勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第50話、見える世界
◆ ◆ ◆
おでは盲目の覇者なんて呼ばれているけど、てんで大した事はない。
ガスターズの一人が、自身が乗るパッカラからこちらの荷馬車に飛び移ろうとして来た。
起動させている感覚鋭敏化の闘気領域を狭める。そうする事で視覚の代わりに脳内に直接映像がより鮮明に見える状態にして、おでが持つ槍で正確に敵を串刺しにし、そのまま地面へと投げ捨てた。
そしておでは残忍だ。
これまで、戦場とは関係ない多くの逃げ惑う色を奪ってきた。でもそれが嫌で嫌で堪らなかった。
だから五つの王国を束ね大陸で一二を争う大国である帝国ディバイナーに属する、第十三部隊から危険をかえりみず一人逃れてきたのだけど——
いつかは追っ手に自身の色を奪われるかも知れないけど、この色が消えるまではもう関係ない色は消さないと心に決めた。
この生き方に、後悔はない。
人間には色がある。それは主となる魔力回路の色。
おでは目が見えないが、心の目でこの色がはっきりと見る事が出来る。
そして単色でなくて複数の色を持つ者が時々いる。それは魔力回路が一つだけでなくて、複数個機能しているからだ。
そしてそして稀に、七つの魔力回路全てが機能している者がいる。
キャラバン隊の真ん中あたりまで移動してきた剣士を迎え討とうとしている、確かアルドと呼ばれている人物。
若いのに、七色に輝いているとは。
また二人は武器にも闘気を纏わせているから、その動きが事細かに伝わってくる。
そして剣士は武器に纏わせている闘気を、極限にまで研ぎ澄ませている。それは固有スキルまで昇華されている事を意味し、一太刀一太刀が必殺の一撃となっている。
そんな強烈な一撃は、主となる魔力回路が生存維持本能で同じく極限までに鍛えた闘気と同程度の優れた武器でないと受け止めれないはず。
しかし恐らく主が生存維持本能じゃないアルドがメイスで受け切れているのは、恐らく生存維持本能が高い水準で機能しておりかつ武器に何かしらのエンチャントをかけているからのはず。
しかもアルド、剣士のあの怒涛の攻撃を魔力回路の余計な揺らぎを見せる事もなく、そのことごとくを受け切るとは。
そこで一度剣士が間合いを取るため、重心が後ろへと傾く。これは剣士の呼吸切れ。あの研ぎ澄まされた攻撃を連続で行ったがための僅かな隙。
しかしアルドはその僅かな隙を見逃さなかった。間合いを取ろうとした瞬間、すぐさま前進をする。
剣士と同じく、今すぐにでも呼吸をしたいだろうに。
アルドは鉄の心臓の持ち主。
そしてメイスでの乱撃の後、一拍を置いて渾身の一撃。その一撃も剣士の刀に完全に防がれるも、その凄まじい威力で剣士を後方へ大きく吹き飛ばす事に成功した。
そうしてその威力で荷馬車からその身を放り出される形になった剣士は、身を捻り流れる地面へ足から降り立つと、信じられないけど咄嗟にジャンプをして後方を走っていた荷馬車の一つに頭から飛び込む。
第一回戦目はアルドの勝利だ。
しかしこのままで剣士も黙っていないはず。
とそこで展開していた闘気領域が上空に異変を感じとる。
これは……飛竜か。
◆ ◆ ◆
鋭い刃がある斬撃面と、ドラゴンの堅い鱗で作られた殴打面がある魔竜長剣。その魔竜長剣の殴打面を右から左へ鋭く振るう。
その攻撃を剣で受けようとしたガスターズの一人が、その威力を見誤ったのだろう。
受けきれずに吹き飛ばされて地面を転がっていく。
しかしあの魔力回路を機能させた戦い方を見せる剣士は、どこぞの名のある剣士のはず。
そんなのを相手にするアルドを助けに行きたいのはやまやまなんだが、ガスターズ、みんながみんな捨て身の攻撃をしてくるため、ガスターズ達の勢いに負けて隊列が右へ押されてしまっている。
