勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第43話、逆ナン
翌朝、冒険者ギルドへ依頼探しに来ていた。
依頼ボードを前に私たちは思い思いに見ていると——
「これは野生の馬を捕まえるクエストです」
リーヴェによる解説が聞こえて来た。
そうか、エルは読み書きが出来ないため一人では依頼書を見る事が出来ないのか。
時間があれば早速今晩あたりからでも教えてあげなければ。
そんな事を考えながら、クエストの中でも護衛任務が並ぶボードへ視線を戻す。
さてと、幾つかあるキャラバン隊護衛任務の内容を一つずつ確かめていくか。
私たちは目的地を決めていないが当分の間は南下する予定だ。そのためその中から条件に合った依頼書に目を通していく。
その殆どは時間がかかるが比較的に治安が良い、マジェスタ王国内を進むルートの物。
そして一件だけ見つける。
治安がよろしくない危険なマジェスタ王国とレコ王国の国境線沿いを南下する、所謂最短ルートを走る予定のキャラバン隊を。
祖国レコ王国、自慢ではないが治安の悪さが他国と比べると断トツに悪い。
なんせ大規模な盗賊団が我が物顔で存在しているぐらいだから。
そしてその盗賊団が根城にしているのが、まさに今から任務を受けようとしている地帯だ。
私は現段階ではこの事実を敢えて伏せて、クエストを受注する。
いや、今後の事を考えると、普通の護衛任務として紹介しずっと黙っていた方が良いだろう。
しかし高確率で襲われるキャラバン隊か。
まぁ走る方もガチガチに装備を固めている。
また正式には実際に走る面々を見ないことには危険度が変わるため、ギルド評価は落ちてしまうだろうが、仲間の命がかかっているため場合によっては当日キャンセルも考えてはいる。
背中を預ける相手ぐらいこの目で見ておかないと、である。
出発は明後日か。
ギルドから出て食事を済ませた私たちは、出発の日まで時があるため観光モードになっていた。
ただまだ食うに困らない程度の資金しか持ち合わせていないため、その殆どはウインドウショッピングになるだろうが。
そして冒険者と言えばまずは武器屋だろう、と言うことでお店に入った私たちは、エルの武器候補を見ていた。
ふむ、リザードマンの籠手か。エルの身のこなしだと籠手を装備させたら面白くなるかもしれないな。
と言うわけで、早速勧めてみる。
「これなんかどうだろう? 」
「えー籠手ですか? 」
「そうだ、身体に近い武器のほうが防御の際、より正確な動きで防ぐ事が出来るぞ」
「……剣の方が良いです。だってその方が敵と距離がとれるから」
「そうなると盾がわりに籠手を装備する形も面白いかもしれないな」
「両方装備ですか? 」
「あぁ、資金的にまだまだ無理な話だが」
「えーと、考えたら普通に盾を装備するのは駄目なのですか? 」
「それでも構わないが、エルレベルで目が良く身体能力が高い者は、やはり身体に密着した装備品のほうが良いと思う」
「そうなんですか? 」
「あぁ、そうだ」
「えーと、……考えておきます」
さてと、次はリーヴェのリクエストである魔具屋を覗いてみるとするか。
魔具とは魔力付与された物で、指輪から剣まで多種多様な物が存在する。
武器屋を後にした私たちは、そんな魔具屋を探して噴水広場前まで来ていると——
「へー、稀に見る魂レベルね」
突然知らない女性のエルフから話しかけられていた。
人違いだろう、と無視して歩を進める。
「ちよっと、あなたに話しかけてるんだけど? 無視しないでくれる? 」
行く手を遮るように立ちはだかるエルフ。
どうやら私に言っているようだ。
しかし本当に心当たりがない。
「あの、どちら様でしょうか? 私にエルフ様のお知り合いはいないのですが? 」
するとエルフは整った顔を歪ませて、クワッと目を剥く。
しまった、少し棘があり過ぎる言い回しだったか?
