「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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 美樹が恋人パトロンに経済力を求めているのは良く分かった。まあ、多少は水商売チックな考え方をしているような気はしたが、そういう人間だった割といるので(ああ、そうか)と思うだけだ。
 俺はそんなことを求めるような人間とは付き合いたくないが。
 しかし、20万円しかしないBMW……それは事故車二台を無理やり一台にまとめたのだろうが、普通は廃車にしかしない車を手間をかけて車として復活させるという無理やり感が満載だった。
「……その車、ちゃんと走りましたか?」
 むしろそちらのほうが気になってしまう。本筋とはものすごく外れているような気はしたものの。
「あまり乗せてもらってない。雨だとエンジンの調子が悪いし、晴れの日はバッテリーが過熱し過ぎるとか。夜にはライトが点かない場合が多いとかで」
ーー本当にBMWなのだろうか?とも思ってしまう。ブランド物にも偽物が有るように、車にもそういうたぐいのモノが有ってもおかしくない。
 俺の専門分野の一つに違法薬物があるが、覚せい剤は注射でも使用出来る。他にも摂取方法はあるものの。
 そして見た目は細かく砕いた岩塩とか「味の素」とそれほど変わらないのでーーもちろん、流通している単価は物凄く異なるがーー「覚せい剤」と偽って味の素とかで水増ししたものを売り捌く売人も居るという情報も上がってくる。
 そのほうが利幅が大きくなるからというのが理由だが、逮捕された時には「顧客の体に優しいものを『善意』で入れた」とか盗人猛々しい供述をすることもあると聞いている。まあ、そんなコトで量刑が変わるわけではないが。
「なんでも、家具デザイナーって、お金持ちの家の壁紙とか家具とかをアドバイスする仕事らしくってさ、自分もお金持ちアピールをしないといけないんで車とか家とかの見栄を張るんだって」
 日本ではそれほど知名度はないが、アメリカなどの富裕層向けにそういう職業があるということは知っていた。
 アメリカは建国してから200年程度の歴史しか持っていない上に富裕層が集まるお国柄だからかもしれないが、手に入れたペントハウスの装飾をヨーロッパのどの時代風にするかなどを詳細に決めていく仕事だそうだ。例えば彫刻一つにしてもその時代にそぐわないものを顧客が買ってしまった場合「飾らずに仕舞っておいた方が良い」などの「余計なお世話」ともいうべきアドバイスをするとか聞いたことがある。
 しかし。

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