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勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜

北河原 黒観

第34話、待ちに待った深部探索②

 体勢を落とし大股でカツンカツンと前進してくる骸骨騎士は、槍を握る四本の腕を後ろへ引く事によって力を溜めている!

 ギルド長は魔法でカイルさんを援護するべく、すらすらと呪文を組み上げているが、間に合わない!?

 そして骸骨騎士から放たれる槍の連続突き!
 それらをカイルさんは悲鳴を上げながら地面を転がり、身体をくねらせギリギリで躱していく。

中級風魔法クゼラ! 」

 そこでギルド長の魔法が完成した。と同時に解き放たれ、特大の風の刃が高速射出。
 そして槍骸骨騎士の頭部を正確に捉え、切断する事に成功した!

 頭部を鼻と口の境目で上下に分けた風の刃が勢いそのまま後方の暗闇を切り裂きながら進む中、骸骨騎士の頭部の半分から上が横へスライドし落下をしながら霧へと変わっていく。

「ギルド長、助かりました! 」

 いや、あの感じはまだ倒せていない。

 残された頭部下方の切断面から、沸騰したお湯のようにグツグツと溢れるように真っ黒な影のような物が見え隠れし出す。
 そして頭部が欠損している事がなかったかのようにして体が動き出すと、後方の闇へと消えていった。

 折角勢いに乗る転換期であったが、この通路を阻むようにして漂う闇が邪魔で追撃出来ない。

 そこでカイルさんがこちらへ後退してきた。

「カイルさん、すみません、援護が遅れました」

「大丈夫です、それよりギルド長、アレどうします? それに変な霧みたいなのも出てますし」

 そう言うカイルさんは、少し膝が笑っているように見える。
 それとギルド長は久々のダンジョンのためか、多少感が鈍っているようだ。
 まぁ、かく言う私も人の事は言えないが。

「そうですね、骸骨騎士はみんなで掛かれば問題ないのでしょうけど、あの不自然な闇が少し厄介ですね。時間がかかるかもですが、隊列を組んでここはじっくり一体ずつ誘き寄せて——」

 そこで私は一歩前へ進み出る。

「すみません、ギルド長」

「どうかされましたか? 」

「出来るかどうか分かりませんが、試してみても良いですか? あの闇を払うのを」

「えっ、えぇ」

 オールヒールではこの戦闘を邪魔する闇自体に、モンスターの反応を感じる。
 そして先ほどギルド長が放った風魔法が闇に当たった瞬間、その気配が若干だが弱まった。
 つまりあれは先日の死神のような、活性化に伴って生み出された変異種、ドギーマンの可能性が高い。

 ——結構な魔力と精神力を消費するが、失敗した時はした時。

神聖降臨弾ホーリーフレア

 複数の光球を作り上げると、前面の闇に向け満遍なく一斉総射を行なう。

 そして闇に触れた光球から炸裂を始める。
 その時たまたま前進してきていた槍骸骨騎士を巻き込みつつ、闇と一緒に充満していた魔素も一気に取り払われていく。
 そして露わになるモンスターの群れ。

 骸骨騎士は、全部で三体いたのか。
 私がかなり弱らせた全身罅だらけの槍骸骨騎士に、剣と盾を装備したのが二体。そしてざっと三十体あまりのリビングメイル。

「皆さん、今が攻め時です! 」

 そしてギルド長の号令のもと、攻勢に移った冒険者たちによりモンスター狩りが始まった。

 私はその間、特使のギャザルさんと一緒に前線から距離を取ると、主に骸骨騎士と交戦する者が手傷を負わされていたため回復を飛ばしていく。
 とそこで、前線で取りこぼしたリビングメイル一体がこちらへ迫ってきた。
 抜刀するギャザルさんを私は制すると、そいつを祝福しているメイスで強振。粉々に打ち砕き吹き飛ばす。

 このシンプルで無骨な感触、そして装飾のカケラもない純粋な金属の塊。
 やはりメイスは前世で旅をしている間ずっと使っていた事もあって、手の馴染み具合が他の武器とは段違いで良い。