それともギルド長と言うハイエルフの知り合いがいるのに、知らないと嘘を言ったのが表情でバレてしまったのか?
目の前のエルフはそれから口をわなわなさせた後、心を鎮めるためだろう、胸に手を当ててから口を開く。
「あっ、あなた、私にそんな口の聞き方をするなんて、大した度胸ね」
ここは平謝りして、流れで立ち去った方が良さそうである。
「すみません、私が悪かったです。これは迷惑料です。良かったら使われて下さい」
ちょっと威圧的なエルフがよく見えるように硬貨が入った袋を掲げると、彼我の間の地面にそっと置く。そして踵を返し立ち去ろうとしたのだが、——後ろから肩を掴まれてしまった。
「決めたわ、私はあなたに付いて行く! 」
つまりパーティーメンバーになると言う事!
何故今の流れでそうなる!?
困ったな。
仲間になると言う事だが、仲間選びだけは慎重にならなければならない。
「私はイリス、イリス=レイグナーよ」
名乗られたからにはこちらも名乗るべき、なのだろうか?
「……アルド=モードレッドです」
「へぇー、アルドか。それならアルルで良いわね」
初対面で気安く話しかけてくるあたり、やはりかなり強引な人である。
とまぁ、否定ばかりしてしまっていたが、もしかしたらウチのパーティーに欠かせない存在かもしれない。
また何かしらのグループでも一番大切なのは人間関係であるため、イリスがウチのメンバーになるかどうかはリーヴェたち次第と言う事になるだろう。
「今から仲間に相談してみます。話はそれからで」
「もしかしてこの子たちがそう? お姉さんは嬉しいよ」
イリスはエルフ特有の整った顔を破顔させて笑みを浮かべると——
「……逆にアルルに相応しいかどうか、見てあげるね」
リーヴェとエルをふむふむと声を漏らしながらあの目を剥く形相で見つめ始めた。
依頼ボードを前に私たちは思い思いに見ていると——
「これは野生の馬を捕まえるクエストです」
リーヴェによる解説が聞こえて来た。
そうか、エルは読み書きが出来ないため一人では依頼書を見る事が出来ないのか。
時間があれば早速今晩あたりからでも教えてあげなければ。
そんな事を考えながら、クエストの中でも護衛任務が並ぶボードへ視線を戻す。
さてと、幾つかあるキャラバン隊護衛任務の内容を一つずつ確かめていくか。
私たちは目的地を決めていないが当分の間は南下する予定だ。そのためその中から条件に合った依頼書に目を通していく。
その殆どは時間がかかるが比較的に治安が良い、マジェスタ王国内を進むルートの物。
そして一件だけ見つける。
治安がよろしくない危険なマジェスタ王国とレコ王国の国境線沿いを南下する、所謂最短ルートを走る予定のキャラバン隊を。
祖国レコ王国、自慢ではないが治安の悪さが他国と比べると断トツに悪い。
なんせ大規模な盗賊団が我が物顔で存在しているぐらいだから。
そしてその盗賊団が根城にしているのが、まさに今から任務を受けようとしている地帯だ。
私は現段階ではこの事実を敢えて伏せて、クエストを受注する。
いや、今後の事を考えると、普通の護衛任務として紹介しずっと黙っていた方が良いだろう。
しかし高確率で襲われるキャラバン隊か。
まぁ走る方もガチガチに装備を固めている。
また正式には実際に走る面々を見ないことには危険度が変わるため、ギルド評価は落ちてしまうだろうが、仲間の命がかかっているため場合によっては当日キャンセルも考えてはいる。
背中を預ける相手ぐらいこの目で見ておかないと、である。
出発は明後日か。
ギルドから出て食事を済ませた私たちは、出発の日まで時があるため観光モードになっていた。
ただまだ食うに困らない程度の資金しか持ち合わせていないため、その殆どはウインドウショッピングになるだろうが。
そして冒険者と言えばまずは武器屋だろう、と言うことでお店に入った私たちは、エルの武器候補を見ていた。
