勇者様育てます!

ノベルバユーザー244863

勇者様とキンキン



さて俺達の旅はこれからだ!みたいな打ち切りエンドみたいな感じで始まったこの旅、ヨハンは根に持つタイプなのでエルザに言われたなんでも言う事を聞くという約束が気になって仕方なかった。

エルザたん、まさか清く正しい僧侶様が約束破るわけないよな? そんな事勇者の俺が許さん! 

よくもまぁ命の恩人にここまで言えるものだ、先程小便をチビりドラゴンにエルザを餌に命乞いをしていたクズはさすがというか図太い神経をしているというか……

チビり勇者はズボンを濡らしたままそんな事を考えているとはエルザは知らずに真剣な顔をしている勇者様を見て勇者様がなぜあんな所にエンシェントドラゴンのような上級モンスターが現れたのだろう?と思案にふけっているように見えているのだから滑稽である。

「やはり……勇者様も気になっておいでですか?」

「ああ、気になってしょうがない(エルザたんが約束を反故にしないか、そして何をしてもらおうか……)」

「あ!そういえば私約束してたんです!(さっき草原で襲われていた人達を迎えに行くって)」

「やっと思い出したのか!?(俺との約束を!)」

思い出したと聞いたヨハンはゲス顔になりエルザに詰め寄る。するとエルザが両手を広げた。

え? もしやこれは私の胸に飛び込んできて!という合図だろうか? なぁんだ、エルザたん意外と大胆な子なんじゃないかと思い俺はそのままエルザたんの胸に飛び込んだ。

うほ〜、やわらけぇ。幸せじゃ、それになんて良い匂いなんだ。

そんなエルザの胸を堪能しているとエルザは行きますよ、しっかり掴まっていて下さいとヨハンに告げる。 

へ? 何のこと? ヨハンがそう思った瞬間にエルザはさっきヨハンと競争していた時と同じスピードで駆け出した。

え? 何々!? これから宿屋に直行!? 

この男にはピンクな想像しか最早出来ないようだ…… 股間を小便で濡らした勇者(チビり)はエルザの胸の中でこんな事を考えているとは知らないエルザがなんとも可哀想だ。

「勇者様、着きましたよ!ん? 勇者様、顔が真っ赤ですよ? もしかしてモンスターの毒にでも!?」

いいえ、ただ単にエルザの胸の中でスケベな妄想をしていただけです。

「いや、大丈夫だ。それにしても着いたって…… ここは?」

宿屋じゃねぇじゃねぇか! ふざけんなよ! 約束とここがなんの関係あるんだよ!?

悲しいすれ違いである……

「さっき勇者様と走り込みしていた時にモンスターに襲われた人達を偶然見つけて助けてここに潜んでいるように言ったのですが…… あ!居ました」

ああ、通りであんなに速かったエルザたんが俺より遅れて来たのか、つまり俺の死に掛けた原因はその襲われていた奴らのせいじゃねぇか、絶対許さん!

仮にも勇者の言うセリフではない。そもそもそんな覚悟もなく勇者になったヨハンが悪いのではないのだろうか?

すると草原に岩陰がひとつありそこの陰から商人の旅人らしき人物が出てきた。

あー、こいつらモンスターのど真ん中でろくな装備も持って来なくて襲われたんだな、護衛も付けずに。こんなアホ共の為に俺は俺は…… 股間を小便で濡らして怒りを露わにするろくな装備(ウンコソード)を持ってなかったヨハンが言えた事ではない。


「ああ、僧侶様! 御無事で何よりです、そのお連れの方は格好からお見受けするに…… 私達と同じくモンスターに襲われていた旅人でしょうか?」

ああ!? この薄らハゲオヤジ何ほざいとんじゃ!?われぇいてまうぞ!

強ち間違いではないのだがヨハンはモンスターではなく人間に殺意を向けた。ヨハンのガン飛ばしに気付いたエルザは慌ててヨハンを自己紹介した。

「い、いえ、このお方は私が仕える勇者様です」

「あれま、勇者様でしたか、失礼お許し下さい」

「あー、俺は勇者に見えないってか? そりゃあどうも」

あろう事かヨハンは商人に噛み付き始めたヨハンを見たエルザは慌ててその場を取り繕い街まで護衛する事にした。
主に護衛をしていたのはエルザでヨハンはその間エルザに熱い熱視線を送っていた。

街に着き商人達が私達にお礼を言って去って行く。そして勇者様に恐る恐る尋ねる。

「ゆ、勇者様、どうかしましたか? 何やら先程から視線を感じるのですが」

「エルザよ、忘れていないか? あの時の勝負の約束を」

エルザはしまったという顔をしたのをヨハンは見逃さなかった。

「え、えっとぉ……」

ここでエルザは考えた、どうしよう……確かにあの勝負私が自ら仕掛けた勝負だし。

だがエルザは閃いた! というか気付いた。あの勝負実は引き分けという事に。でも理屈はそうなんだけどこんなに自分が勝ったと思ってる勇者様を怒らせないようにどうやって納得させよう?

