ロワとカラス城の魔女

thruu

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 黒猫は突然、爆発したように笑い出した。腹に力を入れて、豪快に笑う。

「灯りも出せないなんて!落ちこぼれの落ちこぼれ!!他に何ならできんだよ!!」

 笑い声に紛れて、何やら言っているが、笑っているせいで全ては聞き取れなかった。ただ、とてもバカにされているらしい事だけには気が付いていた。

 これなら、がっかりされるほうがよほど良心的にすら思えるほどのバカにしようだった。

「あの!」

 笑いの止まらない黒猫に私は怒ったように止めに入った。

「ああ、悪い悪い。まさかそんな奴がいるなんて衝撃でさ。それにしても、よく追い出されなかったな。魔法学校から」

「悪気はないんだ」黒猫は最後にそう付け加えると、声をおしころして笑っていた。

 悪気がないなんてよく言えたものだ。

 黒猫はしばらくそうしていると、今度はごそごそと何かを探しているようだった。

「ほら、懐中電灯。これ使いな」

 親切そうなその言葉にも、笑いが含まれている。

「どうも」

 私の不機嫌な声に配慮などするはずもなく、黒猫は楽しそうに軽い足取りで先へと進んで行く。

 私も暗闇の中を懐中電灯の明かりを頼りに進んでいく。黒猫は光を当てられるのを嫌がるように、足早に光の届かぬ先へと姿を消す。

 私は黒猫に追い付くのに小走りをして、カラス城の中を移動する。懐中電灯の光を当てても、まるで呪いのように全てが黒い。

 家具は黒い色の上に埃をかぶっていたおかげで、やっと、それが何かを知ることができた。もし、一切の埃をかぶらない呪いなんてものをかけられていたら、カラス城にとって不都合きわまりないだろう。

 普通の家だったら夢のような魔法なのに、カラス城においては呪い以外の何物でもない。

 埃をかぶっているおかげで、私は物の場所を知ることができて、ムダなアザを作らなくてもよいのだから。

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