勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第51話、必殺剣
◆ ◆ ◆
愛馬に跨がる私は、感覚鋭敏化の応用、闘気を相手に瞬間的に叩きつける威圧を放ち、同じくパッカラに乗るガスターズの一人を気絶させる。
続けて右側からハイハウンドに乗り槍で突き攻撃をしてきた一人を、大剣で軌道をずらし返す刃で打ち倒す。
そこで私の近くで戦闘をしていた副隊長であるチャールストンが、私と並走するようにパッカラを走らせ出した。
「カザン連隊長、左翼前方の敵に動きが」
感覚鋭敏化の闘気領域はステージ3で約半径50メートルまで伸ばす事が出来るようになるが、チャールストンは魔力回路のステージ3の解放のその上、上限突破を果たしており、固有スキルである探索で半径200メートルの敵を探る事が出来るようになっている。
そんな部隊の目となってくれているチャールストンの進言を得て、私は肉体意志力増強で肉体の強化である、瞳に闘気を纏わせ眼力を上げる。
見えるのは、パッカラに跨がるガスターズの一団。その数八名。
そしてその者達が手にするのは、大きく長いトゲトゲが付いた鎖。
恐らくキャラバン隊の前方に回り込み、その鎖をばら撒きこちらの足を止める工作部隊なのだろうが——させるか。
「チャールストン、エクセルサ、私に続け! 」
「「はい」」
チャールストンと同じく私の近くで戦闘をしていたエクセルサを引き連れた私は、パッカラの速度を上げ一度乱戦となっている戦闘区域から離脱をする。
野放しにしていたら厄介な飛竜を、作戦通りシグナがやってくれた。
そしてシグナが買っていたアルドくんも、あの剣士を相手によくやってくれている。
急がねば、シグナは多くの魔力を使用しただろうし、アルドくんはギリギリの戦いかもしれないから。
私達が荒野の蜥蜴の首領であるアッガスを見つけ出し、捕縛もしくは討伐しなくては。
みんなが頑張ってくれているのに、その努力を無駄にはさせない。
こちらに気付いた前方のガスターズ達が、弓矢を構えるのが見える。その一人一人の動きを、筋肉の伸縮から矢の角度までを見て軌道を読むと、次々と放たれる矢をパッカラを操り躱していく。
そして敵に接近した私は、馬上のため威力は半減してしまうが剣に闘気を乗せた必殺の突き、驀進悪鬼羅刹で敵の一人を倒す。
大牙の異名を持つエクセルサも、肉体意志力増強のもう一つの特性、意志力の増強、すなわち闘気の変換で電撃となった闘気を剣に纏わせ敵を屠る。
そして私達三人はガスターズの一人、また一人と倒していき、工作部隊を殲滅する事に成功した。
とその時、視界に違和感を感じとる。
そこで視力を再度強化して敵のパッカラ達があげる土煙の中を注視していると——見つけた!
あのアーマーホースに乗るのは、手配書のアッガスで間違いない。
「チャールストン、エクセルサ、このまま敵陣へ突撃するぞ! 」
◆ ◆ ◆
お姉ちゃんはアルドさんに言われた事を忠実に守るようにして、ガスターズへ向けて矢を射っている。それだけアルドさんを信頼しているんだろうけど——
ボクはアルドさんとミフネと名乗った老剣士の戦いを、御者台からこっそり覗いていたから知っている。あのミフネはかなり強いと。
だから心配で心配で堪らない。
「アルドさん、大丈夫ですか? 」
「ああ、ただしエル、戦いはまだ続いている」
「えっ」
「だから勝負がつくまではそこで待機をしていてくれ」
言われてアルドさんの奥、後方を見れば、ミフネが荷馬車の上に飛び移ってきた所であった。
そしてミフネは不敵に笑う。
「ふふっ、さっきの攻撃であばらを何本かやってしまったようだ。まあ、これぐらいなら分泌されているアドレナリンでどうとでもなるがな」
そこでミフネは半身になり刀を頭上高くへ掲げる、上段の構えをとる。
「手数をかけ斬り合う時間は終わった。ゆえに次の一撃で勝負を決めてやる」
そしてその構えのまま、足の指で前進をしてくるようなゆっくりとした早さで間合いを詰め始めた。
「拙者の必殺剣、一刀両断を喰らうがよい」
それからミフネは一言も話さない。ただジリジリと間合いを詰めてくるのみ。
伝わってくる、ミフネの凄味が。
ただ見ているだけなのに、息苦しくなる。
そしてその時が訪れる。
アルドさんとミフネの間合い。
先に振り下ろされる刀。
対するアルドさんは、その攻撃をメイスで受け止めようとしている。
『スパンッ』
しかしアルドさんのメイスは、バターのように綺麗に斬られてしまった。
そしてあがる血飛沫。
やっ、やられてしまった!