ふむ、リザードマンの籠手か。エルの身のこなしだと籠手を装備させたら面白くなるかもしれないな。
と言うわけで、早速勧めてみる。
「これなんかどうだろう? 」
「えー籠手ですか? 」
「そうだ、身体に近い武器のほうが防御の際、より正確な動きで防ぐ事が出来るぞ」
「……剣の方が良いです。だってその方が敵と距離がとれるから」
「そうなると盾がわりに籠手を装備する形も面白いかもしれないな」
「両方装備ですか? 」
「あぁ、資金的にまだまだ無理な話だが」
「えーと、考えたら普通に盾を装備するのは駄目なのですか? 」
「それでも構わないが、エルレベルで目が良く身体能力が高い者は、やはり身体に密着した装備品のほうが良いと思う」
「そうなんですか? 」
「あぁ、そうだ」
「えーと、……考えておきます」
さてと、次はリーヴェのリクエストである魔具屋を覗いてみるとするか。
魔具とは魔力付与された物で、指輪から剣まで多種多様な物が存在する。
武器屋を後にした私たちは、そんな魔具屋を探して噴水広場前まで来ていると——
「へー、稀に見る魂レベルね」
突然知らない女性のエルフから話しかけられていた。
人違いだろう、と無視して歩を進める。
「ちよっと、あなたに話しかけてるんだけど? 無視しないでくれる? 」
行く手を遮るように立ちはだかるエルフ。
どうやら私に言っているようだ。
しかし本当に心当たりがない。
「あの、どちら様でしょうか? 私にエルフ様のお知り合いはいないのですが? 」
するとエルフは整った顔を歪ませて、クワッと目を剥く。
しまった、少し棘があり過ぎる言い回しだったか?
それともギルド長と言うハイエルフの知り合いがいるのに、知らないと嘘を言ったのが表情でバレてしまったのか?
目の前のエルフはそれから口をわなわなさせた後、心を鎮めるためだろう、胸に手を当ててから口を開く。
「あっ、あなた、私にそんな口の聞き方をするなんて、大した度胸ね」
ここは平謝りして、流れで立ち去った方が良さそうである。
「すみません、私が悪かったです。これは迷惑料です。良かったら使われて下さい」
ちょっと威圧的なエルフがよく見えるように硬貨が入った袋を掲げると、彼我の間の地面にそっと置く。そして踵を返し立ち去ろうとしたのだが、——後ろから肩を掴まれてしまった。
「決めたわ、私はあなたに付いて行く! 」
つまりパーティーメンバーになると言う事!
何故今の流れでそうなる!?
困ったな。
仲間になると言う事だが、仲間選びだけは慎重にならなければならない。
「私はイリス、イリス=レイグナーよ」
名乗られたからにはこちらも名乗るべき、なのだろうか?
「……アルド=モードレッドです」
「へぇー、アルドか。それならアルルで良いわね」
初対面で気安く話しかけてくるあたり、やはりかなり強引な人である。
とまぁ、否定ばかりしてしまっていたが、もしかしたらウチのパーティーに欠かせない存在かもしれない。
また何かしらのグループでも一番大切なのは人間関係であるため、イリスがウチのメンバーになるかどうかはリーヴェたち次第と言う事になるだろう。
「今から仲間に相談してみます。話はそれからで」
「もしかしてこの子たちがそう? お姉さんは嬉しいよ」
イリスはエルフ特有の整った顔を破顔させて笑みを浮かべると——
「……逆にアルルに相応しいかどうか、見てあげるね」
リーヴェとエルをふむふむと声を漏らしながらあの目を剥く形相で見つめ始めた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1168
-
-
3395
-
-
310
-
-
337
-
-
49989
-
-
2813
-
-
22803
-
-
23252
-
-
127
コメント