「どうしたんだ?エルザ」

「じ、実はあの勝負引き分けなんですよ……」

「はぁ!?」

「ヴィオラの丘に先に着く事が条件だった筈です。勇者様はエイシェントドラゴンと戦っていたのであの丘の少し手前で止まっていたんです、その証拠に勇者様の足跡はそこまでしか確認できませんでした。ですが私はエイシェントドラゴンとの戦いで飛んでいたドラゴンに丘の頂からジャンプして勇者様の剣を突き刺しました。私と勇者様の剣で同時です、これはもう引き分けとしか…………」

勇者様はぐぬぬとした気に入らないという顔をして私を怪訝な顔で睨みつけるが命を救ってもらったんだからそれでいいではないのかという事すら思えない器の小ささなのだ。だが諦めたのかでは街についた事だし剣を探そうという事になった。

私は少し安堵したがどうやってこの勇者様をやる気にさせて鍛えようかと思案していた。でもエンシェントドラゴンから生き残ったという事は素質はあるのかしら?

うーん、こうして見ていると勇者様はどう見ても…… いえ、やめておきましょう。なんだかとても困難に感じられるけどそれでこそよ! と私は奮起した。

勇者様は替えの服を買い剣を新調した、私のお金で…… ま、まぁプレゼント出来たし勇者様の機嫌も少しは直るかな!?



いやー、勝負の件はエルザたんにしてやられたが服と剣を買ってもらったので良しとしよう。

転んでもただでは起きようとしないクズの極みのような思考で小便まみれのズボンとおさらばしたヨハンであった。

ウンコソードとは違いこの剣は何かズッシリと重みを感じる。これならばスライム如きに遅れは取らんか。

とは言ってるものの腕力も大してなく剣技においても微妙なヨハンはただの重い剣を買ったという事に気付いていない。買う時にあれほどエルザに自分の身の丈にあった剣にしましょうと言われそれがヨハンのどうしようもない自尊心を刺激する結果となってしまった。

おお!そうだ、俺もあれやりたいんだった。では早速……

「エルザ! 俺を鍛えてくれ!」

「ええ!? ほ、ほんとですか?ゆ、勇者様やる気になったのですね? エルザ嬉しいです」

エルザはヨハンの得体の知れないやる気に歓喜していた。 

やる気がなかった勇者様が私と一緒に特訓しようだなんて…… 私どこまでもお付き合いします!

「ではエルザ、ここでは人が多いしあそこの広場に行こうか?」

「ゆ、勇者様、先ずは体力作りでは?」

「剣を振っていても腕力はつくだろ?まぁ今回はそれからだ」

ヨハンの物言いにまぁそれもあるがとエルザは渋々納得しヨハンと剣を構えて相対する。

「あれだ、俺も勇者だしキンキンしたいと思ってな」

「キンキン? ああ、あれですか? だったら力一杯剣を持っていて動かないで下さい」

「へ?」

するとエルザの右腕に風の紋章が浮かんだ。

あれ? エルザたん、それって風斬りじゃ…… そう思った瞬間ヨハンが構えている剣に衝撃が走る。

キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

どこかで見た覚えがある擬音が辺りに響き渡る。

「ふう、これですか?」

「ちがーう! なんか近いけど違う! 俺が言いたいのは俺が敵と剣を交えてキンキンしたいから出来るように鍛えてくれって事だ!」

この男はバカなのか? いや、バカだった。体力も技術もないくせに何を言ってるのだろう? そもそも剣を持っているモンスター自体そんなに多くはないというのに……

「ええっと…… だったらまず地力を上げませんか? だから走り込みや素の運動神経を鍛えてそこから魔力で体を強化して剣の技術を鍛えて」

「そんなんやってたら何年かかるかわかんないしとりあえず感覚を掴むためにエルザ、今とりあえず俺の実力に合わせてキンキンしてくれ」

要は新しい剣を買ったから試し振りをしたいという事だ…… なんて面倒な奴。

エルザはがっくりしたがこれでいい気分になってもらったらもしかして修行してくれるかもと思い承諾した。

「行くぞぉお! エルザぁあ!」

エルザの剣目掛け渾身の力でエルザに斬りかかる、エルザの実力は相当なものなので遠慮なく行ける、そしてヨハンのエルザの剣に当たった瞬間ヨハンの剣はまたしても折れてしまった。

あれ? 予想外の出来事に2人は硬まるがエルザがはっとした。

「も、もしかして私の風斬りで剣がボロボロになったのかもしれません…… 極限まで手加減したのですが勇者様、もしかして剣に魔力を込めておられなかったのですか?」

「え? 何それ?」

全くもって舐めた勇者様(笑)であった。その後せっかく買った剣がまた折れ拗ねたヨハンがまたエルザに剣を買ってもらったのは言うまでもない。しかしエルザが選んだので先程よりはマシな剣になったがエルザの懐は大分寂しくなってしまった。






























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