元暗殺者の神様だけど、なんか質問ある?
憤怒のリンクル
「……が、答え、じゃ」
何か聞こえる。ああ、じじいか。なんだよ、結構干渉してきやがるんだな。過保護か?
何も見えない。暑くも寒くも無い。何も感じない……? ここは、まさか……?
「あー、意識戻ったみたいだよお、神様あ」
リンクルか。どこを見てやがるんだ。俺はここだぞ。あ、あれ? どこを見ているのか分からないのは俺の方か? リンクルを全方位から同時に見ているなんておかしいだろ。俺の目はいくつあるんだよ。
「うむ、そのようじゃな。ご苦労、リンクル」
「えへへー、神様に労われたあ。嬉しいなあ、嬉しいなあ、嬉しいなったら嬉しいなあー」
リンクルは飛び跳ねて無邪気に笑う。なんだよ、俺にはそんな顔見せないくせに。
「さて、御代……いや、グレイトフル・デッドよ。お主は死んだ。また、死んだのじゃ」
あ? ……ああ、思い出してきた。俺はプラムローマの騎士と戦おうとして……して……どうなった? この暗い空間に来たってことは、確かに死んだわけだろう。多分、斬られたはずなんだ。だが、なぜだ? うまく思い出せない……。
「思い出せぬか?」
「そうなるかもねえ。酷い目に遭ったからあ。理性が飛んじゃってたもんねえ」
は? 理性が? なんだそれ?
「あのねえ、グレッド。君はあ、あの騎士たちに正々堂々戦うっていう戦略を採ったわけだけどお」
だけど? なんだよ、俺は一対一の決闘に敗れたのか? ダセえな。剣は門外漢だが、それでもそこそこやれる自信があったのに。
「いやあ、一対一の決闘なんて、あの騎士たちが承けるワケないからあ」
そんな馬鹿な。騎士ってやつはプライドの塊だろ? あれだけ煽ってやったのに、一対一の決闘を避けたってのか?
「避けるっていうかあ、そもそもそういう価値観が無いんだよお。だから、君はあ、結果的に嬲り殺しにされちゃってえ」
いや、待てよ。バッハは? あいつは一対一の決闘に、かなりの意義を抱いていたようだったけど?
「それはあ、ギルハグランの騎士だから、だよお」
「左様。ギルハグランとプラムローマでは、戦いに対する価値観がまるで違うのじゃ。簡単に説明すると、ギルハグランは戦いに於いて勝敗よりも誇りを重視するが、プラムローマでは何より勝利こそが至上とされておる。隣り合う国でありながら、両国の文化には激しい隔たりが存在するのじゃよ」
ほう。興味深い話だな。だが、そいつは迂闊だったぜ。バッハを見ていたから、騎士とはかくあるべしという先入観をプラムローマの騎士にも適応してしまった。情報に踊らされるいい例だ。俺は敵を見誤り敗北した。これは猛省するべき失敗だな。
「そうだねえ。そのうっかりが、悲惨な殺され方を招いたわけだもんねえ。一対一で戦うと見せかけて後ろから斬られた後、両腕両足を切断された挙句、目を抉られてえ、耳を削がれてえ、最後は舌を」
何それ? リンクル、それって誰の話?
「グレッドの話だよお」
俺? 俺ってそんな風に殺されちゃったの? マジで? 酷くないかそれ。惨殺と言うのが相応しい殺されっぷりみたいだが。
「ああ、でもお、グレッドは舌を抜かれる前に神の力を使ったからあ」
それ、審判の轟雷? 使ったのか俺?
「そうだよお。相当ムカついたんだろうねえ。めっちゃ大声で叫んでたからあ」
おい。それヤバくないか? 小声で唱えても山ひとつ消し飛んだやつだろ?
「うん。だからあ、プラムローマはもちろん、その向こうにある国もお、そのまた向こうにある国もお、ぜえーんぶ消し炭に変えちゃってえ、それでも轟雷の勢いは止まらずにい、結局う、あの大陸は海に沈んじゃったんだあ」
……………………………………………………。
…………やっちまった、な…………。
……………………………………………………。
「やっちまったねえ。あんだけ酷い仕打ちを受けたんだからあ、やり返したくなる気持ちは分かるけどお。あれはさすがにないわーって、あたし、めっちゃ引いたもん」
俺自身もドン引きだ。ああ、なんか思い出してきた……ん? でも待てよ。俺はその時点ではまだ生きていたわけか。どうして死んだ? お前、助けてくれなかったのか?
「なんで助けなくちゃならないのお?」
下僕じゃねえのかよ。下僕なら、普通ご主人様を助けるだろ。お前、俺を助けたくなったみたいな事も言ってたじゃねえか。
「それは、あたしがそうしたいと思った時だけだよお。具体的には、正しいなー、このまま死なせちゃいけないなーって思った時い」
なんて自由な下僕なんだ。お前の辞書に忠誠という言葉は無いらしいな。
「あるよお。でもねえ、さすがにあれだけの命を海に沈めて虐殺した犯人を助ける気にはなれなくてえ」
リンクルは少しはにかむように笑った。その表情、意味が分からん。そして、
「だからあ、最後はあたしが殺したのお。グレッドの首を切断したの、あたしだよお」
心臓が凍るかと思うほどの冷酷な目で俺を睨んだ。リンクルの怒りが、びりびりと俺の魂を震わせた。
何か聞こえる。ああ、じじいか。なんだよ、結構干渉してきやがるんだな。過保護か?