アルド、あと少し踏ん張ってくれ、そしたら助けに行けるから。
「シグー、あれあれ」
シグナのすぐ近くで戦っているシャルルが、上空を指差して叫んでいた。
「あぁ、わかっている」
まだ遥か上空だが、ここで情報通りの飛竜が出てくるとは。
あの巨体が急降下してきて鉤爪で攻撃されたら、荷馬車はひとたまりもないだろう。
空中戦を出来るのは特務部隊ではシグナだけ。そう、双頭の魔竜を討伐した時のように、俺がやらなければならない。
アルド、前言撤回。今しばらく待ってくれ。
新たに現れたガスターズの一人がパッカラからジャンプをしてこちらへ飛び乗ってきた。そいつを殴打面で攻撃をして武器を弾くと、返す斬撃面の刃で胴を斬る。
「シャルル、相手は死に物狂いだ。俺が戻って来るまで、決して無理をするなよ」
「りょーかい! 」
「じゃ、ちょっと行ってくる」
脳筋状態が解除されてしまうが、仕方がない。シグナは唯一使える高速移動魔法の呪文の詠唱にとりかかる。また呪文の詠唱と同時進行で魔力を消費して、足首に取り付けている輪っか型の風の魔具を起動させる。
そうする事で、地を踏み締めるように空中を蹴り——
縦に流れる景色。
眼下のキャラバン隊があっという間に小さくなっていく。
そうして強烈な風切り音が耳へと届く中、一気に飛竜の元へと駆け上がっていき——
凄まじいスピードの中で両腕でしっかりと握り締めた魔竜長剣を飛竜へと狙いを定め、今まさに唱え終えた呪文を口にする。
「突風系高等魔法! 」
瞳がまばたきをして目蓋を上げるまでの刹那の間で、シグナは飛竜の脇を通り抜けていた。
魔竜長剣が通過したであろう飛竜の腹部部分は、派手に肉が吹き飛び背骨が外気にさらされる。
そして飛竜は、糸の切れた人形のように落下を開始した。
同じく自由落下していたシグナは風の魔具を使い空中を蹴ると、戦闘中のシャルルの元へと舞い戻っていくのであった。
おでは盲目の覇者なんて呼ばれているけど、てんで大した事はない。
ガスターズの一人が、自身が乗るパッカラからこちらの荷馬車に飛び移ろうとして来た。
起動させている感覚鋭敏化の闘気領域を狭める。そうする事で視覚の代わりに脳内に直接映像がより鮮明に見える状態にして、おでが持つ槍で正確に敵を串刺しにし、そのまま地面へと投げ捨てた。
そしておでは残忍だ。
これまで、戦場とは関係ない多くの逃げ惑う色を奪ってきた。でもそれが嫌で嫌で堪らなかった。
だから五つの王国を束ね大陸で一二を争う大国である帝国ディバイナーに属する、第十三部隊から危険をかえりみず一人逃れてきたのだけど——
いつかは追っ手に自身の色を奪われるかも知れないけど、この色が消えるまではもう関係ない色は消さないと心に決めた。
この生き方に、後悔はない。
人間には色がある。それは主となる魔力回路の色。
おでは目が見えないが、心の目でこの色がはっきりと見る事が出来る。
そして単色でなくて複数の色を持つ者が時々いる。それは魔力回路が一つだけでなくて、複数個機能しているからだ。
そしてそして稀に、七つの魔力回路全てが機能している者がいる。
キャラバン隊の真ん中あたりまで移動してきた剣士を迎え討とうとしている、確かアルドと呼ばれている人物。
若いのに、七色に輝いているとは。
また二人は武器にも闘気を纏わせているから、その動きが事細かに伝わってくる。
そして剣士は武器に纏わせている闘気を、極限にまで研ぎ澄ませている。それは固有スキルまで昇華されている事を意味し、一太刀一太刀が必殺の一撃となっている。
そんな強烈な一撃は、主となる魔力回路が生存維持本能で同じく極限までに鍛えた闘気と同程度の優れた武器でないと受け止めれないはず。
しかし恐らく主が生存維持本能じゃないアルドがメイスで受け切れているのは、恐らく生存維持本能が高い水準で機能しておりかつ武器に何かしらのエンチャントをかけているからのはず。
