ロワとカラス城の魔女

thruu

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「それじゃあ!!研修を ︎」

 私は思わず大声を出す。魔女は驚いた様子で、両耳に手を当てた。私自身も、自分がこんな大声を出せるのかと驚いたくらいだ。

 魔女は振り返ると、すこし面倒くさそうにため息をついた。

「正直に話したら、研修を受け入れると言ったはずよ?」

 魔女の言葉に私は困惑が隠せない。

「ででも!いいんですか?理由が理由だし、それに向いてないって……」

「そうね、本当に向いてないもの。こんなバカ正直、騙されて利用されて殺されるのがオチね。嫌なら帰りなさい」

 魔女は喋りながら、2階へ続く階段に消えていった。最後にちらりと見えた魔女の口元は微笑んでいるように見えた。

「いえ!私頑張ります!お世話になります!」

 私は魔女が消えた暗闇に慌てて叫んだ。返事はないけれど、研修の受け入れを認められたのだ。

 小躍りして喜びたい、大声で歌いだしたい衝動に駆られるのを抑えた。顔の筋肉が緩んで自然に笑ってしまう。今でも魔女の言葉がぐるぐる頭を回る。

「魔法は、希望」

 言葉にすると、不思議と力が湧いた。その希望で、私は人を傷つけたりはしない気がする。

 カラス城の魔女は怖くて、ひどく暗い場所にいる。なのに、魔女は……いや、彼女の使う魔法はとても暖かくて、良い香りがする。本当は、とても心優しい人なのかもしれない。

 私の夢の研修生活。尊敬する人の元で生活をする。まずは、第一歩がやっと踏み出せたのだ。

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