何も見えない。暑くも寒くも無い。何も感じない……? ここは、まさか……?
「あー、意識戻ったみたいだよお、神様あ」
リンクルか。どこを見てやがるんだ。俺はここだぞ。あ、あれ? どこを見ているのか分からないのは俺の方か? リンクルを全方位から同時に見ているなんておかしいだろ。俺の目はいくつあるんだよ。
「うむ、そのようじゃな。ご苦労、リンクル」
「えへへー、神様に労われたあ。嬉しいなあ、嬉しいなあ、嬉しいなったら嬉しいなあー」
リンクルは飛び跳ねて無邪気に笑う。なんだよ、俺にはそんな顔見せないくせに。
「さて、御代……いや、グレイトフル・デッドよ。お主は死んだ。また、死んだのじゃ」
あ? ……ああ、思い出してきた。俺はプラムローマの騎士と戦おうとして……して……どうなった? この暗い空間に来たってことは、確かに死んだわけだろう。多分、斬られたはずなんだ。だが、なぜだ? うまく思い出せない……。
「思い出せぬか?」
「そうなるかもねえ。酷い目に遭ったからあ。理性が飛んじゃってたもんねえ」
は? 理性が? なんだそれ?
「あのねえ、グレッド。君はあ、あの騎士たちに正々堂々戦うっていう戦略を採ったわけだけどお」
だけど? なんだよ、俺は一対一の決闘に敗れたのか? ダセえな。剣は門外漢だが、それでもそこそこやれる自信があったのに。
「いやあ、一対一の決闘なんて、あの騎士たちが承けるワケないからあ」
そんな馬鹿な。騎士ってやつはプライドの塊だろ? あれだけ煽ってやったのに、一対一の決闘を避けたってのか?
「避けるっていうかあ、そもそもそういう価値観が無いんだよお。だから、君はあ、結果的に嬲り殺しにされちゃってえ」
いや、待てよ。バッハは? あいつは一対一の決闘に、かなりの意義を抱いていたようだったけど?
「それはあ、ギルハグランの騎士だから、だよお」
「左様。ギルハグランとプラムローマでは、戦いに対する価値観がまるで違うのじゃ。簡単に説明すると、ギルハグランは戦いに於いて勝敗よりも誇りを重視するが、プラムローマでは何より勝利こそが至上とされておる。隣り合う国でありながら、両国の文化には激しい隔たりが存在するのじゃよ」
ほう。興味深い話だな。だが、そいつは迂闊だったぜ。バッハを見ていたから、騎士とはかくあるべしという先入観をプラムローマの騎士にも適応してしまった。情報に踊らされるいい例だ。俺は敵を見誤り敗北した。これは猛省するべき失敗だな。
「そうだねえ。そのうっかりが、悲惨な殺され方を招いたわけだもんねえ。一対一で戦うと見せかけて後ろから斬られた後、両腕両足を切断された挙句、目を抉られてえ、耳を削がれてえ、最後は舌を」
何それ? リンクル、それって誰の話?
「グレッドの話だよお」
俺? 俺ってそんな風に殺されちゃったの? マジで? 酷くないかそれ。惨殺と言うのが相応しい殺されっぷりみたいだが。
「ああ、でもお、グレッドは舌を抜かれる前に神の力を使ったからあ」
それ、審判の轟雷? 使ったのか俺?
「そうだよお。相当ムカついたんだろうねえ。めっちゃ大声で叫んでたからあ」
おい。それヤバくないか? 小声で唱えても山ひとつ消し飛んだやつだろ?
「うん。だからあ、プラムローマはもちろん、その向こうにある国もお、そのまた向こうにある国もお、ぜえーんぶ消し炭に変えちゃってえ、それでも轟雷の勢いは止まらずにい、結局う、あの大陸は海に沈んじゃったんだあ」
……………………………………………………。
…………やっちまった、な…………。
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「やっちまったねえ。あんだけ酷い仕打ちを受けたんだからあ、やり返したくなる気持ちは分かるけどお。あれはさすがにないわーって、あたし、めっちゃ引いたもん」
俺自身もドン引きだ。ああ、なんか思い出してきた……ん? でも待てよ。俺はその時点ではまだ生きていたわけか。どうして死んだ? お前、助けてくれなかったのか?
「なんで助けなくちゃならないのお?」
下僕じゃねえのかよ。下僕なら、普通ご主人様を助けるだろ。お前、俺を助けたくなったみたいな事も言ってたじゃねえか。
「それは、あたしがそうしたいと思った時だけだよお。具体的には、正しいなー、このまま死なせちゃいけないなーって思った時い」
なんて自由な下僕なんだ。お前の辞書に忠誠という言葉は無いらしいな。
「あるよお。でもねえ、さすがにあれだけの命を海に沈めて虐殺した犯人を助ける気にはなれなくてえ」
リンクルは少しはにかむように笑った。その表情、意味が分からん。そして、
「だからあ、最後はあたしが殺したのお。グレッドの首を切断したの、あたしだよお」
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