ロワとカラス城の魔女

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 それはあの日、黒猫とカラスが城に入り込んだ時の事だった。

「俺の名前はディア、あのカラスはアカ!あの魔女の名前はガレットだ!一回で覚えろ、いいな。今日から俺様がお前の教育係りだ!」

 ディアと名乗る黒猫は尻尾を右へ左へと揺らしながら言う。魔女が私にくれたコップに頭を突っ込んでは、何かの尻尾や何かの目玉をコップから出し、美味しそうに食べている。吐き気をもよおしながら、 くしゃくしゃにした請求書を荷物の底に突っ込んで、ついでにノートとペンを探りだした。

 私は必死になって、黒猫の声を追いかけてメモをとる。だって、黒猫とカラスは魔女の使い魔だ。優秀な魔女は、猫やカラスに魔力を分けて使い魔にできるし、魔物を封じ込めて解放することもできる。

ーーあれ?魔女って悪魔と契約をするんだっけ。

 一瞬、そんな事が頭をよぎった。

「おい!落ちこぼれ!聞いてんのか!?」

 黒猫の言葉に我に返って、メモに書き込む。

「ははい!ディアにアカに……ガレット」

「よし!城内の見回りに行くぞ。ただし静かにだ。いいな、魔女はうるさいのが嫌いだから、こっそりやるぞ」

 黒猫は何かの目玉をくわえたまま、薄暗いカラス城を闊歩する。黒いのにアカという名のカラスは、今や姿を消していた。上のほうでゴソゴソと動く音だけは聞こえている。

「あの!魔法はあまり出来なくて……私で役に立つか」

 ごにょごにょと言葉を濁す。あまり出来ない。なんて、……全然出来ないのに。

 そう言う私に、黒猫はため息をついた。薄暗くて見えないけれど、黒猫は軽々と近くの棚らしきものに飛び乗る。そして私の目線と同じ高さで腰を下ろした。まん丸の黄色の目が暗闇に浮かび上がる。

「なあ、お前が魔法を怖がっていることは知ってるよ」

 黒猫は落ち着きはらったような声で言う。

「それ、どうして?!」

 魔女にしか言っていないことなのに、黒猫は知っている様子だった。使い魔というのは、人の心も読み取れるようだ。

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