勇者様育てます!

ノベルバユーザー244863

勇者様、お金稼いできます



ニルスの街にて。

あれから勇者様も何故か私と同じ風斬りを習いたいと言ってきた。フフッ、私と同じ風斬り使いたいなんて可愛い所あるなぁと思ってしまった。

でもエンシェントドラゴンの襲撃で勇者様も危機感を抱いてくれたから風斬りなんて習いたいと思ったんだろうか?

いいえ、違います。ヨハンはただ単に風斬りがわかりやすく派手でかっこよかったから習いたいだけです。ちなみにエルザの気も引きたいという下心込みで。

エイシェントドラゴン…… あんな簡単に倒せるものだろうか? 私は自分はそんじょそこらの勇者様より強い自信はある。だけど上級モンスターでドラゴン族でも伝説的な存在のエイシェントドラゴン、あの時は勇者様の事が心配で無我夢中だったけど私が命を賭けなければ、いや、それでも勝てないかもしれない。

でも伝説的な存在なんて実際は大した事なかったなんてよくある話だ。でも何か引っかかる。あんな場所にエイシェントドラゴンどころかドラゴンなんて居るわけない、たまたま寄った? そんな所にたまたま遭遇? あり得ない事もないけどあり得ない方の確率が高い……

んー、私もあんまり賢くないからわからな。でも考える前に行動しなきゃ、先ずは勇者様!

仮にも勇者様、勇者様はどこの村から来たのかわからないけど格好はみすぼらしい…… 出会った時はボロ切れの服を着ていて思わずこれが勇者様?と目を疑ってしまったし。しかも持ってた剣が村の肥溜めのタライで作った剣。ゾワゾワしてきた。

一見見た所ちゃんと整えてあげれば悪くなさそうだし見た目も中身も完璧な勇者様にしちゃおう!

ヨハンの性根が腐っているのでそれはむりだと思うがエルザは意気込んでいた。

それと装備も。剣は勇者様でも扱えるように丈夫で軽い隼の剣を買ったからそこはいいけど盾はないし…… というかお金がない。隼の剣が思っていたより高かったのだ。

でも最初に勇者様が選んだ剣よりは実用的だったし仕方ないか。先ずはお金を稼がなきゃ、私がモンスター狩りまくってその間宿屋で休んでいてもらおうかな!

とりあえず風切りの修行を一旦中断する。

「勇者様、勇者様!」

勇者様は慣れない修行で疲れたのかボケ〜ッと広場ですっかり疲れ切った顔をして座っている。

「あ〜ん?」

「そろそろ宿屋に行きませんか? それでその……」

「なんだよ? モジモジして」

「非常に申し訳ないんですがお金がなくて部屋を2つ取る事ができないんです、だから私と勇者様が同じ部屋になるって事で……」

ヨハンはそれを聞いた途端、先程の疲れも吹っ飛びいきなり立ち上がってエルザの手を掴んだ。

「ゆ、勇者様!?」

「ならば話は早い!(俺は大人の男になる!)」

ヨハンは修行の時とは比較にならない程のヤる気スイッチを押してしまったエルザを連れ宿屋に直行した。

勇者様宿屋に入った途端突然お風呂に入り出しちゃって。意外と綺麗好きなのかな?

そういう意味ではない事をわからないからエルザもヨハンにいろいろと勘違いされるのだ。生娘でそれにあまりそんな事を意識した事がないエルザは他意がない行動のつもりなのだがいちいちヨハンの野獣を刺激する事がよくあるのだ。

モンスターの素材を大量に揃えて売らなくちゃまともな道具揃えられそうにないしこれから先もお金がかかるだろうしなんてエルザが考えているとホクホク顔でヨハンが風呂から出てきた。

「エルザも入りたかったら入っていいぞ? これからアレだろ?(男女の営み)」

「もしかして勇者様私が考えていた事わかっちゃいました?(今からモンスター狩りに行ってきます)」

「勇者、いや、男たる者それくらいわからんでどうする?(ふふ、俺もそこまで無神経じゃないのさ)」

「勇者様のお気遣い、ありがとうございます!なんだかやる気でちゃいました!ではお言葉に甘えて… と言いたいですが汚れちゃうので帰ってきてからお風呂に入らせていただきます」

ヨハンがエルザの言葉に「へ?」と間抜けな声を出してポカンとしているとそのままエルザは部屋から出て行った。

またしても悲しいすれ違いである。

はぁ〜!? 何々? そういう流れじゃなかったのかよ?じゃあエルザたん俺を置いて何しに行ったんだ?

全てはヨハンの為にエルザは動いているのに理解されない哀れなエルザだった。

部屋に取り残されたヨハンは拗ねて寝てしまった。お前は子供か?


エルザは風の魔法の高速移動でニルスの町を出てモンスターの居る高原に入った。

はぁ〜、私にもう少し魔法の才があれば空間移動魔法とかで一瞬で来れるんだけど…… ん? 何か見られている気配を感じる。 モンスターの巣窟だから当然か。

エルザがモンスターを誘き寄せる粉を辺りにばら撒いた。しばらくすると匂いに誘き寄せられたモンスターがワラワラと出てきた。

「勇者様の為、狩らせていただきます!」

エルザは剣を構えモンスターの群れに突っ込んだ。この程度のモンスターならエルザは特に技術も使う事なく高速の剣捌きで集まったモンスターを次々と葬っていく。それ自体が凡夫から見ればとてつもない技術なのだがエルザの凄まじい戦闘スキルには大した事ではない。

何十、何百とどれくらい倒しただろうか? ヨハンが居るとこうは行かない、何故ならヨハンを守りながら戦う事になるからだ。

最早エルザが1人で旅をして1人で魔王を倒しに行けよと思うがエルザにとってヨハンはもう仲間として認識していて今更置いて行こうなんて見切りをつけはしない。

だから今もヨハンの為に行動しているのだがヨハン本人はそんなエルザにやる気を削がれてふて寝しているダメ人間だ。

「ふぅ〜、倒すのは簡単だけど素材を剥ぎ取るのはやっぱり大変ねぇ」

えっさほいさと健気にヨハンの為に倒したモンスターから素材を剥ぎ取っていくがエルザはまた何者かに見られている気配を感じた。

まだここいら辺にモンスターがいるのかしら? 見ているだけで襲ってこない? まぁいいか。 今回はお金稼ぎが目的だし下手に強いの出てくると面倒ね、大体終わったし勇者様をあんまり待たせて心配かけるわけにもいかないし……

大丈夫、ヨハンは全く心配してません。それどころかやる気だったのに部屋から出ていったエルザに怒ってます。


エルザが高原から高速移動でニルスの街まで戻ったのを確認し高原のはるか上空から1人の魔人が現れた。

やはり凄まじき女だ。気配を消し姿まで眩ませて潜んでおったのに気付くとは。あれならば実力も申し分ない、先日ドラゴンに化けて戦った時もその凄まじい戦闘力に驚いた。ククク、勇者気取りのゴミ共より余程あの女の方が役に立ちそうではないか。

今は時ではない、それまで泳がせておいてやろう。






























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