ロワとカラス城の魔女
22
暗い階段を上がっていく。薬品ばかりが並ぶ部屋に戻ると、壁の扉はひとりでに閉まった。
魔法陣のある部屋でなくした懐中電灯を探すのをすっかり忘れたせいで、あたりは真っ暗でなにも見えない。おそるおそる薬品の棚を確認しながら進み、あとはディアの声をたよりに進む。
やっとカラス城のホールらしきところに戻ってきたところだ。かなり上のほうから光が射し込み、なんとか真っ暗闇から抜け出せて、今は暗闇に入ったかんじだ。
ほっとして、目覚めたソファーらしきものに座ろうとした時、どんっと大きな音が響いた。
その音と同時に、消えていたはずの蝋燭があちこちに灯る。見渡すと、魔女が階段の上に立っている。驚いて固まっていると、魔女は言った。
「これで帰る扉が分かるでしょう。怖い思いをしたくないなら、いつでも帰っていいのよ」
私はごくりとつばを飲み込んで、首を振る。
「私は、帰りません。あなたに守ってもらわなくても、自分でなんとかします!」
そう言い終わって、私はディアをそっと見た。やっちゃった、という顔で。ディアもディアで、驚いた顔でこちらをみている。お礼を言うんじゃなかったの?って言いたいのだろうことは、顔を見なくてもわかってる。それは私自身だって、心の中で私に言った。でも、もう後の祭りだ。
いいわけばかりがどっと流れてくる。それを止めるように魔女が言う。
「そう?それなら好きにしたらいいわ。ただし、ここに残るなら私の指示に従ってもらうわ。それに、いままで起こした事件について、その罰を受けてもらう」
魔女の言葉に少し恐怖していることに気が付かれないように、私は頷いた。
事件だなんて大げさなって思ったけど、私は城の大切な木を燃やし、地下で得体の知れない悪魔を召喚した。本当、通報されてもおかしくない。そうなれば、卒業試験なんてどろこじゃない。魔法学校は退学だろう。
魔女は仁王立ちの姿で言い放った。
「それじゃあロワ。罰として、城内の清掃を言いわたす」
嘘でしょ?!って思わず言いそうになった。こんな暗闇で、埃と塵まみれで、全部がぼろぼろだし、いつ崩れてもおかしくない棚とか、柱とか、怪しい薬品は沢山あるし、甲冑の部屋や武器の部屋は寒々として、幽霊が住んでそうだし、それに、それに。
一瞬で色んなことを考えたけれど、それを実際に口にする気力もなければ、勇気もなかった。私がやらかしたことはかなり大きいことだ。
「ッゲコ」
なぜだか、私の代わりに悪魔のカエルが返事をする。魔女は私の返事なんか聞く気もなく言い足した。
「もちろん。ディアもよ」
「まじかよ」そう言うディアの声が小さく響いた。
それも気にせず魔女は続ける。
「食事はキッチンにあるものなら勝手に食べなさい。キッチン以外に置いてあるものは、死にたくないなら口にしないことね。部屋は好きな部屋を使っていいわ。2階より上はほとんどが呪われているから自分で大家と話をつけて。とりあえずは1階の奥の部屋にテントを立てるのが今のところ一番マシよ」
早口ですらすらとそう言うと、魔女はさらに階段を上がっていき、何階にいったのか分からなくなった。
階段にそっと近づいて、下から覗いて姿が見えなくなると、私はやっと階段から離れた。暗すぎてあっという間に姿が見えなくなるんだもの。
「とりあえず、掃除をしろってことと、ごはんはちゃんと食べなさいってことは分かったわ」
部屋が呪われてるってどういうことだかよく分からないままだし、部屋でテントを使えばいいって意味も謎だ。それに大家さんはどこにいるんだろう。
「まぁ、少しくらいは休みなよ」
ディアは疲れたように欠伸をする。
私もつられて欠伸をして、ソファーにすとんと座るともう立っていられないくらい眠くて仕方がなかった。カラス城は暗すぎて、いつも夜みたいな雰囲気だ。
「そうだね。とんでもなくへとへと」
そう言いながらソファーに横になると、まぁ、なんとかなるかという気がしてきた。なんの根拠もないけど、まぁ、なんとかなるさ。
このカラス城で穏やかな日なんてやってくるかは分からないけど、きっと目覚めたら、もっと良い日になる……はずだ。
