距離が意外とあってな。避難場所に使わせてもらうわ」
「もちろんですよ。ね? コウジさん」
決定権まで奪われそうになってるよ。
俺、この建物の世帯主なんだけど?
「いたいなら勝手にいりゃいいさ。出ていきたいなら出て行けばいいし。引き留めも追い出しもしねぇよ。この部屋を壊そうとしない限りな」
「そりゃ有り難い。んじゃしばらく隅で休ませてもらうよ」
命の危機に遭遇することがなくても、このようにここに出入りする者もいる。
そうなる可能性が高い場合がそうらしい。
「なぁ兄ちゃん……コウジ、さん?」
俺の袖を引っ張る奴が……って、コボルト少年、まだいたか。
「なんだよ」
「コルト姉ちゃんが昨日もらってた、ノートと書くものが欲しいんだけど……」
「ノートとペン? 食えるもんじゃねえぞ?」
「うん、それは分かってる」
コルトが触れている物を欲しがってるのか?
何でもかんでも欲しがるってのは問題だぞ?
「あ、俺が欲しいんじゃなくて、みんなに書いてもらえるようにって」
「なんだそりゃ? まぁ俺がそれを管理しなくてもいいなら別に構わんけどな」
しかしこれまたどういう心境の変化だ?
「おにぎり渡してるときに気付いたんだけど、姉ちゃんと俺に話しかける人達がいるんだよ」
まぁいるだろうな。
みんな無口のまま行列に並んで握り飯と水を受け取って立ち去る。
そんなの見たら、逃げ出したくなるくらい怖いわ。
「何て言うか……聞いてるうちにくたびれるんだよ。俺も人のこと言えないんだけど……愚痴と自慢話だけなんだよ。ってことは……」
ってことは?
「みんな、何かを話したくて、それを分かってもらいたいと思うんだ。けど別の世界から来た人がほとんどだろ? 聞いてはくれるけど分かってもらえることもあるからから寂しいんだと思うんだ」
「その相手の代わりにノートに書いてもらうってのか。ふむ」
コルトのノートは、いずれどこかで何かの役に立たせるための記録の意味で使ってもらうつもりでいたんだが、それとは目的は別だよな。
まぁたまったものを吐き出せば、ここから出て地元に帰る気力も新たに湧き出るってこともあるか?
「いいだろ。じゃあそのための小さいテーブルとかも用意しとくか」
コルトと男戦士は何かまだ話で盛り上がっている。
別にいいんだけど、珍しくも同じ世界からやって来たということで話が合うんだろうな。
でも同じ世界であって同じ国って訳じゃないから、そんなに話す内容もあるとは思えんが。
ま、いっか。
「うん。でもウォック君も手伝ってくれてるから、それでおにぎりの配給は早く終わることが出来たんですよ?」
こいつがうどんを欲しがったのは昨日の話だぞ?
一夜明けてこの変化か。
ま、人それぞれだ。
世界が違えば自分の主義主張をどう扱うかも違ってくるんだろ、きっと。
けどな。
「そこまでしてうどんが欲しいのか?」
「……握り飯、一個もらったからいいよ」
随分態度が変わったな。殊勝なことを言ってくれる。
もっともこっちに面倒がかからなければどうでもいいが。
「よう、手は空いたかい?」
さっきの男戦士だ。
まぁ何度も俺の顔を見れば、近しい思いも持つようになるんだろう。
残念ながらこっちはそっちの顔を覚える余裕はないんだからな?
「それと、そっちの嬢ちゃんも随分血色がよくなったな。……ちと痩せたか?」
「えーと……あ、ひょっとして」
コルトとこの男、急に和み始めやがった。
顔見知りか?
「あの時はお世話になりました。あの後コウジさんのおかげでこうして元気で、ここで頑張ってます」
おいこら。
俺の知らない所で俺を巻き込むな。
「うん、知ってる。『働かせてください!』って言ってた時もいたからな。うどん啜ってるのも見たぞ?」
ストーカーか何かか? この男。
つか、そんなに入り浸るなよ。
「あ、コウジさんは覚えてないですか? 私を助けてくれた方ですよ。私をここに連れて来てくれた方」
「あぁ、そんな奴いたっけな。けど顔も装備の特徴も覚えてねえな」
「はは、無理もないさ。けど、俺もこれから先、しょっちゅうここに出入りするからよろしくな」
地元に帰る気はないって宣言しちゃってるよ。
俺よりもここの主づらするんじゃないだろうな?
「しょっちゅうって……何かあったんですか?」
「俺がいたダンジョンで、退路が塞がっちまってな。穴をあける作業をしてるんだが、奥の方からちと手に負えない魔物がやって来るんだよ。行き止まりとここの扉までの距離が意外とあってな。避難場所に使わせてもらうわ」
「もちろんですよ。ね? コウジさん」
決定権まで奪われそうになってるよ。
俺、この建物の世帯主なんだけど?
「いたいなら勝手にいりゃいいさ。出ていきたいなら出て行けばいいし。引き留めも追い出しもしねぇよ。この部屋を壊そうとしない限りな」
「そりゃ有り難い。んじゃしばらく隅で休ませてもらうよ」
命の危機に遭遇することがなくても、このようにここに出入りする者もいる。
そうなる可能性が高い場合がそうらしい。
「なぁ兄ちゃん……コウジ、さん?」
俺の袖を引っ張る奴が……って、コボルト少年、まだいたか。
「なんだよ」
「コルト姉ちゃんが昨日もらってた、ノートと書くものが欲しいんだけど……」
「ノートとペン? 食えるもんじゃねえぞ?」
「うん、それは分かってる」
コルトが触れている物を欲しがってるのか?
何でもかんでも欲しがるってのは問題だぞ?
「あ、俺が欲しいんじゃなくて、みんなに書いてもらえるようにって」
「なんだそりゃ? まぁ俺がそれを管理しなくてもいいなら別に構わんけどな」
しかしこれまたどういう心境の変化だ?
「おにぎり渡してるときに気付いたんだけど、姉ちゃんと俺に話しかける人達がいるんだよ」
まぁいるだろうな。
みんな無口のまま行列に並んで握り飯と水を受け取って立ち去る。
そんなの見たら、逃げ出したくなるくらい怖いわ。
「何て言うか……聞いてるうちにくたびれるんだよ。俺も人のこと言えないんだけど……愚痴と自慢話だけなんだよ。ってことは……」
ってことは?
「みんな、何かを話したくて、それを分かってもらいたいと思うんだ。けど別の世界から来た人がほとんどだろ? 聞いてはくれるけど分かってもらえることもあるからから寂しいんだと思うんだ」
「その相手の代わりにノートに書いてもらうってのか。ふむ」
コルトのノートは、いずれどこかで何かの役に立たせるための記録の意味で使ってもらうつもりでいたんだが、それとは目的は別だよな。
まぁたまったものを吐き出せば、ここから出て地元に帰る気力も新たに湧き出るってこともあるか?
「いいだろ。じゃあそのための小さいテーブルとかも用意しとくか」
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