ロワとカラス城の魔女
9
その理由はすぐに分かった。真っ黒なローブを着たあの魔女がそこにはいた。
「今すぐに止めなさい」
魔女はどこまでも冷静な声でそう言った。
「来るのが遅かったな。もう最後の文字を書き終わった所だ」
黒猫はそう答えたけれど、その声には恐怖が混ざっているように聞こえた。黒猫が言うように、最後の文字を書き終わると体は自由になった。
力尽きて、膝から地面に落ちると、最後の文字は消えずにいまだに空中に浮かんでいた。そうかと思うと、いままで書いた文字までも現れて、それは帯状となり私をぐるりと囲んでしまった。
「ロワ!」
魔女の声が聞こえて、それがなんとも緊迫した声だったから、私はここで死ぬんじゃないかと怖くなる。
帯状の文字はぐるりと私を囲んだかと思うと、まるで小さな爆発を起こしたように微かな音をたてて一瞬で消えた。
「これは?」
思わずそう言うと、黒猫は楽しそうに返事をする。
「悪魔と契約する為の儀式さ」
何の話か分からずに眉をひそめると、左手首に激痛が走った。私の悲鳴のようなうめき声が辺りに響くと、魔女はまだ光を放っている魔法陣に臆することなく飛び込んできた。
「ディア、なんてことを」
魔女の口からその言葉がもれると、辺りは再び埃が部屋を渦巻き、それは魔法陣の真上に集まって雲のようにそこにぐるぐると浮かんでいた。
「来るぞ!」
黒猫の嬉しそうな声が聞こえる。
私は怖かった。そう、ただただ怖かったのだ。悪魔を呼び出すなんて、違法中の違法だもの。学校でもそんな魔法陣を習う事はない。
「私、こんな事になるなんて」
言い訳が口からこぼれた。けれど、そんな言葉は誰の耳にも届いてない。
埃はますます密度を濃くするように集まっていく。そして再び爆発したように火花が散ると辺りは煙が充満して何も見えなくなってしまった。
魔法陣が放つ黄金の光だけが足元にあるだけだった。
その中で、まるで悲鳴のような、息を吐く音が聞こえる。風が唸りを上げている。そんな音。
「ロワ。私を呼び覚ましたのはお前だな」
その言葉に私は恐怖した。聞いたこともないようなかすれた声。耐え切れずに魔女に抱きつく。
恐怖心は全ての音を遮断した。だから、魔女が「離れなさい」と何度か言ったことにも気が付くことはなかった。
ぶるぶると震え、固く目を閉じていた。
「今すぐに止めなさい」
魔女はどこまでも冷静な声でそう言った。
「来るのが遅かったな。もう最後の文字を書き終わった所だ」
黒猫はそう答えたけれど、その声には恐怖が混ざっているように聞こえた。黒猫が言うように、最後の文字を書き終わると体は自由になった。
力尽きて、膝から地面に落ちると、最後の文字は消えずにいまだに空中に浮かんでいた。そうかと思うと、いままで書いた文字までも現れて、それは帯状となり私をぐるりと囲んでしまった。
「ロワ!」
魔女の声が聞こえて、それがなんとも緊迫した声だったから、私はここで死ぬんじゃないかと怖くなる。
帯状の文字はぐるりと私を囲んだかと思うと、まるで小さな爆発を起こしたように微かな音をたてて一瞬で消えた。
「これは?」
思わずそう言うと、黒猫は楽しそうに返事をする。
「悪魔と契約する為の儀式さ」
何の話か分からずに眉をひそめると、左手首に激痛が走った。私の悲鳴のようなうめき声が辺りに響くと、魔女はまだ光を放っている魔法陣に臆することなく飛び込んできた。
「ディア、なんてことを」
魔女の口からその言葉がもれると、辺りは再び埃が部屋を渦巻き、それは魔法陣の真上に集まって雲のようにそこにぐるぐると浮かんでいた。
「来るぞ!」
黒猫の嬉しそうな声が聞こえる。
私は怖かった。そう、ただただ怖かったのだ。悪魔を呼び出すなんて、違法中の違法だもの。学校でもそんな魔法陣を習う事はない。
「私、こんな事になるなんて」
言い訳が口からこぼれた。けれど、そんな言葉は誰の耳にも届いてない。
埃はますます密度を濃くするように集まっていく。そして再び爆発したように火花が散ると辺りは煙が充満して何も見えなくなってしまった。
魔法陣が放つ黄金の光だけが足元にあるだけだった。
その中で、まるで悲鳴のような、息を吐く音が聞こえる。風が唸りを上げている。そんな音。
「ロワ。私を呼び覚ましたのはお前だな」
その言葉に私は恐怖した。聞いたこともないようなかすれた声。耐え切れずに魔女に抱きつく。
恐怖心は全ての音を遮断した。だから、魔女が「離れなさい」と何度か言ったことにも気が付くことはなかった。
ぶるぶると震え、固く目を閉じていた。
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