元暗殺者の神様だけど、なんか質問ある?
アイデンティティー
リンクルは本気だ。こいつの言葉には誠意が宿っている。散々に命のやり取りをしてきた俺だ。背中を預けられる"味方"を正確に嗅ぎ分ける嗅覚が、俺には備わっている。だから、こいつが今、本気で俺に仕えようとしているのが分かるのだ。
俺はロックバイターに敵わない。立ち向かっても死ぬだろうし、逃げても逃げ切れず殺されるのは明らかだ。では、リンクルに頼ればいい。こいつがどれほど強いのか知らないが、もしロックバイターより弱かったとしても、けしかけて損は無い。最悪、リンクルがやられている間に逃走する隙と時間が稼げる可能性はあるからだ。
俺の腹は決まった。
「うるせえ。俺は、お前みたいな子どもに助けられるほど、落ちぶれちゃいねえんだよ」
「……はあ?」
リンクルがきょとんとした顔で俺を見上げた。「バカなのこいつ?」って思ったのがバレバレな表情だ。隠せよ。
「ちっ」
ムカつきながら前に出る。ロックバイターは注意深く俺を観察しているように見える。やつにとってはエサでしかないはずの俺を警戒しているのか? ここでは初対面のはずだが、野生の勘で何かを感じ取ったのだろうか? 強いくせに油断の無いやつってのは厄介だ。
「ちょ、ちょっとグレッドお。無理だよお、勝てないよ殺されるよ食べられちゃっても知らないよお」
リンクルがあたふたと俺の腕を引っ張った。……何をそんなに焦っているんだ、こいつは? さっき俺の首を切断したって言ってたじゃないか。俺が死んでも平気だろう?
「いいから放っとけよ。例え負けようが死のうが食われようが、少女を戦わせるより全然マシだ、俺にはな」
「バババババ、バカじゃないのお!? そんな意地張って、何の得になるって言うのお!? あたしはねえ、天使なのお! 戦えるし強いんだから、任せてくれてもいいんだよお!」
「俺は、損だの得だの考えて戦った事はねえ。その戦いが、俺にとって正しいか、正しくないか。俺が戦う基準はそこにある。それを曲げちまったら、もう俺じゃねえんだよ」
「下らないよ! グレッド、死んでもまた生き返れるとか思ってるなら間違いだよお! これだと殺られたら終わりになる! あたし、まだ終わりたくないよお!」
リンクルは俺の腕を掴んでぶんぶん振った。凄い取り乱し様だ。
てかこいつ、今、気になる事を言ったな。これだと殺られたら終わり? ロックバイターに食われるのは生き返れないと言う事か。世界を滅亡させて、リンクルに殺されても生き返れるのに? この違いは何なんだ?
「ふん、最初っから死んでも生き返れるなんて思ってねえよ。そんなもん、普通は有り得ねえんだからな。いくらお前が嫌だと言っても、俺は自分を曲げられない。何がそんなに残念なのか分からんが、そこまで必死なお前には、ま、悪いとは思う。だから、運が悪かったとでも割り切って、諦めてくれ。短い間だったがありがとうよ。達者でな」
自分の死を利害からでも好感からでも悼まれるのは本意じゃない。だから俺は極力人との関係をもたなかった。まあ、こいつは天使であって人では無いが、言葉を話し感情を持つ者なのだから、そうして別れを無念がられるのは不本意だ。俺は一応謝った。
「あああああどうしよおどうしよお。わわわわわロックバイターが飛び掛かる準備モーションに入ってるう!」
「ようし、来やがれ犬コロ! また喉に一撃くれてやるぜ!」
リンクルは俺の背中をばんばんと叩き半狂乱で喚いている。うるせえなあもう。
「わ、分かったあ! ねえグレッド、あたしがロックバイターを倒すのに協力するのならいいよねえ!」
リンクルはぽんと手を叩いた。今日びあまり見ない仕草だ。こいつ、いつの時代の人間だ。あ、天使か。
「あ? 協力ならな。ただし、危険な真似はすんな。女子どもに怪我をさせるなんぞ、俺にはこれ以上無い恥辱になる」
「あーもう、グレッドって、めんどくせえ!」
「め、めんどくせえ? おい、おま」
「もう、うるさいい!」
「え? お、わ、わわわ!?」
