「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

67

 東京の山の手どころか、神奈川の湘南とかのいわゆるガラの悪い土地の言葉のような気がする。
 大阪が勤務地になって久しいが、ヤクザのような「おんどりゃ、何してけつかんねん」のような言葉は聞いたことがない。ドラマでは観たことがあるが「お前、何しているのだ?」といった意味らしいが。
 美樹の言葉もそんな荒んだ感じがするものの、それを口に出すような馬鹿な真似はするわけがない。
「あの人に似せるんでしょ?だったら当然エルメスじゃんね。ハイブランドで固めた経験はあるけど、エルメスは初だからテンション上がるっ!!」
 何がハイブランドだと思ってしまう。美樹のことだからどうせ自分で支払う気はないだろう。
 それに以前、厚労省のナンバー2をめた時はまだ金払いの良いパトロン、もとい恋人を持っていなかったので、ユニク〇すらーーいや、そちらを批判する積りもないし、コストパフォーマンスは物凄く良いのは知っているーー高価たかい!とか言っていたような気がする。俺と俺の恋人がこよなく愛する吉野家の牛丼と同じ「庶民的」な店ではある。ただ、省内では着ている物で評価がが変わってしまうので、アルマー〇を愛用しているだけだ。
 そして美樹の場合自腹だと今でもユニク〇を買いそうな人間だ。「青〇のスーツにもそれなりに見栄えのするやつはありますよ」と言ってやりたいような気がする。
 しかし、美樹の打算的な性格からすると全力で井藤研修医を完全に本気で落としに掛かるには「〇山」のスーツでは多分ダメだろう。
 内心でため息をつきながらクレジットカードを使おうと決意した。
 俺の場合は、祖母がそれなりの資産株を嫁入りの時に持って来ていてーーちなみに現在の場合、株券というか株式証書は紙ベースではなくてデータとしてしか存在しないーーそれを一時期預かって資産株ではなく値動きの激しい会社の株式を買って20倍に資産を増やした過去がある。
 その件でもかなり信頼されているのである程度のお金は自由に使うことも出来るのでその点は大丈夫だった。それに東京の実家に帰るたびごとに祖父母のエリアにも赴いて盆栽の手入れを手伝ったり、その他株式運用のコツなどを教えたりしているので仲はとても良好だ。
 だからエルメスのスーツなど一式を買う程度のことは簡単ではあるものの、どうせ美樹は「貰ったモノ」という認識だろうし、リサイクルショップに持ち込んで現金化しそうなキャラだ。
「分かりました。すぐそこの百貨店に確か店舗が入っていたと思いますから、そちらに移動しましょうか?善は急げです」
 すると。

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く