しかもアルド、剣士のあの怒涛の攻撃を魔力回路の余計な揺らぎを見せる事もなく、そのことごとくを受け切るとは。
そこで一度剣士が間合いを取るため、重心が後ろへと傾く。これは剣士の呼吸切れ。あの研ぎ澄まされた攻撃を連続で行ったがための僅かな隙。
しかしアルドはその僅かな隙を見逃さなかった。間合いを取ろうとした瞬間、すぐさま前進をする。
剣士と同じく、今すぐにでも呼吸をしたいだろうに。
アルドは鉄の心臓の持ち主。
そしてメイスでの乱撃の後、一拍を置いて渾身の一撃。その一撃も剣士の刀に完全に防がれるも、その凄まじい威力で剣士を後方へ大きく吹き飛ばす事に成功した。
そうしてその威力で荷馬車からその身を放り出される形になった剣士は、身を捻り流れる地面へ足から降り立つと、信じられないけど咄嗟にジャンプをして後方を走っていた荷馬車の一つに頭から飛び込む。
第一回戦目はアルドの勝利だ。
しかしこのままで剣士も黙っていないはず。
とそこで展開していた闘気領域が上空に異変を感じとる。
これは……飛竜か。
◆ ◆ ◆
鋭い刃がある斬撃面と、ドラゴンの堅い鱗で作られた殴打面がある魔竜長剣。その魔竜長剣の殴打面を右から左へ鋭く振るう。
その攻撃を剣で受けようとしたガスターズの一人が、その威力を見誤ったのだろう。
受けきれずに吹き飛ばされて地面を転がっていく。
しかしあの魔力回路を機能させた戦い方を見せる剣士は、どこぞの名のある剣士のはず。
そんなのを相手にするアルドを助けに行きたいのはやまやまなんだが、ガスターズ、みんながみんな捨て身の攻撃をしてくるため、ガスターズ達の勢いに負けて隊列が右へ押されてしまっている。
アルド、あと少し踏ん張ってくれ、そしたら助けに行けるから。
「シグー、あれあれ」
シグナのすぐ近くで戦っているシャルルが、上空を指差して叫んでいた。
「あぁ、わかっている」
まだ遥か上空だが、ここで情報通りの飛竜が出てくるとは。
あの巨体が急降下してきて鉤爪で攻撃されたら、荷馬車はひとたまりもないだろう。
空中戦を出来るのは特務部隊ではシグナだけ。そう、双頭の魔竜を討伐した時のように、俺がやらなければならない。
アルド、前言撤回。今しばらく待ってくれ。
新たに現れたガスターズの一人がパッカラからジャンプをしてこちらへ飛び乗ってきた。そいつを殴打面で攻撃をして武器を弾くと、返す斬撃面の刃で胴を斬る。
「シャルル、相手は死に物狂いだ。俺が戻って来るまで、決して無理をするなよ」
「りょーかい! 」
「じゃ、ちょっと行ってくる」
脳筋状態が解除されてしまうが、仕方がない。シグナは唯一使える高速移動魔法の呪文の詠唱にとりかかる。また呪文の詠唱と同時進行で魔力を消費して、足首に取り付けている輪っか型の風の魔具を起動させる。
そうする事で、地を踏み締めるように空中を蹴り——
縦に流れる景色。
眼下のキャラバン隊があっという間に小さくなっていく。
そうして強烈な風切り音が耳へと届く中、一気に飛竜の元へと駆け上がっていき——
凄まじいスピードの中で両腕でしっかりと握り締めた魔竜長剣を飛竜へと狙いを定め、今まさに唱え終えた呪文を口にする。
「突風系高等魔法! 」
瞳がまばたきをして目蓋を上げるまでの刹那の間で、シグナは飛竜の脇を通り抜けていた。
魔竜長剣が通過したであろう飛竜の腹部部分は、派手に肉が吹き飛び背骨が外気にさらされる。
そして飛竜は、糸の切れた人形のように落下を開始した。
同じく自由落下していたシグナは風の魔具を使い空中を蹴ると、戦闘中のシャルルの元へと舞い戻っていくのであった。
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