「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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 確率論的には絶対に麻雀マージャンとかポーカーなどの方が勝てると分かっていた。
 だから宝くじを買う人にも興味もなかったし、それに関連する記事とか書籍なども徹底的にスルーしていたのだが。
「一回さ、持ちなれない大金を得てしまうと、生活レベルがやっぱり違うようになるだろう?車を買ったり、自宅を購入したりさ。
 ま、オレは買わないし、買って当たったらその分を貯金に回して固定資産税を払うアテにはするだろうけれど、サ」
 田中先生とかが「バラ屋敷」と言っているらしいが、確かに俺の恋人の家と、特に土地に対する固定資産税は高いのも事実だった。家の方は正直築年数も経っているのでそれほどでもないが、土地に対してはやはり税金が掛かってしまって、収入を圧迫している。俺も家賃は入れているものの。
 ただ、俺の恋人の経済観念の真っ当さには惚れ直す気がした。
 美樹を含めて軽佻浮薄けいちょうふはくな人間も周りに居るだけになおさらに。
 ウチの省でも一部で問題になっている生活保護受給者の中には、口座に入金された日にはタクシーを使ったり、その場でパチンコに行ったりする人の多さにも内心呆れていたし。
「なるほど、それが賢明だと思いますが。
 それに、持ち慣れないお金が入った人の全てがそういう行動をしないかと思いますけれど?」
 俺だって、お祖母様には親戚一同から顰蹙ひんしゅくを買ってしまうレベルで生前贈与を受けてはいるものの、一切無駄使いはしていない。必要だと思った物にはお金を惜しまないが、それ以外は至って「庶民的」な生活をしていると思う。
 それに、実家がクリニックを代々経営しているので、はたから見れば「恵まれた」生活だろうな……とも思われるだろう。ただ、そのクリニックが産婦人科というトコロに個人的な問題は有ったが。
 最も出血量が多いという、致命的な欠点が。
 ただ、姉が居たという点と厚労省に就職出来たという点が救いだったが。
「そういうモノなんですかね……。まぁ、持ち慣れない大金ではなくて、纏まったお金が入ると財布のひもが大幅に緩む人が居るというのはデータとして上がっているので同意しますが……」
 すると。

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