「すっ、凄い力ですね!? しかも高レベルの神光魔法の使い手。
 ……アルド殿は祓魔師エクソシストですか? 」

「いえ、ただの心配性な聖職者です」

「いやでも、素晴らしい。良かったらレコ王国軍に来ないですか? ここだけの話、部隊再編中で優秀な人材はいくら居ても足りないからですね。もちろんそれなりのポジションを用意しますので」

 そこで聞き耳を立てていたのだろう。
 最後の骸骨騎士を倒したギルド長が後退して来る。

「ギャザルさん、私の前で引き抜きですか? 」

 その言葉を受けて、ギャザルさんは頬をかきながら苦笑いを浮かべる。

「いやはや、すみません、つい」

「アルドさんはウチ期待の新人なんですからね」

「わ、若いとは思っていましたが、新人なのですか? 」

「はい、ただ既にC級ライセンスの者と比べても遜色がない、……いえ、B級クエストでも普通に依頼達成出来るような? でも特例ばかり作ると上がうるさいですし——」

 それから別の冒険者パーティーも駆けつけたため、結果この大聖堂もどきでの戦闘はスムーズに敵を一掃する事が出来た。

 そして霧が取り払われた先、大聖堂の奥は行き止まりだった。ただその壁には全長3メートル程の観音開きの扉が備え付けられている。

 この溢れる魔力の感じ、この扉の先に——

 そう、この先が待ちに待ったダンジョンの深部、迷宮核がある部屋。

 扉を開き、一歩足を踏み入れる。
 するとまるで転移したのではと思わせるぐらい、辺りの景色が一変する。

 今までの無機質な通路とは違い、そこは幻想的な空間。
 暖色系の灯りが灯る薄暗い部屋で、その中央にある台座の上には、闇に浮かび上がるようにしてフワフワ浮かぶ深碧の色を放つ水晶一つ。
 そしてそして、四方にある全ての壁面には、薄っすら金色の光を放つ刻まれた魔法ルーン文字が。

 私は早速紙と筆を取り出すと、紙に書き写していく。

「どんな感じですか? 」

 話し掛けてくるギルド長に、視線を向ける事なく筆を走らせながら答える。

「素晴らしいです! ここには私が長年追い求めていた物があります。ダンジョンには偽りがない。多くの写本を元に真実の呪文を研究していましたが、やはり写し間違いがありました! そうなると、こうなるわけで、いや、ここに関しては全てが真逆の意味になってしまいますし——」

「そっ、そうなんですね。……あれっ、全てを写さないのですか? 」

「実際に見て見ると道筋が見えてきましたので、必要な箇所だけを絞っています」

「分かりました。それでは私たちはこれから念のため、あと小一時間は近辺で調査を行ないますので、その間アルドさんは自由行動と言うことで」

「ありがとうございます」

 そして充実した時間というのはあっという間に過ぎるもので、程なくして私たちはダンジョンを後にするのであった。


 ◆


 無事街へ戻った冒険者の団体は、ギルドにて報奨金を受け取り解散。
 そして本来なら同行するだけの私が貰える予定はなかったのだが、ギルド長判断で私も報奨金を貰うことになった。

 さてと——

 現在寝泊まりをしている宿へと足を向ける。
 辺りは既に夕焼け色に染まっている。

 なんだかんだで結構な時間になってしまったな。
 因みに昨晩の記憶が一部なかった。しかし今朝、エルから一部始終を聞かされ思い出した。
 そう、私は昨晩酒を飲んだ後、同じく酔っ払っていたリーヴェと接吻をしてしまっていた。
 そしてリーヴェとは今朝出る時、挨拶程度でまともに話しをしていない。

 リーヴェは私との接吻の事を、どう思っているのだろうか?
 そもそもあの時の接吻は何だったのだ?
 なにか意味があったのか?
 それとも場の流れでやる、挨拶的なモノだったのだろうか?
 とにかく、アレは私がされたほうになるわけだから、こちらから話を振ったり謝る必要はない、……はず。

