勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜

北河原 黒観

第8話、前世と今世の魔法

 頭に鋭い痛みが——
 これは前世の記憶が思い出された時に必ず起こる、不思議な頭痛。

 そうだった。魔なる者を打ち滅ぼしに行く旅の初顔合わせの時、逆に他のメンバーからなんで回復魔法使いが男なんだよとブースカ文句を言われたのを、思い出した。
 と言うか、ラビレノルト国の公爵子息で全属性を精霊具現化レベルで操る謙虚な精霊使いに、有名な武家の出と言う若いのに大陸中から剣聖と認められた男、そして得体の知れない雰囲気を纏った解除魔法使い。

 こいつら後で知ったが全員ホモだからな。ホモの癖に、回復魔法使いに女の子を所望するとはどう言う事なんだ!?

 それに私もいやいや参加させられている身だったため当初かなり態度が悪く見えたようで、最後のメンバーである暗殺のプロフェッショナルな勇者とはよく衝突をしたものだ。
 あいつチビで口数少なくて愛想は私よりない癖に、自己主張だけは激しいときたもんだ。
 しかしよくよく考えれば、神託があったとは言え暗殺者が勇者とはどう言う事なんだ? 根暗で人前にも出たがらないし。

 ……そこは暗殺者だから、仕方がないのかもしれない。

 ただメンバーで一番若いのに腕はピカイチで、いがみ合っていても分け隔てなく回復をする博愛精神の私を高く評価はしてくれていたみたいだったが。

 まぁなんだかんだで二人で行動する機会が増えた頃、足手まといと罵りながらも私に無音歩行などの盗っ人もとい、暗殺スキルの触りを教えてくれた優しい面もあった。

 それとあいつ、熱心なレダエル教の信徒でもあったため、意外な事に私の職業にも興味を示し聖人ハウニについて色々と聞いて来ていたよな。

 因みに私の以前の職業は神学者。
 超常なる者である神々と対話する僧侶たちの中で神をさらに理解するために神事を研究し、それに付随して呪文の開発などを行う研究者である。
 たまに講師として呼ばれる事もあったが、基本外界と無縁であった私が、ただ教会の中で魔力を操るのが他の者より長けていたという理由だけで選ばれてしまうわけなのだが。

 そしてそして、やはり私は転生するのに少し時間を費やしてしまっているのではと考えている。
 世界地図に記載された大陸の形に変わりはないのだが、世界の国々に知った名の国が一つもない。
 しかし山脈や森などの名が同じでレダエル教が存在しているため、前世と今世が奇跡的に似た世界と言うのも無さそうである。

 それと前世の世界と今世の世界で大きく違う事が一つだけある。それは前世と今世では、使われている魔法が違うのだ。
 いや、魔法名などだけを見ると一緒なのだが、その根本となるものが違っている。

 具体的にあげると、今世の魔法とは炎や水を場に具現化させる無から有を作り上げるもので、それらを物理的な物として操り攻撃をする。

 しかし前世の世界で使われていた魔法の根本は、想像力。
 かける方もかけられる方も意志の強さが物を言う。簡単に説明をするならば、相手に魔法をかけていると信じ込ませる幻覚や催眠のような呪術よりな魔法を多く使っていた。
 そのため魔法使いや僧侶といった職業は、なにか得体がしれないけど敵に回したらやばい、胡乱な連中と言う共通認識すらあった。

 まぁ今と比べると、前世の世界は全てにおいて、もっと精神的なスピリチュアルなものだったと断言できる。

 ……しかし記憶を取り戻した後に魔法が使えなくなっている事に気付いた時は、首輪をされた時と同等のショックを受けたものだ。
 まぁそこで知識を欲した私は、色々と調べる事になるのだが。

 私が仕えていた主人、パオルは多岐にわたる様々なジャンルの書物をコレクションする収集家だ。
 これ幸いと書庫を掃除するのはいつも全力で行ない短時間で終わらせると、僅かに出来た時間で主に神事が書かれた書物や文書を読み漁った。
 また寝る間を惜しんで脳内に蓄積させた情報を元に、今世でも魔法が操れるようになるため、魔法の理論の基礎解明から構築、試用、修正を行なっていった。

 そして私は前世に使用していた魔法研究の傍ら、同時に今世に存在する回復魔法に関しても勉強を行なっていく 。因みに今世の回復魔法は、形の上では一週間足らずで全て習得していた。
 それは私が優秀だからとかでは決してない。
 ただ単に今世の人々が使う魔法が、前世の世界の魔法と比べて習得が楽だったからだ。
 と言うのも、魔力を消費して呪文を唱えると言う工程だけで、魔法を放つことが出来てしまうからだ。

 前世ではさらに呪文を構築する適切なワードを、単語一つ一つ脳内にイメージをしなければ発動すらしない。そのイメージとは、紙芝居のようにその呪文に適した情景を自身や相手に、匂いや音を感じさせるレベルでのイメージ。
 そしてそれらを次から次へと頭の中に思い描ける、知識と精神力が必要不可欠だ。

 ただしこちらの世界の魔法が、全てに於いて前世の世界と比べて劣っているわけではない。
 現在の世界はあちらに比べると、遥かに多くの多種多様な魔法が生み出されている。

 回復魔法のヒール一つとってみても、前世の世界ではその一種類の魔法の加減を行ない対応するのだが、こちらでは傷の度合いによって違った魔法を使い分けているぐらいだ。

 ただ今世の魔法の多くが、私から言わせれば最大限の効力を発揮出来ておらず本来からかなり違った効果になり、また誤って使われているのではと考えている。
 つまり今世の魔法は前世の魔法と同じくまだ真に使えるようになってはおらず、そう考えると習得済みではなくまだまだ研究段階だと言えるだろう。

 ふふふっ——

 手元には、研究対象となる多くの未知なる魔法。
 これらを極めれば、魔なる者の討伐に選抜された前世の私をも、軽く超える事が出来るであろう実感。
 そして回復魔法の研究とは、即ちこの世界の仕組み、神々への知識を深める事。
 これは年甲斐もなく、今からワクワクが止まらない!
 精進せねばだ!


 ——時刻が流れた。

 元聖職者である私が言うのもなんだが、今宵は星々が輝きを失った暗殺に適した烏夜。
 屋敷の小窓から明かりが漏れ出る場所以外は、完全な闇と化している。

 私たちはユーリダス邸の敷地に忍び込むと、もしもの時のために逃走経路と緊急の待ち合わせ場所を再確認。
 そして褐色の肌のためより闇と同化しているリーヴェを庭前に潜ませると、私は二階に設置されたバルコニーからユーリダス邸へと侵入を試みた。

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