次の瞬間、俺は光と化したリンクルに包み込まれた。
俺はロックバイターに敵わない。立ち向かっても死ぬだろうし、逃げても逃げ切れず殺されるのは明らかだ。では、リンクルに頼ればいい。こいつがどれほど強いのか知らないが、もしロックバイターより弱かったとしても、けしかけて損は無い。最悪、リンクルがやられている間に逃走する隙と時間が稼げる可能性はあるからだ。
俺の腹は決まった。
「うるせえ。俺は、お前みたいな子どもに助けられるほど、落ちぶれちゃいねえんだよ」
「……はあ?」
リンクルがきょとんとした顔で俺を見上げた。「バカなのこいつ?」って思ったのがバレバレな表情だ。隠せよ。
「ちっ」
ムカつきながら前に出る。ロックバイターは注意深く俺を観察しているように見える。やつにとってはエサでしかないはずの俺を警戒しているのか? ここでは初対面のはずだが、野生の勘で何かを感じ取ったのだろうか? 強いくせに油断の無いやつってのは厄介だ。
「ちょ、ちょっとグレッドお。無理だよお、勝てないよ殺されるよ食べられちゃっても知らないよお」
リンクルがあたふたと俺の腕を引っ張った。……何をそんなに焦っているんだ、こいつは? さっき俺の首を切断したって言ってたじゃないか。俺が死んでも平気だろう?
「いいから放っとけよ。例え負けようが死のうが食われようが、少女を戦わせるより全然マシだ、俺にはな」
「バババババ、バカじゃないのお!? そんな意地張って、何の得になるって言うのお!? あたしはねえ、天使なのお! 戦えるし強いんだから、任せてくれてもいいんだよお!」
「俺は、損だの得だの考えて戦った事はねえ。その戦いが、俺にとって正しいか、正しくないか。俺が戦う基準はそこにある。それを曲げちまったら、もう俺じゃねえんだよ」
「下らないよ! グレッド、死んでもまた生き返れるとか思ってるなら間違いだよお! これだと殺られたら終わりになる! あたし、まだ終わりたくないよお!」
リンクルは俺の腕を掴んでぶんぶん振った。凄い取り乱し様だ。
てかこいつ、今、気になる事を言ったな。これだと殺られたら終わり? ロックバイターに食われるのは生き返れないと言う事か。世界を滅亡させて、リンクルに殺されても生き返れるのに? この違いは何なんだ?
「ふん、最初っから死んでも生き返れるなんて思ってねえよ。そんなもん、普通は有り得ねえんだからな。いくらお前が嫌だと言っても、俺は自分を曲げられない。何がそんなに残念なのか分からんが、そこまで必死なお前には、ま、悪いとは思う。だから、運が悪かったとでも割り切って、諦めてくれ。短い間だったがありがとうよ。達者でな」
自分の死を利害からでも好感からでも悼まれるのは本意じゃない。だから俺は極力人との関係をもたなかった。まあ、こいつは天使であって人では無いが、言葉を話し感情を持つ者なのだから、そうして別れを無念がられるのは不本意だ。俺は一応謝った。
「あああああどうしよおどうしよお。わわわわわロックバイターが飛び掛かる準備モーションに入ってるう!」
「ようし、来やがれ犬コロ! また喉に一撃くれてやるぜ!」
リンクルは俺の背中をばんばんと叩き半狂乱で喚いている。うるせえなあもう。
「わ、分かったあ! ねえグレッド、あたしがロックバイターを倒すのに協力するのならいいよねえ!」
リンクルはぽんと手を叩いた。今日びあまり見ない仕草だ。こいつ、いつの時代の人間だ。あ、天使か。
「あ? 協力ならな。ただし、危険な真似はすんな。女子どもに怪我をさせるなんぞ、俺にはこれ以上無い恥辱になる」
「あーもう、グレッドって、めんどくせえ!」
「め、めんどくせえ? おい、おま」
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次の瞬間、俺は光と化したリンクルに包み込まれた。
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