ミフネが振り下ろした先にあったアルドさんの身体が、袈裟斬りで斬られている。
しかし次の瞬間、状況が分からなくて思考が停止してしまう。
あの眩い複数の光球、たしか!?
そう、アルドさんの魔法、神聖降臨弾だ。
放たれた光球が、次から次へとミフネに当たっていく。
人には無害って教えて貰った記憶があるけど、何故?
しかしすぐに疑問は解ける。その当たった反動でミフネがよろけたから。
そしてその僅かに出来た隙に、アルドさんの後ろ回し蹴りが炸裂。
たしか相手はあばらが折れてるって言っていたはず。そこへ腕でガードしているとは言え、怪力なアルドさんの蹴りが当たったって事は!?
再び荷馬車から放り出されたミフネは、今度こそ背中から地面に到達。そう、ジャンプする事なく転がっていく。
やった、ミフネを退けたぞ!
そっ、それよりアルドさんの傷は!?
「アルドさん、大丈夫なんですか? 」
荷馬車の上に駆け上がったボクは、アルドさんに手を貸そうとする。
「あぁ、大丈夫だ。予めカウンターヒールを唱えていたからな、傷はつけられた瞬間元通りに完治している」
「よっ、良かったです」
そこでホッと胸を撫で下ろしていると——ええぇ!
左から右へと炎の塊が飛んでくるのが見えた。
そしてその直撃を受けた前方を走っていた荷馬車の一台が、まるで爆発をしたかのようにして盛大に吹き飛ぶ。
あっ、あれって!?
まさかこんなところで、遭遇するだなんて。
翼を広げキャラバン隊と並走するかのよう地面すれすれを飛行しているのは、巨大な体躯を真っ赤に染めた竜、レッドドラゴンであった。
愛馬に跨がる私は、感覚鋭敏化の応用、闘気を相手に瞬間的に叩きつける威圧を放ち、同じくパッカラに乗るガスターズの一人を気絶させる。
続けて右側からハイハウンドに乗り槍で突き攻撃をしてきた一人を、大剣で軌道をずらし返す刃で打ち倒す。
そこで私の近くで戦闘をしていた副隊長であるチャールストンが、私と並走するようにパッカラを走らせ出した。
「カザン連隊長、左翼前方の敵に動きが」
感覚鋭敏化の闘気領域はステージ3で約半径50メートルまで伸ばす事が出来るようになるが、チャールストンは魔力回路のステージ3の解放のその上、上限突破を果たしており、固有スキルである探索で半径200メートルの敵を探る事が出来るようになっている。
そんな部隊の目となってくれているチャールストンの進言を得て、私は肉体意志力増強で肉体の強化である、瞳に闘気を纏わせ眼力を上げる。
見えるのは、パッカラに跨がるガスターズの一団。その数八名。
そしてその者達が手にするのは、大きく長いトゲトゲが付いた鎖。
恐らくキャラバン隊の前方に回り込み、その鎖をばら撒きこちらの足を止める工作部隊なのだろうが——させるか。
「チャールストン、エクセルサ、私に続け! 」
「「はい」」
チャールストンと同じく私の近くで戦闘をしていたエクセルサを引き連れた私は、パッカラの速度を上げ一度乱戦となっている戦闘区域から離脱をする。
野放しにしていたら厄介な飛竜を、作戦通りシグナがやってくれた。
そしてシグナが買っていたアルドくんも、あの剣士を相手によくやってくれている。
急がねば、シグナは多くの魔力を使用しただろうし、アルドくんはギリギリの戦いかもしれないから。
私達が荒野の蜥蜴の首領であるアッガスを見つけ出し、捕縛もしくは討伐しなくては。
みんなが頑張ってくれているのに、その努力を無駄にはさせない。
こちらに気付いた前方のガスターズ達が、弓矢を構えるのが見える。その一人一人の動きを、筋肉の伸縮から矢の角度までを見て軌道を読むと、次々と放たれる矢をパッカラを操り躱していく。
そして敵に接近した私は、馬上のため威力は半減してしまうが剣に闘気を乗せた必殺の突き、驀進悪鬼羅刹で敵の一人を倒す。
大牙の異名を持つエクセルサも、肉体意志力増強のもう一つの特性、意志力の増強、すなわち闘気の変換で電撃となった闘気を剣に纏わせ敵を屠る。
そして私達三人はガスターズの一人、また一人と倒していき、工作部隊を殲滅する事に成功した。
とその時、視界に違和感を感じとる。
そこで視力を再度強化して敵のパッカラ達があげる土煙の中を注視していると——見つけた!