 ただ宿に近付くにつれて、意味もなくそわそわしてしまう。

 そう言えばリーヴェたち、既に晩飯を食べたのでは?
 なんだかんだで遅くなってしまったので、もしかしたら先に二人で食べてしまっているかも知れない。

 宿の予約カウンターで自室の鍵を借りると、その足でリーヴェとエルが泊まる隣部屋へ向かう。
 そして扉前まで来たのだが——

 心拍数が上がる、接吻・・というワードが頭に浮かぶ。
 心臓をコントロールしそのワードを頭から切り離すが次の瞬間には、心拍数は早まり脳内にもそのワードが浮かんでしまっている。

 これではキリがない。

 そこで気を紛らわせるため全魔力回路を起動。そして駄目元で雑念を取り払いつつ、意を決してドアをノック。

『コンコンッ』

「はーい」

 エルの返事。

「アルドだが、今戻ってきた」

「鍵開けますので、ちょっと待ってて下さいね」

 そしてエルは施錠を外すと、そのままドアを開けてくれ身を乗り出してくる。

「お疲れ様でーす、……と言うかアルドさん、どうしたんですか? 凄い迫力というか、凄味があるというか」

「そんな事はない、気の所為だろう」

「それよりささっ、どうぞどうぞ」

 そこで気がつく。

「ん? リーヴェは? 」

 そう、リーヴェの姿が部屋の中に見当たらなかった。と同時に少し緊張が緩むが、次の瞬間には心配な気持ちが生まれてきてしまう。

「お姉ちゃんなら酒場に行ってますけど、もう少ししたら帰って来ると思いますよ」

 そうか、やはり食事は先にすませていたか。
 そう思うとなんだが腹が空かなくなってきたため、今晩は胃腸を休ませる事にして明日の朝はきちんと食べる事にしようか。
 それとエルには、先に明日の予定を話しておくか。

「明日なんだが、ギルドで依頼を受注して、それからダグラパロスに行こうと思っている」

「初クエストですね! それで、どんな依頼にするんですか!? 」

「ギルドに戻った際少し見て来たのだが、活性化騒動で城下町エリアも若干敵が多くなっているらしい。そのためここ数日間は討伐クエストが行われるそうだ。
 内容はドロップアイテムを通常の三割増しで買い取ってくれるらしく、それを受注しようと考えている」

「わっかりました」

 とそこで扉がノックをされる。
 続いてリーヴェの柔らかな声が聞こえてくる。

「ただいまです」

 そして陽気に入室して来たリーヴェは、私と目が合うと露骨に表情が固まった。

 ……さてと、長居しても気まずいだけなので、早々においとまするか。

「それじゃ、私はそろそろ——」

「あっ」

 私が立ち上がると、脈略もなくリーヴェが声を漏らした。
 どうしたのかと思い彼女に視線だけを送る。すると今まで極力視線を向けようとしなかったため気がつかなかったが、リーヴェは荷物を持っていた。
 その荷物は布袋に包まれているのだが、どうやら中身は木箱のように見える。

「あの、その……」

 俯きながら声を発するリーヴェ。
 ん、まてよ?
 リーヴェは酒場に行ってきた、そして荷物を持って帰ってきている。
 つまりその中身は、食べ物?
 そしてその量からするに、どう見ても一人分ではない。
 よくよく考えれば、エルは宿にいてリーヴェだけ酒場に行っている時点でおかしい。
 先に食べたと思ったのは、私の早合点だったのかもしれない。

 ……ここは私から話を振るか。

「そう言えばリーヴェ、その荷物はどうしたのだ? 」

「あっ、これは、お料理をお持ち帰りしました! アルドくんもこれから一緒に、食べないですか! 」

「そうそう、お姉ちゃんが気を利かせて、疲れて帰ってきたアルドさんに負担を掛けないよう、わざわざテイクアウトして来てくれたんですよ。
 それなのに、アルドさんはこのまま帰るつもりだったんですか? 」

 そう言う事だったのか。

「そうだったんだな、すまない、助かる」

 それからいつもより口数は少ないが、リーヴェと一言二言話しながら食事が進んでいく。

 そして食事が終盤に差し掛かるころ、エルが唐突に視線を落とし呟くようにして言う。

「そう言えば昨日、キスしてましたよね」

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