魔法陣のある部屋でなくした懐中電灯を探すのをすっかり忘れたせいで、あたりは真っ暗でなにも見えない。おそるおそる薬品の棚を確認しながら進み、あとはディアの声をたよりに進む。
やっとカラス城のホールらしきところに戻ってきたところだ。かなり上のほうから光が射し込み、なんとか真っ暗闇から抜け出せて、今は暗闇に入ったかんじだ。
ほっとして、目覚めたソファーらしきものに座ろうとした時、どんっと大きな音が響いた。
その音と同時に、消えていたはずの蝋燭があちこちに灯る。見渡すと、魔女が階段の上に立っている。驚いて固まっていると、魔女は言った。
「これで帰る扉が分かるでしょう。怖い思いをしたくないなら、いつでも帰っていいのよ」
私はごくりとつばを飲み込んで、首を振る。
「私は、帰りません。あなたに守ってもらわなくても、自分でなんとかします!」
そう言い終わって、私はディアをそっと見た。やっちゃった、という顔で。ディアもディアで、驚いた顔でこちらをみている。お礼を言うんじゃなかったの?って言いたいのだろうことは、顔を見なくてもわかってる。それは私自身だって、心の中で私に言った。でも、もう後の祭りだ。
いいわけばかりがどっと流れてくる。それを止めるように魔女が言う。
「そう?それなら好きにしたらいいわ。ただし、ここに残るなら私の指示に従ってもらうわ。それに、いままで起こした事件について、その罰を受けてもらう」
魔女の言葉に少し恐怖していることに気が付かれないように、私は頷いた。
事件だなんて大げさなって思ったけど、私は城の大切な木を燃やし、地下で得体の知れない悪魔を召喚した。本当、通報されてもおかしくない。そうなれば、卒業試験なんてどろこじゃない。魔法学校は退学だろう。
魔女は仁王立ちの姿で言い放った。
「それじゃあロワ。罰として、城内の清掃を言いわたす」
嘘でしょ?!って思わず言いそうになった。こんな暗闇で、埃と塵まみれで、全部がぼろぼろだし、いつ崩れてもおかしくない棚とか、柱とか、怪しい薬品は沢山あるし、甲冑の部屋や武器の部屋は寒々として、幽霊が住んでそうだし、それに、それに。
一瞬で色んなことを考えたけれど、それを実際に口にする気力もなければ、勇気もなかった。私がやらかしたことはかなり大きいことだ。
「ッゲコ」
なぜだか、私の代わりに悪魔のカエルが返事をする。魔女は私の返事なんか聞く気もなく言い足した。
「もちろん。ディアもよ」
「まじかよ」そう言うディアの声が小さく響いた。
それも気にせず魔女は続ける。
「食事はキッチンにあるものなら勝手に食べなさい。キッチン以外に置いてあるものは、死にたくないなら口にしないことね。部屋は好きな部屋を使っていいわ。2階より上はほとんどが呪われているから自分で大家と話をつけて。とりあえずは1階の奥の部屋にテントを立てるのが今のところ一番マシよ」
早口ですらすらとそう言うと、魔女はさらに階段を上がっていき、何階にいったのか分からなくなった。
階段にそっと近づいて、下から覗いて姿が見えなくなると、私はやっと階段から離れた。暗すぎてあっという間に姿が見えなくなるんだもの。
「とりあえず、掃除をしろってことと、ごはんはちゃんと食べなさいってことは分かったわ」
部屋が呪われてるってどういうことだかよく分からないままだし、部屋でテントを使えばいいって意味も謎だ。それに大家さんはどこにいるんだろう。
「まぁ、少しくらいは休みなよ」
ディアは疲れたように欠伸をする。
私もつられて欠伸をして、ソファーにすとんと座るともう立っていられないくらい眠くて仕方がなかった。カラス城は暗すぎて、いつも夜みたいな雰囲気だ。
「そうだね。とんでもなくへとへと」
そう言いながらソファーに横になると、まぁ、なんとかなるかという気がしてきた。なんの根拠もないけど、まぁ、なんとかなるさ。
このカラス城で穏やかな日なんてやってくるかは分からないけど、きっと目覚めたら、もっと良い日になる……はずだ。
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