勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜

北河原 黒観

第26話、エルを現地で訓練

 噴水広場から伸びる道の一つ、煉瓦造りの民家が立ち並ぶ細い路地を選び進んでいると、緩い上り坂に変わる。

 どうやら城下町を奥へと進んで行くと、最終的には前方斜め上方に見えるあの荘厳な城へと行き着くようで、どこも上り坂となっているようだ。
 また途中から道幅が広がりを見せる通りを歩いていると、フラフラと徘徊している二体のスケルトンに出くわす。
 そいつらは私たちに気づくと、全身をカシャカシャいわせながら駆け出した。

 スケルトンは剣を持った奴と槍を持った奴、それぞれ一体ずつか。ここも念のため、私が対処するか。

 先頭の剣を振り下ろそうと駆けてくるスケルトン。
 迎え討つ私は剣を振り下ろされる直前に間合いを詰めると、スケルトンの肘部分を左手で下から掴む事で攻撃を阻止。
 そして次の瞬間には粗雑に振り下ろした右手で、引き千切るようにしてスケルトンの肩口から胴体部分までをドギーマンごと破壊する。

 そこへ後続のスケルトンが槍で突いてきたため、それをクルリと半身になり躱すと、そのままの流れで身体を回転させスケルトンの懐に飛び込み密着。
 そこから流れるようにスケルトンの手首を右手で取り脇の下に肩を潜り込ませる事により全身を持ち上げると、その持ち上げた状態で力強く踏み込む事により民家の壁へ突撃。
 そのため私の背と堅い壁に挟まれたスケルトンは、衝撃で粉々になりドギーマンごと消滅をした。

「アルド、あんたもしかして武闘家モンクなの? 」

「いえ、私はただの勤勉な聖職者です」

 とそこで、道端に放置された荷馬車の陰から新手のパペットが一体現れた。そいつは先ほどのパペットと同じように、ゆっくりこちらへ向かって来ている。

 そこでエルの魔力回路を確認する。

 ふむふむ、私が施した聖魔法防御プロテクションが効果を発揮する中、第一魔力回路が綺麗に回転しているのが見えるから、万が一もないだろう。

 よし、ここは頑張って貰うか。

「エル、今度はお前があいつを倒す番だ。私が見込んだお前なら、必ず倒せる」

「……はい、やってみます! 」

 エルは剣を握り締め、間合いをそろりそろりと縮めて行く。
 そして——

「やぁー! 」

 思い切って一歩踏み込んだエルが、右上から左下へと剣を振る袈裟斬りをする。
 それによりパペットは胸元に亀裂が走り、その時与えた衝撃によりパペットはその場に転倒した。

 因みにプロテクションを武器に唱えると、強度が上がる代わりに斬れ味は落ちてしまう。
 そのため斬れ味が関係ない弓や素手、それと剣でも殴打に有効な敵を前にした時にはこのプロテクションが大いに役立つ。

「やっ、やった! 」

「エル、まだだ。踏みつけてパペットを破壊すると同時にドギーマンへもトドメを刺すのだ」

 パペットは倒れはしているが、身体をピクピク動かし立ち上がろうとしている。

「はっ、はい! 」

 そして何度も繰り出されるフットスタンプにより、倒れたパペットは粉々に砕かれていく。そしてエルの身体はエンチャントされた状態になっているため、その中のドギーマンにもきちんとダメージを与え続け遂には消滅させた。

 しかし反応が消えた事が分からないエルは、一生懸命踏みつけを続けている。

 そこで閃いた私は、小石を拾うとこちらへ背中を向けるエルに向け投げる。

「おおわぁ! 」

 エルはそれを寸でのところで躱す。
 そして目を見開き信じられないモノでも見るような顔で、私に視線を送り出した。

 なるほど、そういう事か。
 エルは自身の身体から溢れ出る魔力量が、現段階少しだけ人より多い。そして今の小石や初めて会った時のヒールのように迫り来る脅威は、その纏う魔力で察知していたのだろう。
 また常人なら例え魔力に触れた時点で気が付いたとしても手遅れなのだが、そこはエルの天才的な感覚と身体能力の高さでそこからの回避を可能にしているようだ。

「躱すとはやるじゃないか。ただこれからも気を抜かずに、常に周囲に気を配るのだ」

「……アルドさんって、スパルタ教育なんですか? 」

 そこでさらに新手、スケルトンが一体現れた。

 相手は剣を持ってはいるが、祝福を受けているエルの状態ならば例え直撃を受けても少し肉を切られる程度。
 エルの今後のため、ここも一人で任せるか。

「エル、次の相手が来たぞ。アレも一人で倒すのだ」

「えー、連戦ですか!? それに相手は剣を持ってますよ! 斬られたら死んじゃいますよ! 」

「大丈夫だ、仮に怪我をしてもすぐに回復をしてやる。だから安心して斬られても良いぞ」

「お姉ちゃーん、アルドさんは鬼です! スパルタ鬼コーチです! 」

「アルドくん、エルちゃんもあぁ言ってますし、休ませてあげたほうが良いのではないですか? 」

「リーヴェ、これはエルのためなのだ。冒険者になるからには、いつか格上と戦う状況が必ず訪れる。その時にその場から逃げ出せるぐらいの力は持っていないと、その遭遇イコール人生の最後となってしまう。だから経験は多いに越した事はない。
 リーヴェもエルが死んだら悲しいだろ? 」

「そうですけど……」

「なぁに、私が考える冒険者とは、常に自身の安全マージンを確保して行動をする者だ。無謀な戦いや無理な冒険はさせないよ」

「……わかりました! アルドくんが言うなら間違いありません! 」

「おっ、お姉ちゃんがあっさり陥落した!? むしろ当然の結果と言えば当然なんだけど——」

「エル、私は付いて来るかと誘いはしたが、強制はしていない。冒険者をするかどうか、または街で他の暮らし方をするのか、決めるのはお前の自由だ」

「……わかりましたよ、やれば良いんでしょ。ボクだってお姉ちゃん達に付いて行くって決めた時に、覚悟は決めてます。
 ちょっとだけ甘えてしまったと言うか。
 その、それにアルドさんの事は信頼してますし——」

「エル、人は誰しも道に迷うものさ。それと思った事は今みたいになんだって言ってくれ。その度に話し合い、決めて行こうじゃないか。私達は仲間なんだから。
 それにお前の才能が随一なのは私が保証する。今回の試練もお前なら必ずやり遂げられる。だから諦めずに、頑張るんだ! 」

「わかりました! いくぞ、スケルトン! 」

 それからリーヴェがララノアから弓の扱いを受けながら、まだこちらに気付いていない敵を弓矢で狙撃する練習をする中、私は接近戦を繰り広げるエルに向かい問答無用で小石を投げ続けた。

「なんかアルドって、立派なギルド専任講師レクチャラーになりそうよね」

「リーヴェもそう思います」

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