あのアーマーホースに乗るのは、手配書のアッガスで間違いない。
「チャールストン、エクセルサ、このまま敵陣へ突撃するぞ! 」
◆ ◆ ◆
お姉ちゃんはアルドさんに言われた事を忠実に守るようにして、ガスターズへ向けて矢を射っている。それだけアルドさんを信頼しているんだろうけど——
ボクはアルドさんとミフネと名乗った老剣士の戦いを、御者台からこっそり覗いていたから知っている。あのミフネはかなり強いと。
だから心配で心配で堪らない。
「アルドさん、大丈夫ですか? 」
「ああ、ただしエル、戦いはまだ続いている」
「えっ」
「だから勝負がつくまではそこで待機をしていてくれ」
言われてアルドさんの奥、後方を見れば、ミフネが荷馬車の上に飛び移ってきた所であった。
そしてミフネは不敵に笑う。
「ふふっ、さっきの攻撃であばらを何本かやってしまったようだ。まあ、これぐらいなら分泌されているアドレナリンでどうとでもなるがな」
そこでミフネは半身になり刀を頭上高くへ掲げる、上段の構えをとる。
「手数をかけ斬り合う時間は終わった。ゆえに次の一撃で勝負を決めてやる」
そしてその構えのまま、足の指で前進をしてくるようなゆっくりとした早さで間合いを詰め始めた。
「拙者の必殺剣、一刀両断を喰らうがよい」
それからミフネは一言も話さない。ただジリジリと間合いを詰めてくるのみ。
伝わってくる、ミフネの凄味が。
ただ見ているだけなのに、息苦しくなる。
そしてその時が訪れる。
アルドさんとミフネの間合い。
先に振り下ろされる刀。
対するアルドさんは、その攻撃をメイスで受け止めようとしている。
『スパンッ』
しかしアルドさんのメイスは、バターのように綺麗に斬られてしまった。
そしてあがる血飛沫。
やっ、やられてしまった!
ミフネが振り下ろした先にあったアルドさんの身体が、袈裟斬りで斬られている。
しかし次の瞬間、状況が分からなくて思考が停止してしまう。
あの眩い複数の光球、たしか!?
そう、アルドさんの魔法、神聖降臨弾だ。
放たれた光球が、次から次へとミフネに当たっていく。
人には無害って教えて貰った記憶があるけど、何故?
しかしすぐに疑問は解ける。その当たった反動でミフネがよろけたから。
そしてその僅かに出来た隙に、アルドさんの後ろ回し蹴りが炸裂。
たしか相手はあばらが折れてるって言っていたはず。そこへ腕でガードしているとは言え、怪力なアルドさんの蹴りが当たったって事は!?
再び荷馬車から放り出されたミフネは、今度こそ背中から地面に到達。そう、ジャンプする事なく転がっていく。
やった、ミフネを退けたぞ!
そっ、それよりアルドさんの傷は!?
「アルドさん、大丈夫なんですか? 」
荷馬車の上に駆け上がったボクは、アルドさんに手を貸そうとする。
「あぁ、大丈夫だ。予めカウンターヒールを唱えていたからな、傷はつけられた瞬間元通りに完治している」
「よっ、良かったです」
そこでホッと胸を撫で下ろしていると——ええぇ!
左から右へと炎の塊が飛んでくるのが見えた。
そしてその直撃を受けた前方を走っていた荷馬車の一台が、まるで爆発をしたかのようにして盛大に吹き飛ぶ。
あっ、あれって!?
まさかこんなところで、遭遇するだなんて。
翼を広げキャラバン隊と並走するかのよう地面すれすれを飛行しているのは、巨大な体躯を真っ赤に染めた竜、レッドドラゴンであった。
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